How to Destroy Angels / How to Destroy Angels

How to Destroy Angels / How to Destroy Angels
http://www.howtodestroyangels.com/

なんかもう Nine Inch Nails ではツアーやらないとか何とかいっていたトレント君が奥方様と始めたユニットの、今年6月1日にリリースされたフリー・ダウンロードの EP 。

『The Fragile』までの NIN が好きな私からすると、神経症的にノイズを鳴らしていた以前の音ではなく、バンド・サウンド中心の太い音をシンプルに配したここ数年の NIN を踏襲した今作の音というのは、やはりそれほど好きな音ではないのだが、しかしヴォーカルをトレント君ではなく奥方の方が担当する事によって、 NIN のここ何作かにあった歪んだマチョイズムが中和されていてずいぶんと聴きやすい。

かといって以前のような衝撃が今作にあるかといえばそんなものは全くないのだが、使われている音自体は全く違うものの、構成がどことなくクリック・ハウスを思わせる “The Believers” などは面白く聴けたので、これだけでも今作聴けて良かったかしら。

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BEST of 1999

DISCOVERYfragileMr.Children 1/42Carry On my waySingle Collection Hotchpotch (ハチポチ)TO COME...Black on Both SidesForce & FormHEAVY GAUGETHE AZTEC MYSTIC MIX

  1. Mr.Children / DISCOVERY
  2. Nine Inch Nails / The Fragile
  3. Mr.Children / 1/42
  4. SPEED / Carry On my way
  5. 坂本真綾 / シングルコレクション プラス ハチポチ
  6. SILENT POETS / TO COME…
  7. Mos Def / Black On Both Sides
  8. SURGEON / FORCE & FORM
  9. GLAY / HEAVY GAUGE
  10. DJ ROLANDO / THE AZTEC MYSTIC MIX

印象の薄かった1998年に比べ、この年は豊作ですね。あとここには選んでないけど、 Company Flow のインスト盤や RUBBEROOM もこの年で、多分この辺りから私のアンダーグラウンド志向は強くなっていったのではないかと。

Nine Inch Nails / The Slip (nin.com)mp3

The Slip
http://theslip.nin.com/

Nine Inch Nails こと Trent Reznor が、『Year Zero』を発表したのが2007年の春。そしてその年の秋に Saul Williams のアルバムをプロデュースがあり、今年の頭にはインストの2枚組み大作『Ghosts I-IV』を発表。
昔の寡作作家の代表だったみたいな頃を思えば、これだけで十分驚きなんだけど、さらに先月 “Discipline” という曲をサイト上にアップして、その際書かれていた5月5日にサイトのほうに行ってみれば、『The Slip』というアルバムがフリー・ダウンロードで発表されているというんだから、じゃぁ今までの寡作ぶりは誰のせいなのか、と勘繰りしてみたくもなりますが、現在の作品を自由に発表できる環境というのが、 Trent Reznor の創作意欲にいい影響を及ぼしているのは間違いないんでしょう。

そしてそのように思えるのは、今作がそれだけ充実した内容だからで、『The Downward Spiral』の影を追い求める人に歓迎されそうな高速のドラムとノイズが乱れ飛ぶ “Letting You” や、ここ最近の路線のバンド感の強いインダストリアル・ロック、そして終盤の『Ghosts I-IV』を思わせる静的なエレクトロニカなど、スタイル的には今までの統括的な印象を与えるものながら、そのどれもが非常にすっきりとした音作りがなされていて、その結果浮かび上がっているのは Trent Reznor のメロディ・メーカーとしての才能。というのも『With Teeth』や『Year Zero』の頃のゴテゴテとした音作りに比べると、どの曲もメロディが直接耳に飛び込んできて、中でもあまり抑揚のないメロディを、しかしいつになく軽やかに歌う “Echoplex” は、 “The Perfect Drug” 以来の最高のポップ・ソング。
90年代の、危なく刺激的だった Trent Reznor というのは、おそらくもう戻ってこないでしょう。しかしこのままいけば、また違った方向性で、 Trent Reznor が実りの季節を迎えるのではないか、そう思わせるには十分なアルバムです。

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Nine Inch Nails / Ghosts I-IV

Ghosts I-IV
http://ghosts.nin.com/

昨年プロデュースをした Saul Williams のアルバムが、思ったほどの収益を上げられなかったために、若干キレ気味であったトレント君なんですが(そこら辺は「P2Pとかその辺のお話」さんに詳しい)、そこでめげることなく、なんと次は自身の新作を発表したといういので、早速聴いてみた。

前作から僅か1年弱、さらにプロデューサーも『Year Zero』と同じという事で、基本的な方向性にあまり変化はないんだけど、今作はインスト作品という事もあってか、いつもの彼の作品よりは静穏な印象を与えるものになっていて、あえて比較するなら『The Fragile』に近い。しかし『The Fragile』のような、強烈な痛みが刻み込まれた音はここにはない。その代わり、若干大味すぎた前2作に比べれば、いくらか音に緊張感というが感じられて、インダストリアル/エレクトロニカとしては悪くないかなと。さすがに2時間近くも集中力がもたないんで、聞き流し系ではあるんだけど。
まぁそれでも今作のリリースが意義深いものであるのは間違いないので、あとは最近の攻撃的な姿勢が音の方にも反映してくれると文句ないんだけどなぁ。

Saul Williams / The Inevitable Rise and Liberation of NiggyTardust!

The Inevitable Rise and Liberation of NiggyTardust!
http://niggytardust.com/

各所で話題になっているので知っている人も多いかと思いますが、 Nine Inch Nails の Trent Reznor 全面プロデュースによる Saul Williams のダウンロード・アルバム。5ドル払う有料版と、それより音質が劣る無料版の2種類があるんだけど、私は当然のように無料版。

Saul Williams って政治色の濃いラッパーっていう位しか知らないので、何故彼がトレント君に制作を依頼したのか分からないんだけど、トレント君に関していえば、音楽性やメッセージ性に共感してというのは当然あるんだろうけど、一方で今後のトレント君の音源発表の仕方の一つの試金石であるのは間違いないでしょう。

トレント君が Nine Inch Nails 以外のアーティストの音楽製作に深く関与するのってマリマンの『Antichrist Superstar』以来らしいんだけど、今作もあの作品同様、かなりトレント君の色が濃い。っていうかはっきりいって Nine Inch Nails の新作として聴いても全く問題ない。

1曲目の “Black History Month” こそラップを披露しているものの、次の “Convict Colony” のドラムが鳴り響いてからは最近の Nine Inch Nails に近いインダストリアル・ロックが中心で、 Saul Williams の歌い方もかなりトレント君に近い。しかし Saul Williams がトレント君と決定的に違うのは声から感じられる肉体性で、見た目が筋骨隆々になったところで基本根暗な逆切れ王子なトレント君よりも、生命力張る声の Saul Williams の方が、最近のトレント君が志向するマッチョなインダストリアル・ロックには合ってる気がする。それにいくらトレント君の色が濃いとはいっても、Saul Williams に合わせていつもよりドラムを前面に出していて、これも作品の躍動感を強めていて良い。U2 の “Sunday Bloody Sunday” をカヴァーしているくらいだから今作も政治色が濃いのかもしれないけど、攻撃的ではあっても重苦しくはないので、あまりそのことは気にする必要はないし、その “Sunday Bloody Sunday” のカヴァーも、こんな大味なアレンジにしたら原曲のメッセージが台無しなのではないかと思いつつも、音自体はかなりかっこいい。
個人的には『With Teeth』や『Year Zero』よりも、よっぽど良いアルバムではないかと。

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nine inch nails / year zero (Interscope) CD

nine inch nails / year zero
http://www.nin.com/

昔音楽聴き始めたばかりの頃は、そのアーティストこそが最先端であると信じて疑わなかったのに、そのうちいろんな音楽を聴き進めるうちにそのアーティストが最先端はおろか、周回遅れもいいとこだったのが分かってがっくり、というのは多分多くの人にある事だと思うんだけど、私にとって Nine Inch Nails というのは正しくそういう存在なわけですね。

まぁそれでも『The Fragile』までの作品は鬼気迫るテンションが感じられて、サウンドの先進性云々とは別のところで語れるものだとは思うんだけど、さすがに『With Teeth』(過去記事)でのマッチョなインダストリアル・ロックは未だに退屈で聴く気がしない。

そして前作から2年という Nine Inch Nails としては異例の速さで完成した今作はというと、基本路線は前作とそれほど変わらず。比較的生バンド的な音の多かった前作よりはエレクトリックな音が増えたけど、昔の鬱屈した感じと比べればずいぶんと肉体的で、健康的ですらある。しかし前作よりは混沌とした部分も多くなっていて、曲自体もけっこう印象的なものが多いので、このアルバム単体でみればわりといいアルバムではないかと思う。でもやはり最後まで Trent Reznor がこの方向性を選んだ必然性が理解できなくて、でもそんなこと考えるのは所詮オヤジのノスタルジーなのかなぁ。

視聴
[Tracklist]

NINE INCH NAILS/WITH TEETH(nothing)CD

With Teeth
http://www.nin.com/

前作からもう6年ぶりの新作なんだそうで。
ということは前回の5年半というブランクよりも長いわけなんだけれども、それほど長く感じなかったのは個人的にも世間的にも彼に対する待望論というものが少なかったからではないかと思うんですよね。その間、噂されていたテープワームは結局お蔵入りし、新作にはリチャード・ディヴァインが参加しているという話もデマだったようで、なんだかなぁという気分の中聴いた新作なんですが。

これはちょっとこのアルバムを聴く前の話になるんだけど、彼のオフィシャル・サイトの方でシングルの”THE Hand That Feeds”のPVが公開されてたじゃないですか。それを見て殆んどの人はみょうにアゲアゲなトラックとキャッチーなメロディに面食らったと思うんだけど、基本的なラインはアルバムでも変わりませんね。
で、ここで興味深いのは”THE Perfect Drug”からこの作品に至ったのではなく、一度陰鬱極まりない『THE Fragile』を経由しているということ。つまり彼は”THE Perfect Drug”でポップネスというものを拾い上げ、その後メロディ重視の作風にも取り組みながらも一度座礁してるんですよね。でも、この『WITH TEETH』での改めて「曲」というものに向き合った作風を耳にすると、トレント君って基本的にはオーソドックスなシンガー・ソング・ライターなのかしらって気もする。

で、トレント君みたいな自分を切り売りしているようなアーティストが、こういう憑き物が落ちたような作品を発表すると、「こんなものを彼には求めていない」なんて事を言い出す人が出てくるわけなんだけれども、そういう物言いって人間よりも音楽を大事にしているようであんまり好きじゃないんですよ。でも一方でそのような物言いを切り捨てられないようなところもありまして、というのはこういう場合に出てくる作品の殆んどが退屈な物だからなんです。

ではこのアルバムはどうなのかというと、まぁイマイチですね。今作での変化ってポップになったのと共に、トラックの音数が減ってシンプルになった事があると思うんですが、前作『THE Fragile』が、ヴォーカル、トラック共に凄まじい緊張感うを放っていたのに比べると、今作はどうにも中途半端に思えるんですよね。前作は陰鬱な雰囲気もさることながら、実験的な美しさにと富んだサウンドも素晴らしかったわけで。でも今作では進化らしい進化も特に見られず、エレクトロニカさえ過去の話に思える今の耳には刺激に乏しいのですよ。変拍子刻むドラムと溜めまくった所で鳴るベースが絡むタイトル曲なんかは面白いと思うけど、でもミニストリーの”The Fall”に似てるような感じもして、そうするとあの曲は何年前の曲だなんて考え出すとちょっとね。だったら先のシングル曲のようなポップなものでアルバム全部埋め尽くしたほうが面白かったと思うんだけれども、勿論そんな事はなく基本は暗黒系だし。
まぁ、悪いアルバムではないと思うけれどやはりトレント君には更なる高みを望んでしまいますね。でもこの手の人は大抵揺り戻しがあると思うんだけれど、次作はまた6年後でしょうか。

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