FALSE / 2007 (m_nus) CD

FALSE / 2007 (m_nus)
http://www.m-nus.com/

Matthew Dear が別名義の False で2007年に発表したアルバム。以前Plus 8 からリリースしたアルバム(過去記事)はシングルの編集盤だったので、今作がファースト・アルバムということになるかしら。

元々False という名義は、 Matthew Dear が AKUFEN などからの影響を吐き出す為のものとして始めたと、以前インタビューで言っていたけれど(それは先の編集盤を聴くとよく分かる)、今作はジャケット同様味も素っ気もないディープ・ミニマル。

多分普段この手のミニマルに接していない人からすると、まるで何か苦行の類なのかと思えるほど、これといった展開もなく、何も起こらないまま淡々と進んでいく。しかしその最初から中盤辺りまでのゆったりとした流れを経て、それが後半大きなうねりへと変化するさまは、これぞテクノの真骨頂とでもいいたくなるほど素晴らしいもので、またその熱をゆっくり冷ますかのようにゆったりとした流れに引き戻す最終曲 “FORGETTING” も実に秀逸。

また何回も聴いてみれば、後半のグルーヴも、それまでのトラックも非常に丹念に作られていて、ただ機能的なだけではない、作品性の高いアルバムだというのがよく分かる。
流行り物のミニマルとは一線を画す、時代を問わず聴ける傑作です。

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Wighnomy Brothers / Metawuffmischfelge (Freude-Am-Tanzen) CD

Metawuffmischfelge
http://www.freude-am-tanzen.com/

Robag Wruhme という人は、デビュー以来様々なタイプの曲をリリースしてきているわけですが、その中でも一貫しているのは、常にポップさを置き去りにしないということで、それはこの、 Monkey Mafia とのユニットである Wighnomy Brothers での、初のミックスCDでも変わらない。

1曲目からいきなり、 Matthew Dear が False 名義で出した “Fed On Youth” という、かなりディープなミニマル・トラックなんだけど、そこに元 Dead Can Dance の Lisa Gerrard が幽玄な歌声を聴かせる “Come Tenderness” という曲を乗せることで、あれだけ無機質に思えたトラックから、悲しみにも近い情感を引き出していて、まず驚く。

そしてその美しい余韻を残したまま、いくつかのトラックを経た後の、 Agoria による “Les Violons Ivres” の、あまりにも優美なストリングスが鳴り響いて以降、ほとんどの曲に明確なメロディが存在していて、それらがたゆたうようにゆるやかに、しかし確実に紡がれていく美しさを追いかけているだけで、気がつけば1時間強が終わっている。

中でも、個人的には昨年のベスト・リミックスだった、 Stewart Walker の “Fernbank 91” (過去記事)の Robag Wruhme によるリミックスをクライマックスとした、後半の美しさは筆舌に尽くしがたい。

はっきりいってノリのいい物を求めている人には不向きだと思うし、何か画期的な手法がとられているわけでもない。でもそんな不満などものともしないような美しさがあるのも間違いない。久々に Robag Wruhme の作家性に感服した大傑作。

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V.A. / Ghostly Swim (Ghostly International)mp3

http://ghostly.com/
http://ghostly.com/

このブログでは何度も紹介している Spectral の、親レーベルである Ghostly International と、アニメチャンネルである Adult Swim との共作によるフリーダウンロードのコンピレーション。
どうやら全部が全部 Ghostly 所属のアーティストじゃないみたいなんだけど、基本はやっぱり IDM/エレクトロニカ。総じてクオリティは高いんだけど、2,3分台の小作品がほとんどなせいか、印象に残るのが少ないというのが正直なところ。
しかしそんな中で抜群の冴えをみせるのが Osborne で、ねっとりとした四つ打ちのリズムにヴォコーダー・ヴォイス、そしてハンド・クラップに上モノの哀愁のメロディと、全てが定石通りにも思えるスロー・ファンクながら、絶妙な落とし所によって見事に古臭さを回避している。こんなもの聴かされたら、間もなく出るアルバムへの期待が弥が上にも膨らみますわ。

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MATTHEW DEAR / ASA BREED (Ghostly International)2LP

ASA BREED
http://www.ghostly.com/

最近レコ屋に行くと、ジャケットの水着のおねえさんにつられて、 HOUSE NATION のアナログを買いそうになってしまうのは私だけでしょうか。
すいません、私だけですね。

すっかり別名義の Audion での活動がメインになるものだと思っていたところに、けっこう唐突に届けられた Matthew Dear の、この名義では前作『BACKSTROKE』から3年ぶりとなる新作。
とはいっても、その間に Audion 名義でアルバムやミックスCD、それに多数のシングルを出していたから、待たされた感じは全然ないんだけど、ダンス・トラックばかり量産していた反動なのか、テクノというよりは、どちらかというとエレクトロ・ポップと呼びたいような曲ばかりになっています。
でもこの人に関しては本名名義のときは、ヴォーカルを含めポップな要素を積極的に取り入れていたので、それほど以外ではないんだけど、さすがに全曲ヴォーカル曲になるとは思いませんでした。
そして当然のように内容も幅の広いものになっていて、ビートの多様性は(四つ打ちの曲だとしても)過去の比じゃない。今までになくベースが重い “FLEECE ON BRAIN” に、よく聴くと軽めのベースがおかしな事になってる “ELEMENTARY LOVER” 、短いながらもヴォーカル含め相当病的な “WILL GRAVITY WIN TONIGHT?” など、トラックだけ聴いてもかなり楽しめる。
さらに沈み込むようなギターのストロークから、キャッチーな歌メロで曲の表情を変えていく “GOOD TO BE ALIVE” や、中盤の軽やかなエレポップなど、以外にイイ曲も多い。それにアコギの弾き語りみたいのまで飛び出すとは思わなかったし。
まぁそうなってくると、御本人のヘタウマなヴォーカルはちょっとどうなのかなと思わなくもないんだけど、この素っ頓狂なヴォーカルのおかげで実験性と大衆性の両立が取れてる感じもするので、まぁいわないことにしておこう。

Matthew Dear - Asa Breed
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Audion / Noiser/Fred’s Bells (Spectral) MP3

Audion / Noiser/Fred's Bells
http://www.spectralsound.com/

なんでか知らないけど来月発売の Matthew Dear の新作『Asa Breed』が iTunes Store で買えるようになってますねicon(クリックすると iTunes 立ち上がります)。ということで視聴してみたんだけど、以前に比べずいぶんとポップになっていて、いやぁ、これはちょっと問題作かも。
しかし Audion 名義での作品は変わらずフロア仕様なので、これは本人名義との差を明確にしたかったということなのでしょうか。

これはその Audion 名義では現時点での最新作となるシングル。私は節約のために iTunes で買いました(話は逸れるんだけど、iTunes で10分以上の曲になると妙に値段設定が高いのはどうにかならんのかね。短い曲は安くしないくせして!)。 Audion 名義のときの特徴といえば、なんといってもビキバキブリブリ、かつサイケデリックな上ものだと思うんだけど、それは今作でも同じ。でも以前に比べるとここ何作かのシングルってどうもリズムが淡白に感じられて面白くないんですよね。個人的に『EP 1』(過去記事)の頃からリズムの作りを評価してただけに少し残念。まぁ次作に期待しときます。

Audion - Noiser / Fred's Bells - Single
[Tracklist]

Audion / The Audion EP’s (SPECTRAL) MP3

SPC-15_Kisses
http://www.suckfish.org/

もう随分時間が経っちゃってんだけど、以前書いた Matthew dear の記事の続き。一応もうすぐこの名義でミックスCDも出るという事でタイムリーかなと。

最初 Matthew dear がこの名義で作品を出した時って数ある名義の一つにしか思ってなかったんだけど、今ではむしろメインの名義になっちゃいましたね。一応以前の彼のインタビューから、この名義はハードでアグレッシヴなものというのは分かるんだけど、他の名義とどのような線引きがあるのかはイマイチ不明。でも一般的には彼の中でもより派手な名義という認識があるのではないでしょうか。

で、世間にそういう印象を植え付けたのがこの3枚のEP。とはいいつつも私はアナログでは『THE PONG』しか持っていません。残り2枚は iTunes Music Store で買いました。いやはや、便利な世の中です。

基本的に3枚とも表題曲は、前作の『Anger Management』の路線を受け継いだアシッド/ブリープ・テクノ。でも上もののビキバキ度はその比じゃないというか、ここまで露骨に電子音を主張しているのも珍しい。特に “Titty Fuck” のギザギザ感とか狂ってますもんね。
でもリズムの方はさらにスカスカに、かつタイトになりながらも軽妙さというものが失われておらず、この手のが苦手な私でも結構楽しんで聴けます。

購入→Audion - The Audion EP's

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MATTHEW DEAR

spc6_250.gif 『EP1』12″

spc7_250.gif 『EP2』12″

spc11_250.gif 『Leave Luck to Heaven』2LP

spc13-250.jpg 『Anger Management』12″

MATTHEW DEAR の作品をまとめて簡単に。

ちょっと前後関係は分からないんだけど、Plus 8 からは false 名義で、Perlon からは JABBERJAW 名義でリリースしていた彼が本人名義で SPECTRAL から作品を出したのが2000年。それはちょっと聴いたことがないのでコメントのしようがないんだけど、やはり彼が注目を集めるきっかけになったのは2003年にリリースされた『EP1』『EP2』ではないでしょうか。
特に『EP2』の方は田中フミヤも年間ベストに選んだ名盤。MATTHEW DEAR のハードながらも愛嬌を失わない音作りのセンスが爆発していてめちゃくちゃかっこいい。中でもへヴィな “LAKONIC” は必聴です。
一方『EP1』は最近あまり聴かれなくなった彼のサイケデリックな一面が出ていて、コミカルながらもなんとも珍妙なテクノに仕上がっております。

その後ポップな『Dog Days』(持ってない)の後に発表されたのがファースト・フルの『Leave Luck to Heaven』で、今までの集大成的な内容です。この後程なくして彼は CHAOS で来日してるんだけど、こんなポップな人を田中フミヤが選んだのを意外に思ったのを覚えています。

そしてアルバムでの高評価を経て、彼の人気を決定付けた『Anger Management』では一転してギラギラと攻撃的なアシッド・テクノを披露しているのだけれど、個人的にはあんまり好きじゃないです。それよりは裏の飄々としたブリープ・テクノな “Future Never Again” の方が好きかな。
この後数多くのリミックス・ワークとミニ・アルバムの『Backstroke』(過去記事)を発表するものの、オリジナルに関しては Audion 名義が主流になっていきます。
(続く・・・・・かな?)

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V.A. / SPECTRAL SOUND (SPECTRAL) 2CD

Spectral Sounds 1 (Dig)
https://soundcloud.com/spectral

デトロイトのテクノ、といわれるとURジェフ・ミルズあたりをつい思い浮かべてしまいますが、彼の地でもシーンの移り変わりはもちろんあるわけで、そんな中、デトロイトの新世代の代表格といってもいいDabryeとMatthew Dearが中心になっているのがこのSPECTRALです。
しかし前述の二人や、このレーベルのほかのアーティストからデトロイトの匂いがするかというと、そこら辺は希薄なんですよね。一応クリック/ミニマル・ハウスの流れで評価されたレーベルではあるのだけれど、このレーベルの音ははるかにテクノ寄りだし(ハード・ミニマルの人の出すクリック系ミックスCDでは御用達といった感じ)、なら何に近いのかといえばシカゴ・ハウスかなぁ、という気がするのだけれど、あそこまで猥雑な感じはないし。なんて事を考えていると何処に置いても座りの悪い感じがして、なかなか個性的なレーベルなんだなぁと今更ながらに思えてきました(今までそんなこと考えたことなかったので)。
ではこのレーベルの特徴は何なのかといえば、やはり音の硬さじゃないでしょうか。曲の作風自体は人それぞれ幅広いものの、不思議と音の硬質さというのは統一されているんですよね。これはマスタリングやってる人が全部同じなんでしょうか(未確認)。
それはこのコンピにしてももちろん同じで、Reinhard VoigtやIsoléeがリミックスした曲でも変わりません。そして音の質感が統一されているからといって一本調子にならないのは、曲の持つキャッチーさに拠るところが大きいと思います。
つまりは曲としてのポップさと、クラブ・トラックとしてのハードさを両方兼ね備えているわけで、改めて稀有なレーベルなのだなぁ、と思った次第です。

false/false(plus 8)CD

false.jpg
http://www.plus8.com/

Spectralからは本人名義とAudion。そしてPerlonからはJabberjawという名義で作品を発表しているMatthew Dearがリッチー和尚のPlus 8Minusからリリースする時の名義がfalseです。そしてこのアルバムはそのfalse名義でPlus 8で発表した3枚の12インチを纏めたもの。
正直他の名義との差異を指摘するのは難しいんだけど、大胆にポップさを打ち出している本人名義に比べると、こちらはやはりレーベル・カラーを意識してかモノクロームな印象を受けますね。とはいってもこの人が元来持つ人懐っこさというのは滲み出ているので、例えばプラスティック・マンなんかに比べるとはるかに聴きやすい。
あとわりと初期の作品というせいもあるんだろうけど、結構あからさまにアクフェンの影響が見えるのが面白い。

False
False

Plus 8 2003-04-08
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おすすめ平均

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MATTHEW DEAR/BACKSTROKE(SPECTRAL)CD

Backstroke
http://www.ghostly.com/1.0/spectral/

なんだか音盤紹介のペースが週一くらいになってますね。しかも時間のたったやつばかり。まぁ最近疲れてまともにPCと向き合う気がしないんですが・・・。でもそこは気を取り直して。
このアルバムもROBAG WRUHMEの次に書くつもりっだったんだけど。まいっか。

以前デリック・メイがデトロイトの現状を憂いて「ケニー・ディクソンとロランドの後に誰がいるんだ?』みたいなことを言っていたと野田努が書いていたけれど、そのあとに続くのは間違いなくこの人だと思われるマシュー・ディアさん。昨年の3枚のシングル、そしてアルバム『Leave Luck to Heaven』での高評価を受けて一気に浮上した感のある人です。今年に入ってからも『Anger Management 』を皮切りに月一くらいのペースで別名義やらリミックスやらを出しておいてもうアルバム(まぁ8曲入りだけど)。
随分とポップな作りだった『Leave Luck to Heaven』とは打って変わって『Anger Management 』は攻撃的なアシッド・テクノで、それ以降もわりとアシッド色の強いものが多かったけど今回はまたハードな方に振り切れましたね。
生クリームを食べ過ぎたときのようなくすぐったさが気持ち良い悪い1曲目は置いといて、2曲目の”Tide”が超かっちょいい。まるでゴムの詰まったボールが跳ねるよな重いビートで、音は硬いのにしっかりバウンシーなんですよね。しかもそこに御本人の素っ頓狂な歌をのせちゃうんだから堪りません。他にもモノクロームなトラックに突然ノイズともメロディーともとれない上ものが入ってくる”Takes On You”、不思議な浮遊感のある”Grut Wall”、ちょっとデトロイト・ハウスっぽい”And In The Night”なんかも良い。
まぁ全曲好きなんだけど。多分今年のベストに入ってくる1枚ではないでしょうか。