これは一体オリジナル・アルバムなのか、ミックスCDなのかどちらなのでしょうか。自身のレーベルである bio からからの音源(全部自分の曲)をミックスしたもの。一応オリジナルと考えた場合今年2枚目となる通算4枚目。しかし私は今年の前半に出た『SUBLIMINA』は買ったまんま未開封で聴いてないという有様だったりします。なので前作との比較は出来ないのだけれど、ネットとかで見る評価によると2枚目の『Moments In Time』
同様リスニング志向のアルバムなようだけれど、今作は12インチの音源を使用しているということでもちろんダンス仕様です。つまりこのアルバムでは彼の作る疾走感のあるデトロイティッシュなテクノが思う存分楽しめるんだけど、なんかちぃ~と物足りないのよね。
以前も書いたような気がするんだけど、ヨーロッパ(UK含む)って随分多くのデトロイト・フォロワーがいる気がするんだけど、みんながみんな何故かデトロイト・テクノの叙情的な部分にばかり目がいっていて、黒人音楽的な部分、つまりソウルやファンクなんかの要素がすっぽり向け落ちてるんだよね。だからみんな妙に端整でまっちろいものが多い気がします。
で、このアルバムも全くもってそんな感じ。完成度自体は高く、シンセ・ワークなんかは特筆に値すると思うけど、ぐっちょりと混ざり合ってこちらに向かってくるようなファンクネスが足らんのですよね。かといって Soul Designer のアルバムほど「曲」として突き詰められているわけでもなく、ちょっと中途半端な気がします。流し聞きとかする分には全然問題ないけど。
あと ableton live とマックで加工した、とか書いてある割りにめちゃくちゃ普通にミックスCDです。
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Echoes From the Future: … Vince Watson by G-Tools |
フォロワーの人達は基本的にファンクネスが抜けているので、薄味な感はありますよね。あっさりしている分聴き易さなんかがある気がします
PING:
TITLE: Vince Watson – Echoes From The Future : View To The Past (Bio Music:BIO017CD)
BLOG NAME: Tokyo Experiment
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近年テクノシーンに於いてJoris Voornと共にヨーロッパで株を上げているのが、このVince Watsonであろう。活動歴は10年位だろうか、その割に日本ではまだまだ地味な扱いだが一部では評価はかなり高い。Joris Voorn同様にスタイリッシュでメロディアスな作風が評判で、Jorisに比べるとアナログシンセの温かいサウンドとストレートな4つ打ちが得意である。EPは結構な量を発表しているのだが、やっとアッパー目のテックハウスアルバムが出たので嬉しい限り(今年上半期にも「Sublimina」と言うアルバムは出しているが、リスニング向けだったりする)。しかしどうだいこのアルバム、どこを切っても金太郎飴の様に変わり映えがないねぇ(笑)薄く透き通るシンセサウンドが全編使われて、浮遊感のある4つ打ちテックハウスが最初から最後までずっと続くんだよね。一曲一曲の水準はかなり高いけれど、この人一本調子なんだなと再認識出来た。どうせならこの道をずっとやり続けてくれよ、そうしたら偉い。けなしてる訳じゃなくて、この道を極めて欲しいだけだよ。UK版デトロイトテクノとも取れる音なので、この手の音が好きな人には一発で好きになれるのではないかな。Vince本人もアルバムライナーの中で「自身の音楽の経歴の中で、この地点に来るまで随分時間がかかった」と書いていた。結構な気合いの入れ様と、ある一つの達成感みたいなのがあるんだろう。なんだかんだ素晴らしいアルバムが、また一つ登場した。
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