Neurotech / The Decipher Volumes (Self Released) mp3

Neurotech / The Decipher Volumes (Self Released)
http://neurotech.bandcamp.com/

スロベニア出身の Neurotech こと Wulf さんが2013年に出した、おそらく2枚目のアルバム。

メタルとエレクトロニクスを融合させた音楽性は、 Enter Shikari なんかを思い起こさせる部分もあるんだけど、こちらの方がトランス的なきれい系のシンセを前面に押し出していて、非常に聴きやすくなっている。またメタルとトランスってクラシック的な荘厳さという意味では共通しているので、そういった意味でも違和感は無い。

ただその分メタル的な激しさというのは薄いので、デス声を中心に、それに様々なエフェクトをかけたヴォーカルが邪魔なように思えてきて、私は何曲かで聴ける女性ヴォーカルを中心にしてほしかったかしら。

ノースリーブス / キリギリス人 (Epic) CD

ノースリーブス / キリギリス人 (Epic)
http://www.no3b.net/

AKB48 の小嶋陽菜、高橋みなみ、峯岸みなみの3人によるユニット、ノースリーブスが2013年1月発表した9枚目のシングル。
AKB に関しては、最近では本体もろくに追いかけられてない状況なので、派生ユニットやソロなんてとても追いかける気にならないという感じだったんだけど、びびんばさんがブログに、初回盤に入っているソロ曲は石野卓球、小室哲哉、川本真琴がそれぞれ作曲していると書いていたので、さすがに気になって聴いてみた。
まぁレンタルで初回盤も置いているかと思ったらなかったので、結局通常盤しか聴いてないんだけど(さすがに買う気にはなれなかった)。

今回ソロ曲に豪華な作家を並べていますが、タイトル曲には旬な作曲家といっていいんでしょう、昨年末の紅白で一気に知名度を上げたゴールデンボンバーの鬼龍院翔が作曲しています。私はゴールデンボンバーをまともに聴いた事がないので、今作がいつもの作風と比べてどうなのかというのは判断できないんだけど、いつもの AKB のシングルの完成度を基準としたとしても、これはイマイチと書かざるを得ないですかね。
冒頭から鳴るブラストともに突っ走る歌謡ロックで、すごく勢いがあるのはいいんだけど、逆に書くと勢い以外に何もない曲。こういうのはロック・バンドとかがやる分にはいいのかもしれないけど、アイドルが歌うには不向きだろう。あとのっぺりとしたドラムがすさまじくダサい。

それよりは、今がよければそれでいい、という内容の歌詞を、今の AKB のメンバーが歌う事の意味とかを考えたほうが面白いかも。

カップリングは可もなく不可もなく。

キリギリス人 - EP - ノースリーブス

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Nosaj Thing / Home (Innovative Leisure) mp3

Nosaj Thing / Home (Innovative Leisure)
http://www.innovativeleisure.net/

LA出身の韓国系アメリカ人 Nosaj Thing こと Nosaj Thing が2013年1月発表した2枚目のアルバム。

彼は現在27歳らしいんだけど、なんでも13歳の頃から音楽活動をしており、また Low End Theory の常連アーティストとしてもよく紹介される人で、まぁ要は今イケてるビートメイカーの一人なわけですね。

しかし今作は、そんな経歴から想像するような、ダブステップやジュークなどの時代のビートを貪欲に取り込んだ作品とかではなく、むしろ懐古的な色合いが強い。それはアルバム・タイトルの『Home』であったり、Blonde Redhead の Kazu Makino が参加した今作のリード・トラックである “Eclipse/Blue” の、まるで逆回転させているかのような柔らかなトラックで予見されていたのかもしれないが、他にも時を刻む針の音を思わせるリズムの上でオルゴールのような音色がメロディを奏でる “Safe” 、昔のアメリカ映画のサントラから切り出してきたようなピアノ曲 “Prelude” 、90年代によく聴かれた、所謂ドリルンベースを思わせる高速ブレイクビーツの “Light 3” など、作品全体の雰囲気として統一が図られており、少なくともクラブで映えそうな攻撃的な曲はまったくない。

なので聴き様によっては一昔前のエレクトロニカと変わんないんじゃないか、って気もするし、実際ビート・ミュージックとしての刺激には乏しいんだけど、懐古的な中にもきちんと流れや緩急があって物語性を演出しているのと、チルウェイヴやシューゲイザーを思わせる薄いノイズ交じりの音像が現代性を演出しているので、そういった意味での古臭さはあまり感じずに心地よく聴ける(靄がかった音像は今作の懐古的な雰囲気にも合ってるしね)。

まぁ私は Low End Theory 自体、実力派の昔取った杵柄的なものだと思っているので、そこに彼の早熟なキャリアというものが合わされば、こういう作品になるのは自然な気がするので、変に時代の先端的なものを期待しなければ楽しめる作品ではないかと。

Home - Nosaj Thing

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Negative Standards / VI-XI (Vendetta) mp3

Negative Standards / VI-XI
http://www.negativestandards.com/

オークランドのハードコア・バンド Negtive Standards が今年の5月に出した EP 。
(アナログも出てるみたいだけど、私はフリー・ダウンロード版)。

基本的には2ビートやブラストで突っ走るハードコアで、かっちりしすぎず崩しすぎず、それでいて勢いのある演奏はかっこいいの一言。また一方でこの手のバンドの弱点になりやすいスローパートでも、きちんとうねりがあるし、8分を越す “X” みたいな展開のある曲でも聴かせる構成力もあり、押し引き両方備えているところに実力を感じる。

まぁ何かこれだっていう強烈な個性があるかというとそうでもないんだけど、地味ながらもいい作品です。

ただ夜中に不意に見ると夢に出てきそうなジャケットが怖い・・・。

ダウンロード

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NX1 / SR (SEMANTICA) mp3

NX1 / SR (SEMANTICA)
http://www.semanticarecords.com/

NX1 の3枚目は自身のレーベルからではなく、スペインのレーベル Semantica から。

この Semantica というレーベルもハードなものが多いレーベルみたいなんだけど、だからなのか今作は Surgeon なんかを思わせる変則的なリズムのハード・ミニマル。
ただベースのないキック中心のリズムながら、そのキックが縦ノリだけではなく横ノリのグルーヴも同時に作り出していて、そこら辺はちゃんとミニマル以降な感じ。

あと重たいリズムのみで押し切る前半から、物憂げな上モノが入ってくる後半の展開とかけっこうベタなんだけど(あとハイハットの連打とか)、なんだかんだで盛り上がるし、こういうの聴くとテクノっていいなぁと改めて思います。

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NX1 / NX1 02 (NX1) mp3

NX1 / NX1 02 (NX1)
http://nexerecords.es/

第1弾(過去記事)に続いて、今年の頭に出た自身のレーベルからの2枚目。

今作も無駄を排したミニマル・テクノ、という点では同じなんだけど、疾走感の目立った前作に比べると、より重量感のあるトラックが揃っていて、これまたかっこいい。

ミニマル・ダブ的な意匠ながらもベースの軽やかさが面白い1曲目、ハードなキックで押し切る3曲目もいいのですが、重量感のあるリズムの上にどんどん音が重なって混沌が増していく2曲目が特にいい。
これまた傑作です。

Nx1_02 - Single - NX1

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NX1 / NX1 01 (NX1) mp3

NX1 / NX1 01 (NX1)
http://nexerecords.es/

相変わらずテクノ系の記事はアクセスが集まらないんですが、気にせずいきましょう。

ということで、スペインのアーティストらしい NX1 が2011年に発表したデビュー・シングル。

この人は素っ気のないジャケットを見れば分かるとおり、曲の方も派手な装飾や展開もない硬派な、いいかえれば地味な事が多い人で、正直これといった特徴を挙げにくい人なんだけど、逆に基本的な部分での完成度が毎度高い。
エフェクトを効かせた上モノはほんのりとミニマル・ダブの香りを漂わせながらも、それでいて非常にすっきりとした音作りは正にテクノという感じで、疾走感とグルーヴを併せもったリズムも素晴らしく、とにかくダンス・トラックとしてよく出来ている。
またこのシングルに収録された3曲ともエフェクトのパターンがほとんど一緒ながら、リズムの差異で曲の印象を変えているのも憎い。

デビュー作ながら文句なしの傑作です。

Nx1_02 - Single - NX1

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nsi. / sync (non standard productions) CD

nsi. / sync (non standard productions)
http://www.nonstandardinstitute.com/

最近では Moritz Von Oswald Trio での活動がメインになっている印象もある Max Loderbauer と、 Villalobos と組んだりもしている Tobias Freund のユニット、 nsi. が2010年末に発表した2枚目のアルバム。
前作はミカ様の Sähkö からでしたが、今作は自身のレーベルから。

その前作はピアノの小曲を集めた音響作品でしたが、「ドラム・マシンとシーケンサのための24曲」との副題がつけられた今作は、その副題どおりアナログ機材を使用して作られており、その使用機材を記号化して並べただけのタイトルからして意味性を排している印象がある。
また長くても4分未満、短いと30秒ほどの楽曲は、ドラム・マシンを中心とした目立ったメロディもない簡素なもので、なんともとりとめのないもの。

しかしどの楽曲もシンプルながらもアイデアに満ちたもので、変則的なリズムを刻むものからアンビエントっぽいもの、またなんとも形容しづらいものまで(笑)、似たような曲が一つもなく非常に面白いし、アナログの音の丸みのせいか意外に聴きやすいのも良い。

ただ実験的なだけではない、非常に良い作品です。

試聴

NORIKIYO / 秘密 (YUKICHI RECORDS) CD

NORIKIYO / 秘密 (YUKICHI RECORDS)
http://www.sdp-228.com/

間もなく発売になる NORIKIYO の3枚目のアルバム『メランコリック現代』からのシングル。

この記事に関してはこの数日間色々こねくり回しているものの上手くまとまらないので、また例によって適当に端折らせてもらうのだが、今作のメイントラックである “秘密” は、いってしまえば前作『OUTLET BLUES』収録の “運命 ~SADAME~” をテーマ的にも曲的にも焼き直したような曲だ。

しかし非合法な儲け話で痛い目をみた昔の自分に対する後悔の色が強かった “運命 ~SADAME~” に比べると、今作の歌詞は劣等感や不安感の方が強く、微妙にその色合いを異にしていて、またその原因がなんなのか、少なくともこの曲を聴いただけではよく分からない(歌詞カードとにらめっこすればまた変わるのかもしれないけど付いてないしね)。

そして “運命 ~SADAME~” と決定的に違うのは、今作の NORIKIYO のラップには全くといっていいほど前向きさを感じさせる言葉がないという事で、つまり漠然とした負の感情だけに覆われた曲に感じる。

そんな NORIKIYO に比べると、無理やり話を進めるナレーターのごとく H.Teflon の歌には多少前向きな言葉が並ぶのだけれど、それによって NORIKIYO の憂鬱がはれた姿というのは浮かばないし、アウトロの最後に NORIKIYO が吐く、「いびつでもいい、本当のことは秘密でもいい」という言葉が、一体何を欲しているものなのかは分からないが、そんな仮初めのものでも求めずにはいられないだけど切迫感の方がこの曲は強い。

この事から今作をよく分からない曲、とするのは簡単なんだけど、そもそも SD JUNKSTA の面々の、そのちゃらんぽらんなイメージに反して(失礼)、ソロでもグループでも素直な心情吐露がなされていている部分が面白いと感じている私からすると、このとりとめのない憂鬱をそのまま吐き出す NORIKIYO はやはり魅力的だし、その先にあるものはなんなのか、俄然アルバムに対する期待値が上がった。

これ以外にも、かつての自分の所業を「オレは関係ねぇ」と突き放すかのような “残念です ~相模原編~” も興味深く、彼の描く現代の憂鬱がどういうものなのか、アルバムを楽しみに待ちたい。

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NITRO MICROPHONE UNDERGROUND / THE LABORATORY (COLOMBIA MUSIC ENTERTAIMENT) CD

NITRO MICROPHONE UNDERGROUND / THE LABORATORY (COLOMBIA MUSIC ENTERTAIMENT)
http://www.nitrich.com/

私は表現が大げさすぎて「伝説」という言葉をとても積極的につかう気にはなれないのだが、それでも日本のヒップホップにも伝説と呼ばれる瞬間がいくつかあって、中でも NITRO MICROPHONE UNDERGROUND はデビュー時の熱気もあってか、存在そのものが伝説であるかのように聴衆に思わせることに成功したグループでした。

それ以降も彼らは聴衆に適度な飢餓感を与える事により「伝説」の残り香を漂わせ続けてきたわけだが、いよいよ8人揃う事に何の特別感もなくなった現在、前作『SPECIAL FORCE 』(過去記事)から約3年ぶりに発表された本作は、これが伝説の正体ならなんとも寂しい非常に凡庸な作品だ。

なんて書くとどんなに酷い作品なのかと思うかもしれないが、特に完成度が際立って酷い作品というわけではない。でも代わりにどこか良い所を挙げろといわれても頭を抱えてしまうような作品で、やっぱり凡庸と書くしかないのが辛いところ。

でまぁその原因としてどの曲もトラックが良くない、と書きたいところなんだけど(いや、実際それもそうなんだけど)、それよりも各人のラップがとにかく散漫で、全くといっていいほど耳に残らないんだよね。
『SPECIAL FORCE』の時はもうちょっと引っかかるものがあったと思うんだけど、今作は正に右から左。
その中でも SUIKEN は『BACK AGAIN』(過去記事)に続いて往年の勢いを再び感じさせてくれるし、 BIG-Z もどっしりとしたラップで存在感を示しているものの、 S-WORD は最後の作品というつもりで臨んでいるからなのか変に力が入ってしまい一人浮きまくっているし、他の5人に関しては全くといっていいほど印象に残らない。

『SPECIAL FORCE』はイマイチだったものの『BACK AGAIN』が思いのほか良かったので、今作ももしかしたら、という思いがあったのだが、残念な結果に終わってしまったようだ。そしてこれが伝説の最後なのだとしたら、これはお粗末な結末だといわざるを得ない。

The Laboratory - Nitro Microphone Underground
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