Petre Inspirescu / fabric 68 (fabric) CD

Petre Inspirescu / fabric 68 (fabric)
http://www.fabriclondon.com/

2013年に関しては、2012年に引き続きルーマニアのミニマルもよく聴いたのですが、その中でも目立っていたアーティストというと、やっぱり Petre Inspirescu ですかね。

Petre Inspirescu というと2012年12月に発表した『gradina onirica』(関連記事)が傑作でしたが、同時期に発表された本作も、「fabric」シリーズということで、ダンス的な側面が強くはなっているものの、それだけに留まらない音楽性の幅の広さを聴かせる作品になっている。

というのも今作は自身のレーベルである Yojik Concon から Petre Inspirescu の曲のみが選ばれているのだけれど、その Yojik Concon というのは彼の室内楽的な要素が強く出ているレーベルであり、今作にもストリングス等の音が聴こえる部分が多い。

ただそれによりリスニング向きの作品になっているのかというとそんなことはなく、じっくりとダンス・グルーヴを積み上げながら、景色を塗り替えていくようなミックスは非常に美しく、そういった意味では『gradina onirica』よりも彼の魅力が伝わりやすい作品になっている。

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petre inspirescu / gradina onirica ([a:rpia:r]) 3LP

petre inspirescu / gradina onirica ([a:rpia:r])
http://www.arpiar.ro/

気がつけば今年も6月に突入していて、そろそろ上半期ベストの話題も出てきている今日この頃、みなさんいかがお過ごしでしょうか。なんか4月頭まで続いていた毎日更新が途切れて以降、めっきり更新頻度が落ちておりますが、このままいくとまたお気に入り盤を全然紹介していない、という事態になりそうなので、とりあえず何か書いてみようかと思います。

ということでルーマニア出身のプロデューサー Petre Inspirescu のこの名義では2枚目のアルバム。
発表自体は2012年末なんですが、日本国内に入ってきたのが2013年なので、私が聴いたのも今年に入ってから。

Petre Inspirescu が2009年に発表したファースト・アルバム(関連記事)はパーカッシブなミニマル・テクノ、2011年に πEnsemble 名義で発表したアルバム『Pădurea De Aur』は室内楽を再構築したモダン・クラシカル的な作品でしたが、今作はその両方の要素を纏め上げた傑作になっている。

まず1曲目の、不穏なベースラインが作り出す緊張感で延々と引っ張りながら、様々な音が立ち上っては消えていく “tulip en” が圧倒的。その他にも淡々と鳴るキックの上にうっすらと乗るストリングスが景色を塗り替えていく、17分を越す大作の “doar unul” 、躍動感のあるリズムの上で鳴る、滴り落ちるようなピアノの調べが美しい “ksses in plic” 、重心の低いベースラインが強靭なグルーヴを作り出している “pechiuli rose” 等、全曲素晴らしい傑作ぞろい。

さすがにフロアでの機能性という意味では前作よりも一歩(いや、二、三歩かな)劣るものの、音楽的な豊潤さではそれを上回る成長を聴かせる本作は、現在のルーマニア勢の素晴らしさが結実した、金字塔的な作品だ。

2013年3月のお気に入り

っつうことで3月のお気に入り。3月は2月以上に仕事が忙しくて、通勤時以外で音楽聴くことが少なかったんですが、枚数はそれなりに聴いたせいか、好きな盤も多目。玉置浩二のは出たの去年なんだけど、聴いたの最近なので。あと時間がないせいか自然と長い曲を避ける傾向が強くなってるんだけど、そのせいでテクノをあまり聴けてないのをなんとかしないとねぇ・・・。
曲単位のお気に入りは、落としただけで全然聴いてないので今回はパス。

2013年2月のお気に入り

なんか2回目にして早くもきつくなってきた感のある月間ベストなんですが、まぁさすがに1回でやめるのはなんなので、とりあえず続けてみます。
っつうことでお気に入りを6枚。1月の(関連記事)と枚数が同じなのは偶然。

2月は仕事が忙しかったのと、精神的に弱ってる日が多くてなかなか音楽をちゃんと聴く時間が作れなかったんですが、振り返ってみればそれでもそれなりに良盤は多い月だったかと思います。とはいっても Inc. や CRZKNY を筆頭に、まだ回数聴けてない盤も多いので、それらは3月に持ち越し。あとフリーのに関してはほとんどちゃんと聴けた盤がないんだけど、OM’MAS KEITH は言い訳っぽくなんとか入れてみた。

以下はフリーで落とした曲の中から(コメントは割愛)。

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PETRE INSPIRESCU / MARCEL SI FIII (Lick My Deck) 12″

PETRE INSPIRESCU / MARCEL SI FIII (Lick My Deck)
http://www.lickmydeck.com/

もう1月も半分以上が過ぎましたが、相変わらず2012年のものをぐだぐだと。

まだ日本には入ってきてないみたいだけど、昨年末にセカンドアルバムを発表し、まもなく Fabric からも未発表曲のみで構成したミックス CD を発表する Petre Inspirescu さんが2012年に発表したシングル。

彼は2011年に πEnsemble 名義でモダンクラシカルに近い方向性の作品を出していたので、 Petre Inspirescu 名義のときにも室内楽的な要素が入ってくるのかと思ったら、こちらはいつも通りの淡々としたミニマル・テクノ。
“Vrednik” は途中うっすらと入るストリングスが多少それっぽいものの、曲の基調となるのはポツポツと鳴るキックと、心臓の鼓動を思わせるベースであり、そういった意味では Petre Inspirescu のダンス的側面が表れた曲になっている。
それでいてパーカッションやクリック音などを徐々に積み重ねながら組み立てられていくグルーヴは、非常に細やかな音作りがなされていて、きちんとリスニングにも耐えうる見事な曲。

もう一方の “Vrednik” は、序盤の跳ねたリズムでクラブ・トラック的な側面を出しながらも、中盤から入ってくる硬いスネアと、クリスタルやブラスなどの上モノがゆっくり融合する美しい曲。
両曲共に Petre Inspirescu の作曲家としてのセンスが感じられる充実したシングルかと。

JAY BLISS / The Art Of Doing Nothing EP (Initials) mp3

JAY BLISS / The Art Of Doing Nothing EP (Initials)
http://www.facebook.com/jay.bliss.music

一応前回、前々回とデジタルで買えるルーマニアン・ミニマルを紹介したんですが、今回ので最後です(本当はシリーズ化してみたかったんだけど数が足らなかった)。

っつうことで、2003年ごろから活動しているらしい Jay Bliss さんがイギリスの新興レーベル Initials から出したシングル。

この人は色々なレーベルから作品を出していて良い作品も多いのですが、今作はあまり特徴のないミニマル・ハウスで、まぁ良くもないけど悪くもないという感じ。
なので作品としてはかなり微妙なんですが、例外なのが14分にも及ぶ Petre Inspirescu のリミックス。
Petre Inspirescu は細かい部分まで作りこんだ印象のトラックが多い人ですが、今回のリミックスも細かい音の抜き差しでじっくりと展開し、何か起こりそうな予感を引っ張りつつも、結局何も起こらないという素晴らしいもの(褒めてます)。

ということで、 Petre Inspirescu のリミックスのためだけに買っても十分元取れるシングルかと(デジタルで1曲ずつ買ってもいいんだけど)。
ちなみにデジタルの方がアナログより1曲多いです。

The Art of Doing Nothing - EP - Jay Bliss

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Petre Inspirescu / Intr-o seara organica… ([a:rpia:r]) 3LP

Petre Inspirescu / Intr-o seara organica... ([a:rpia:r])

iPod の容量がいっぱいになりそうなのでてきとうに。

Cadenza から『Tips』というダブルパックをリリースしているルーマニア出身のプロデューサー Petre Inspirescu が、同じくルーマニアの Rhadoo と主催するレーベル [a:rpia:r] 2009年末に発表したファースト・アルバム。

Cadenza 関連のアーティストというとパーカッションを多用したミニマル・テクノと相場が決まっていますが、今作もご多分に漏れずパーカッション使ったミニマル・テクノ。

しかし陽性な雰囲気の作品の多い Cadenza に比べると、今作のトーンは終始抑え目で、なおかつあまり展開もなく非常にそっけない。
だがほとんどの曲が10分超という長尺の中で(アルバムは6曲で80分!)、じっくりとじっくりとグルーヴを体へと浸透させていくトラックは、これぞ正にテクノといったもので、一旦はまると何度でも聴きたくなる魅力をもっている。

またどの曲にも 4/4 からは外れるようなリズム感の音を忍び込ませる事によってグルーヴにふくらみを持たせているのも面白い。

ecrn award にも書いたんだけど、 Cadenza 系のアルバムでは決定打ともいえる素晴らしい作品ではないかと。

試聴

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Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL) 12″

Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL)

この前紹介した RAL の2枚目。
例によって誰が手がけているかは分からないのだけれど、テクニークによると Rhadoo と Petre Inspirescu の仕事だそう。しかし『RAL1001』が Luciano の特徴が分かりやすく出ていたのに比べると、こちらはちょっと作者の色までは聴き取れず。

だがいかにも Cadenza っぽい作品が多いというのはこのレーベルの共通とするところで(そもそも Cadenza の周辺人脈が中心なんだから当たり前なんだけど)、今作も Dumitru Farcas の “Suita Din Tara Motilor” からサンプリングしたトラッドフォークっぽい音色が印象的な “Flöte” 、そしてこちらもオリエンタルな笛のサンプリングが印象的な “Clarinette” と両曲ともそれは変わらない。

でも一口に Cadenza っぽいといっても色々あるわけで、今作に関してはパーカッションがチャカポコと鳴る類のものではなく、以前のようなゆったりと風景が変容していくような感覚があるのがうれしいところ。
特にどんどん時間を引き延ばしていくかのような “Flöte” はかなり好きだ。

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V.A. / Cadenza CONTEMPORARY 01 & CLASSICS (CADENZA) 2CD


http://www.cadenzarecords.com/

Luciano が主催するレーベル、 Cadenza の初となるコンピレーションと、レーベル音源を使ったミックスの2枚組み。2007年リリース。

最近のパーカッシブ・ミニマル(ちょっと落ち着いてきたかな?)とは似て非なる、このレーベルの音楽的な部分と、ゆっくりと景色が流れていくような感覚というものが、こうやってレーベル・コンピとミックスCDという形になるとよく分かって、しかもそれがとんでもなく素晴らしいという、まことにもってコンピのお手本のような傑作。

なんだけれども、あえて不満を書けば選曲の部分で、コンピのほうはカタログ番号1から6まで、ミックスの方は16から22番くらいのものが使われていて、個人的に好きな8、9、11あたりがすっぽりと抜け落ちているんですよね。
まぁその辺は次のコンピに入るんだろうから、いいんだけどさ。

あとコンピの3曲目は “Extension” じゃなくて “Oregon” ですね。

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