EXILE / FANTASY (rhythm ZONE) CD

EXILE / FANTASY (rhythm ZONE)
http://exile.jp/

あまり実感のない、とかくフワフワとした人気を集めている事から馬鹿にされがちな EXILE なんですが、基本足し算の音楽とされる J-POP の中にあって、ひたすら拡大路線を続ける EXILE はそれだけで評価できると私なんかは思っていて、彼らには「テニスの王子様」に近い面白さを感じるんですよね。

そして今作も、9曲入りとアルバムサイズにもかかわらず、「ダブルマキシシングル」とシングルであると言い放つ辺り、どこかの誰かさんと違ってブレがないなぁ、とは思いつつも、それが音楽的な面白さにもつながっているかというのは別の話で、ほとんどが爽やかなダンス・ポップか甘いバラードで、その手の曲は総じて退屈。

しかし先のワールドカップ日本代表サポートソングである “VICTORY” は、音楽性度外視で勇壮な男声コーラスやラテン・パーカッションなど如何にもな記号をちりばめた、分かり易過ぎるくらい分かりやすいさすがの出来だし、自身の代表曲の改作である “24karats STAY GOLD” はド派手なヒップホップ・トラックが彼らによく合っているし、ほとんどのラッパーの売り上げが下がる一方のこのご時世では、ブリンブリンな雰囲気を纏える唯一のアーティストではないか、なんて事まで思ってしまう。またいつも通り意味性を一切排し、ヒップホップ的な空気のみを撒き散らす DOBERMAN INC の仕事も素晴らしい。

あと Bach Logic が1曲インストを任されていて EXILE からの信頼の厚さがうかがえるが、これが10年遅れのデジタル・ロックみたいなトラックで何ともかんとも。まぁ興味のある方はどうぞ。

FANTASY

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DABO, ANARCHY, KREVA / I REP (LEXINGTON) CD

DABO, ANARCHY, KREVA / I REP (LEXINGTON)

DJ HAZIME によるミックスCD『JAPANESE HIP HOP HITS』からのシングルカットで、トラックが Bach Logic 、そしてそこにラップを乗せるのが DABO, ANARCHY, KREVA という、ハーコー、メイン、ポップと全方位に向けたようなコラボ曲。

Bach Logic というと、NORIKIYO のアルバム『OUTLET BLUES』(過去記事)でのトランス風味のトラックを、RHYMESTER 『ONCE AGAIN』(過去記事)でうまく泣きの要素に転化させていましたが、今作のトラックもその延長線。
私の中での Bach Logic の評価は世間のものに比べて決して高いとはいえないんだけど、ほとんど演歌と同じではないかと思えるくらい溢れる泣きの要素を、この曲では寸でのところで高揚感につなげていて、この辺りのセンスはさすがだと思うが、やはりヒップホップとしては躍動感が足りないか。

一方ラップの方はというと、各人がラップへの思いを吐露したものになっていて(最近この手の歌詞多いけど、みんなテーマが「ラップへの愛」であって「ヒップホップへの愛」じゃねぇんだよな)、どれもトラックには合っているものの、豪華な面子を揃えました、という以上のものはない。
強いて書けば前のめりのラップでトラックを転がす ANARCHY がベストかしら。

I

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RHYMESTER / ONCE AGAIN (KI/OON) CD

RHYMESTER / ONCE AGAIN (KI/OON)
http://www.rhymester.jp/

RHYMESTER というグループは、所謂日本のヒップ・ホップの第一世代と呼ばれる人たちの中でも、バウンスや生バンドとの競演など、より巧みに時代の音を取り込んできたという印象が強いのだけれど、久しぶりのシングルとなる今作は、グループの長い歴史の中でも初となる外部プロデューサーという形で Bach Logic が起用されている。

これを「さすが旬のプロデューサーを起用している」と取るか「今更」と思うかは人それぞれだと思うんだけど(私は当然後者)、勇壮なブラスが響くトラックの上に乗る宇多丸と Mummy-D のラップはいつも以上にエモーショナルで、これも SEEDA や NORIKIYO など下の世代を意識してのものなのだろう。

しかし肝心の曲の方は、どこかで聞いたことのある言葉ばかりが並ぶ応援歌でしかなく、新鮮味などというものは全然感じられないし、何の因果かここでの2人のラップは、どこぞの「ミスター・アブストラクト」の現在の語り口にそっくりだということに彼らは気がついているのだろうか。

ONCE AGAIN

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NORIKIYO / OUTLET BLUES (EXIT BEAT) CD

OUTLET BLUES
http://9819.jp/

このブログはアクセス解析に Google Analytics を入れてるんですけれども、それによると、今検索キーワードの一位が「norikiyo ハスリング」なんですが、これはなんでなんですかね。まぁ確かにこれで検索すると現時点ではこのブログが一位にはくるんだけど、このブログでそれほどハスリングについて言及したことはないと思うんだけどなぁ。相変わらず検索ロボットのことはよく分かりません。
っていうか最近ハスリング・ラップが人気ということがいろんなところに書いてありますが(私も書いてますけど)、みなさんちゃんと意味分かってるんですかね。ちなみに私は最近まで “城南ハスラー” って、 Zeebra がビリヤードのうでを自慢している歌だと思っていた人間です。

まぁそんな与太話はいい加減にして、そんなハスリング・ラップ全盛の現在を代表するラッパーである、 Norikiyo の約1年ぶりのセカンド・アルバム。

このアルバムの発売前に、 SDP のサイトの方で落とせた今作のメガ・ミックスを聴いたときには、ずいぶんブリンブリンになっていて、こりゃダメだなと思ってたんだけど、やっぱりアルバムはちゃんと聴かないといけませんね。あのときの私はいったい何を聴いていたんだと怒ってやりたいぐらいの大傑作じゃないですか、これは。

とはいっても、前作『EXIT』(過去記事)から何か大きく変わったかというと、基本路線は一緒。以前のイリーガルな日々に起因する苦悩や後悔と、でもそれにつぶされないようなしたたかさと、それらすべてを笑い飛ばすようなユーモア、そんな様々な感情を内包したエモーショナルなラップ。

しかし比較的シンプルなトラックの多かった前作は、 Norikiyo のフロウがどうもヴァリエーションに乏しいのも相まって、モノクロームな印象が強い作品だったけど、全曲 Bach Logic がプロデュースした今作は、 Bach Logic の作る分かりやすいフックを多用したトラックにより、 Norikiyo のラップのもつエモーションが、驚くほど色鮮やかにこちらに伝わってくる。正直今まで Bach Logic ってほとんどいいと思ったことがないんだけど、今作での仕事振りは文句なしじゃないでしょうか。

そして Norikiyo のラップも、歌詞がより具体性を帯びたのもあって、より感情豊かになっていて、一言でいうととにかく染みる。中でもイリーガルな日々から逮捕までの顛末を歌った “儲かるけど?” から、後悔を振り払うかのように笑えと歌う “運命 ~SADAME~”への流れはホント泣ける。他にも泣きのギターをフィーチャーした “RIVAXIDE CITY DREAM” や、自らのルーツを確かめるような “RUN RUN RUN” など、メロウな曲が少なくないんだけど、派手なシンセを使った “GIMME SOME NEXT” や “REASON IS…” のような曲を要所要所に配することによって、見事にメリハリのある流れになっている。

とにかく今作は、 Norikiyo の表現の軸をまったくぶらすことなく、すべての面でスケールアップた、前作とは比較にならないくらいの作品。とはいっても、その前作も昨年を代表する傑作だったわけで、つまりはそれくらい今作の完成度は群を抜いているということ。大傑作。

NORIKIYO - OUTLET BLUES
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