Meiso / 夜の盗賊 (Mary Joy) CD

Meiso / 夜の盗賊 (Mary Joy)
http://www.maryjoy.net/

ホノルルを拠点に活動しているバイリンガル・ラッパー Meiso の2009年発表のファースト・アルバム。

Meiso というラッパーに関しては以前 Immigrate Us の作品(過去記事)に参加しているのを聴いたことしかなく、またバイリンガルであるということから洋楽的なアンダーグラウンド色濃いものを想像していたのだけれど、この『夜の盗賊』と題された作品は、驚くほどに日本的だ。

それはヒップホップ的な定型にとらわれないトラックにも感じるのだが、一番感じるのはやはり Meiso のラップで、早口が多いながら淀みなく流れるように滑らかなそのフロウは、最初のインパクトこそ小さいものの、気が付けばこちらの心のひだにスルスルと絡み付いて、耳をひきつけて離さないし、歌心と華やかさをもちながらも、同時に暗さと情念も内包しているような声は実に歌謡的で、こんな作品が海外を拠点にしているアーティストから生み出されたというのはすごく面白い。

正直コレがヒップホップか、と問われると自分にはよく分からないのだが、もし「日本語ラップ」なんてものがあるのなら、それはこういう作品のことを云うんじゃないですかね。

Yorunotouzoku

[Tracklist]

V.A. / Cool Like the Pulse of a Corpse (TAKABA) mp3

V.A. / Cool Like the Pulse of a Corpse (TAKABA)
http://www.takabarecords.com/

私がブログを始めてもうすぐ丸6年になるんですけれども、未だに自分の中でのこのブログの位置づけというのは定まっていなくて、まぁ簡単に書けば、聴いたそばから軽めの紹介を書いて更新頻度を上げるのか、それともしっかり一枚を聴きこんで内容を深めるのか、っていうことでして。まぁ更新頻度高くて内容をもしっかりしているのが一番良いんでしょうけれど(そういうブログもいっぱいありますしね)、私は筆が遅いし思考回路も遅いしでとても無理。じゃぁどうするかっていうんで、今まではどっちつかずの感じでやってきたんですが、今年は自分なりに色々と試してみようと思っていて、まずは内容定まっていなくても記事を書いて、その後何か書きたいことがあればその記事にどんどん追記していく、という形でやってみようかと思っています。そういう形で記事を追記していくと内容が混沌としてくるので、最初は内容定まった時点で記事を清書でもしようかと思ったんだけど、一度公開した文章を消すのもなんなので、もし清書したい場合は別の場に書こうかと思っています。なので記事が読みにくくなる場合もあると思うし、そもそもそれで更新頻度が上がるのかも分からないんですが、そこら辺も含めてご意見等あれば気軽にコメント書き込んでもらえればと思います。

ということで早速今日落としたばかりの、カナダのヒップホップレーベル TAKABA のフリー・ダウンロードのレーベル・コンピ。

私はこのレーベル名は初耳だったんですが、最近出た Kaigen21Meiso のアルバム出しているレーベルなんですね。ということでその Kaigen21Meiso の “Lost and Found” という曲が収録されているんですが、おそらくこれはアルバムの “無迷” のタイトルを英語にしたもの(アルバム聴いていないので確信はないですが)。あと Kaigen のソロ曲も入っているんだけど、私はこの人のつぶした声でがなるスタイルが苦手なので、特に思うことは無し。

それよりも素晴らしいのは他のアーティストの楽曲で、基本どれもサンプリングをベースとした奇をてらったところのないヒップホップながら、その分最近のギラついたヒップホップにはない心地よさがあり、やはり私はこういう音のほうが体に合う。
中でも Slug を少し重くしたようなラップをする Apollo Creed (もうするアルバム出るみたい)、クラブ・ジャズ的な空気も感じさせる The Kemistry 、 “Your Boyfriends’ a Cokehead” での憂いのあるトランペットのサンプルと重ためのラップが印象的な Modulok は覚えておきたい名前だ。

Immigrate Us/No man’s religion(Aphasic Tone)CD

Immigrate Us/No man's religion
http://www.8thwonder.jp/

なんのかんのでヒップ・ホップの本場がアメリカなのは間違いないわけで、ならば自分も同じように英語でラップをしてみたいと思う人がいても不思議ではないのだけれで、それを実践してアルバムまで出しちゃう人となると珍しいのではないでしょうか。
この Immigrate Us というユニットは、 8th Wonder の Masashi の英語でラップする時の別人格 Nejel Mongre にビート・メーカの Aki と Authentic の2人が加わったもの。

私は昨年のデビュー作『Our Own Nostalgia』は未聴なんだけど、その前に出た12インチと比べる限り、大きな路線変更はないと思われるアブストラクト寄りなアンダーグラウンド・ヒップ・ホップ。おそらく Authentic によると思われるオリエンタルで悲しげな旋律の乗るトラックはいずれも高いクオリティながら、個人的にどうも Nejel Mongre のラップが好きになれないんですよね。
別段日本人なんだから英語でラップしちゃいかん、なんてことを言うつもりはないんだけど、別に操る言語変えたからって声質まで変える必要ないと思うんですよね。まぁ何の前情報もなしに聴けばこのダミ声も気にならないのかもしれないけど、どうしても 8th Wonder の奇跡的なまでの素晴らしさと比べると見劣りしてしまうし、このアルバムでも Masashi 名義でラップしている “Missing” に圧倒的に心が動かされます。この自らの葛藤を豊かな心象描写により目の前に浮かび上がらせるような感覚は、他ではなかなか味わえないだけに、余計そう感じてしまいます。

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