SD JUNKSTA / GO ACROSS THA GAMI RIVER (YUKICHI) CD

SD JUNKSTA / GO ACROSS THA GAMI RIVER (YUKICHI)
http://www.sdp-228.com/

ウータンだったり、モーニング娘。だったり、たいていの大所帯グループというものは、一発当ててグループの名前が知られた後に、ソロなりグループ内グループでメンバー個人の名前を浸透させる、という場合が多いように思うんだけど、この SD JUNKSTA の場合、『CONCRETE GREEN』シリーズや自身の CDR によってある程度グループの名前は知られていたものの、寧ろ NORIKIYO を筆頭に、各人のソロ活動を前面に出すことによって、メンバー個人の名前を覚えさせると同時に、 SD JUNKSTA というグループへの期待感も生み出すという、(どこまで戦略的なものだったのかは分からないけれど)非常に面白い方法でグループの存在感を高めていった。

しかしそういった売り方をするためには、当然各人にソロでも通用する技量がなければならないわけで、それだけの連中が集まり、またこれだけ期待感を高めた状態で発表される本作は、それだけ多くのものを求められる作品なわけだが、誤解を恐れずに書けば、この『GO ACROSS THA GAMI RIVER』という作品は、メンバーのソロ作品しか聴いていない人たちの期待をかわす様な、というより寧ろ落胆させるようなアルバムだ。

というのも今作には各人がソロでみせていた要素が、持ち込まれるということがほとんどされておらず、では代わりに何が歌われているのかというと、いつもどおりの金とハッパと女の事ばかり。中でも地元産のコンドームをレペゼンした “SA.GA.MI. ORIGINAL ~RE: SA.GA.MI~” (この曲に参加した OHLD というラッパーカッコいい)から、 TKC と WAX が見事な掛け合いで警察、ひいてはハスラーさえも茶化す “風雲TKC SHOW ~曲者編~” までのくだらなさは特筆もの。

だがそのくだらなさは、彼らがやさで馬鹿話している様子をそのまま反映させたようで、彼らの共同体としての強固さを感じさせるし、またその他の SD JUNKSTA の生活を描写したような曲でも、深い絶望や焦燥染み込ませながらも、ユーモアを交えて語る様は、彼らのしたたかさやたくましさを感じさせて、それはそのまま反権力のメッセージとしてこちらに響く。

自らの過去への後悔と未来への決意を封じ込めたNORIKIYO 、今までの人生を詩的に描写した BRON-K のソロのような、シリアスさを求める向きには、ゆるめのトラックの上に軽妙なラップを乗せた曲の多い今作は、上に書いたようにあまり歓迎されるような内容ではないだろう。しかしこのアルバムの発するメッセージはある意味各人のソロよりも強いものだし、また SDP というコミュニティそのものを封じ込めたような内容からは、逆説的に彼らがソロ活動を自由に出来る理由が感じられて、非常に面白い(その分内輪受け的な部分も目立つけど)

革新性はもちろんなこと、あまり生産性も感じさせない内容ではあるが、その反面もの凄い魅力を放つ作品だ。

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[曲目]

マイクアキラ / THE RAP IDOL (P-VINE) CD

マイクアキラ / THE RAP IDOL (P-VINE)
http://micakira.jugem.jp/

昨日紹介した MICROPHONE PAGER に続いて、 LUMP EYE も再結成ですってね。もうベテランは昔の威光に頼らないとやっていけないということなんでしょうか。

元四街道ネイチャーのマイクアキラのソロ・アルバム。

色んな人のラップを聴いていると、当然のようにラップのスキルがイマイチな人というのもいっぱいいるわけなんですが、このマイクアキラの場合、それ以前に発声そのものが不安定すぎて、正直気持ち悪くて聴いてられないんだよね。同じように歌うようなラップのスタイルのなのるなもないと一緒にやった “Be Myself” なんかは、そのヴォーカリストとしての地力の違いがあまりにも明確に出ていていたたまれないくらい。
しかしそんな彼を慕って今作にはたくさんのラッパーが参加しているわけで、そこはやはり彼の人柄の良さゆえなんだろうなぁ、と思わせる独特のゆるさが全編漂っていて、回数聴いているうちに彼のヘタウマ、というより単に下手なラップもそれほど気にならなくなってくる。これが味があるってやつなんでしょうか。

まぁ彼の人柄云々というのは置いておいても、全体的に隠居していたベテランを若手が盛り立てる、みたいなつくりになっているので、それが全体のほのぼの感につながっているのは間違いないし、これだけ普段とがった連中が集まっているのに、ポップな仕上がりになっているのも面白いし、そこはやはりマイクアキラの個性ということなんでしょうか。

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Bron-K / 奇妙頂来相模富士 (YUKICHI) CD

奇妙頂来相模富士
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またまた SDP つながりで、今年の頭の方に出た Bron-K のファースト・アルバム。

Bron-K というと、その比較的まったりした声に反してアグレッシブに攻める “コノハナシ” でのラップが一番好きなので、このアルバムでの彼はちょっとレイドバックし過ぎている気がして、最初はイマイチぴんとこなかった。
んで、その印象というのは現在でも特に変わっていないんだけど、それでも飽きずに聴けるのは、いくらレイドバックしていると入っても、決して枯れているわけではなく、ある種の平熱感に包まれているからでしょうか。なので内容的には地味なのは否めないんだけど、 SDP 関連 では一番楽に聴けるアルバムかも。

BRON-K - 奇妙頂来相模富士

TKC / 百姓一揆 (YUKICHI)CD

百姓一揆
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SEEDA のブログによると、なんと相模原市長と対談したという TKC のアルバム。
SD JUNKSTA って苛立ちと内輪ネタ、そしてクサについてのラップが多いと思うんだけど、その中でもクサとユーモアを担うのが TKC という印象があります。
だからこのジャケットを見たときは単なるネタなんだと思ったし、1曲目で「一揆」の音楽にのせてラップするのを聴いて、さらにその思いを強くした。しかしその歌詞に耳を傾けてみれば、このアルバムの発売日である8月15日、つまり終戦記念日にかけたものだったりして(そういえな TKC も NORIKIYO も1曲目でお婆ちゃんの言葉を引用してるんだけど、コレは何か申し合わせたのかしら)、予想以上にメッセージ色が濃い。しかしその反戦や環境問題などのメッセージも、かしこまったり大上段に構えることなく、普段と同じ目線で語っているから、他のユーモアやクサの話と全く並列で聴くことができる。そしてだからこそタイトル曲や “ANOTHER TENSION 完成” の切迫感がいいアクセントになってるし、終盤のメロウな流れもじんわりと染みて、アルバムとして実にまとまったものになっている。
グループで見せている面と、それとはまた違った面を実に自然な形で提示してみせた、正に見事なソロアルバム。

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