今回も簡単に。
例によって並びは順位とかではないです。
それにしても日本のアーティスト多いな…。
DDMS / Makers – part one (Haunt) mp3
Deadbeat 関連でもう1枚。 Horror Inc. などもリリースしているカナダのレーベル Haunt から DDMS のデビュー・シングル。
この DDMS というのは、Deadbeat、DeWalta、Mike Shannon、The Mole の4人によるプロジェクトで、カナダのテクノが好きな人間からすると、 The Modern Deep Left Quartet を上回るスーパーグループなんじゃないでしょうか。
ただ今作がそんな豪華アーティストの共作が堪能できる作品なのかというとそんな事はなく、3曲中2曲が Mike Shannon によるリミックス、もう1曲は The Mole と Hreno (この人もカナダの人みたい)によるリミックスという、つまりオリジナルがゼロという微妙な内容。
ただ曲自体にかんしては、ひしゃげたキックと、軽快に跳ね回るベースライン、ミニマル・ダブ的な上モノと、一聴するとバラバラにも思える要素を絶妙なバランスで纏め上げながらも、中盤から入ってくるサックスにより曲の表情をがらりと変える Mike Shannon のリミックス。そして Mike Shannon と同様のサックス(多分オリジナルで使われてるのかな?)の雰囲気を活かし、しっとりとしたディープ・ハウスに仕上げた The Mole & Hreno と、どちらも良い。
まぁこの4人が集まった、っていうインパクトに比べると、作品自体の個性は薄いのは否定し難いので、今度はがっつりオリジナルを作ってほしいものです。
ちなみに今作には『part two』もあるけど、そっちもリミックスのみ(私は聴いてない)。
Deadbeat / The Infinity Dubs, Vol. 1 (BLKRTZ) mp3
気がつけば活動歴も10年を超え、すっかりベテランといった感じになってきた、Deadbeat こと Scott Monteith さんが2013年3月に出したシングル。
この人に関してはデビュー・アルバム買って以降ずっと追いかけてるんですが、今確認したらブログで作品紹介するの約5年ぶりなのね(我ながら酷い・・・)。
今作をリリースするレーベル Blkrtz は、カナダからベルリンに移住した Deadbeat が2010年に終了した ~scape の遺志を継ぐ形で立ち上げたセルフ・レーベルで、実際レーベルからの第一弾となった『Drawn And Quartered』を筆頭に、ダブの要素が強い作品が目立っていました。
でもその路線はある程度やりきった感があるからなのか、今作はテクノ路線の曲をリリースしていくというシリーズの第一弾。
ただ昨年のアルバム『Eight』でも Mathew Jonson が参加したりテクノ色が濃い曲も合ったので、方向性としては特に違和感はない。
しかし曲に関しては、初期のシャッフルするリズムの作り出すグルーヴが強烈なマイクロ・ハウスとも、彼の代表的なスタイルでもあるミニマル・ダブとも違う、疾走感のあるテック・ハウス的なもので驚く。
1曲目の “I.D.1” は、冒頭から鳴るシンセこそミニマル・ダブ的な音色ながら、裏でリズムをとることの多いミニマル・ダブと違い、あくまで紡ぐグルーヴは前のめりという、ミニマル・ダブとは似て非なるものになっていてなかなかに新鮮。またリズムもベースではなくキックを前面に出しているのも、テクノ的な印象を強くしていて良い。
そして全体を包み込むシンセがミニマル・ダブに近い心地よさを感じさせるものの、それを変則的なリズムの疾走感が上回る “I.D.2” もかっこいい。
フロア・ユースでありながら、自身の新しい面も打ち出した傑作です。
あと自分でリンクはっておいてこんな事書くのもなんなんですが、今作が収録曲2曲なのに iTunes Store で1500円もするのなんなんですかね。アナログより高いじゃん・・・。
Mike Shannon / Under the Radar (CYNOSURE) 2LP
http://www.cynosure-recordings.com/
毎度毎度遅れたタイミングで12インチを紹介する当ブログなんですが(だって聴くのとリッピングが追いつかないんだもん)、今回も今年の3月に出たシングル。
Mike Shannon が主催するレーベル Cynosure の40番を記念するシングルで、見開きジャケットの10インチ2枚組み。
さらに記念盤という事で参加しているリミキサーも豪華で、 Ricardo Villalobos に Deadbeat 、さらに最近 Mountain People の名義で活動している Rozzo という布陣。
しかし内容に関してはまぁぼちぼちといった出来で、まず Mike Shannon によるオリジナルがイマイチで、この曲に参加した Fadila という女性のソウルフルなヴォーカルしか耳に残らない。また Villalobos のリミックスは、ぬめった空気と乾いたリズムという、ちょっと懐かしい感じの Villalobos らしさが感じられるリミックスながら、まぁそれだけという感じ。
一方硬質なダブテックにした Deadbeat のリミックスと、幽玄なテック・ハウスにした Rozzo のリミックスは素晴らしいので、これだったら1枚目いらなかったんじゃないのかなぁ、とか思わなくもないが、それじゃぁ記念としての豪華さがうすれるという事なのだろうか。切ないな。
DEADBEAT / Take me Back to London Town (Cynosure) 12″
今日会社帰りになんとなく思ったんだけど、もし噂通り Moritz のアルバムが出たら、ベーチャン絡みでは初めてのオリジナル・アルバムになるのかな?まぁ違うレーベルから出るのかもしれないけど。
ということで、いつも3テンポくらい遅い12インチ紹介。
最近はめっきりダブダブな Deadbeat なわけですが、そのゴツゴツとしたデジタル・ダンスホール路線と、以前 Cynosure からリリースしていたような、シャッフル感の強いミニマル・ファンクを掛け合わせたようなのが本作。
音の質感は前作に近いダブ・テックなんだけど、ダンス・ホールのような縦ノリよりは、明らかに重心の低いグルーヴが特徴で、今の路線と昔の路線をすり合わせた、と書けば簡単ですが、それを見事モノにしていて恐れ入る。
“THE HECKLER” という曲が、デトロイト系にも近い清涼感があるのも新鮮でした。
DEADBEAT / EASTWARD ON TO MECCA (wagon repair) 12″
昨日は unit に Moritz von Oswald Trio のライヴを見てきました。最初は単体で記事書こうかと思ったんだけど、そんなに書くことないんで簡単に。因みに私が見たのは2枚目のライヴのみ。
基本的な構造としては、ダビーなベースラインの上に、 Vladislav Delay によるシンバルを中心としたドラムと、微細なエレクトロニクスが絡むもので、音的には十分気持ちよかったんだけど、果たしてフロアで聴きたい音だったかというと、ちょっと違うかなぁ。記憶が確かなら1時間強の中、5つのパートに分けられていて、時折四つ打ちのキックが挟まれる曲も合ったんだけど、ダンサブルというほどではなかったし、個人的には家でダラダラ聴きたい音という感じ。まぁ直前に『BCD-2』があったせいで、必要以上にベーチャンを期待しすぎたのもよくなかった気はします。
でもフロアにいたとき私の周りでは「やべぇ」という声がずいぶん聴かれたので、他の人はけっこう満足度高かったのかしら。でもそうだとしたら、今のクラバーはずいぶんストイックな人が多いのね。
ということで、地味に続いている wagon repair 特集。
所謂ミニマル・ダブ、という言葉で括られるアーティストは、 Basic Channel という偉大すぎる先人の作り出したフォーマットの中から、一歩も外に出ていないような人が少なくない。また Echospace のように、むしろその枠をなぞる事をよしとする様な活動をしている人もいたりします。
そんな中、昨年のアルバム『JOURNEYMAN’S ANNUAL』において、ダブ・ステップやダンスホールを飲み込んだサウンドを鳴らし、明確に進化への意思を示してみせた Deadbeat は、個人的にはミニマル・ダブのアーティストの中でも、最も次の一手が楽しみな人でもあります。
その『JOURNEYMAN’S ANNUAL』以降、初のシングルとなるのが、この Wagon repair の33番。今まで Cynosure や revolver 、 Mutek など、地元カナダのレーベルから作品をリリースしていただけに、少々意外な気もするけど、 Wagon repair からは初となるシングル。
彼はアルバムではミニマル・ダブ、シングルではミニマル・ハウス/テクノと分けている節があるんだけど、 “Mecca” は『JOURNEYMAN’S ANNUAL』でのデジタル・ダンスホールな音作りを、四つ打ちのフォーマットにはめ込んだような曲で、ゴツゴツとしたパーカッシブな音作りが気持ちいいダブ・テック。
これだけでも次の一手としては素晴らしいんだけど、 “MECCA DUB” ではパーカッシブな質感を保ったままミニマル・ダブに、 “MECCA DRUM JACK” では曲名通りアフロ・トライバルなデジタル・ダンスホールにしていて、3曲それぞれでダブの違った側面を見せていて面白い。
POLE / steingarten remixes (~scape)CD
~scape の首領である Pole の、昨年出たアルバムのリミックス盤。私は元々の『Steingarten』の方は聴いてないんだけど、こちらは面子があまりにも素晴らしいので買ってしまった。今までリミックス盤って色々聴いてきたけど、ここまで時代の突端にいる人たちをすくい上げたものって稀なんじゃないでしょうか。
とはいっても全部が全部知ってるアーティストなわけでもないんだけど、先日紹介した Skull Disco の Shackleton 、その Skull Disco と共にミニマルとの境界線上のレーベルとして評価が高い Punch Drunk を主宰する Peverelist 、数々のカナダのレーベルから秀逸なダウン・ビート・ミニマルを発表している The Mole 、最近デジタル・ダンスホールで注目されている Ghislain Poirier 、同じくデジタル・ダンスホールな新作を昨年出した deadbeat 、 herbert のような生活音を取り入れたミニマルがユニークな frivolous 、そしてご存知 perlon から dimbiman と melchior productions と、もうあまりにも凄すぎる。残りの二人は今回はじめて知ったんだけど、 gudrun gut って人は現在 Monika というレーベルを運営していて、なんと元 Einsturzende Neubauten だという方、 mike huckaby は詳しく分からないんだけど、デトロイトのベテランさんみたい。
これだけの面子を集めれば当然内容も面白いんだけど、変則的なキックで四つ打ち感をうっすらと演出しながらも、丸みを帯びたベース音が印象的なダブ・ステップに仕立てた Peverelist 、燃え滾るようなダンスホールの Ghislain Poirier と deadbeat 、特に目新しさはないものの、抜群に気持ちいいミニマル・ダブの mike huckaby が特に良かったかしら。
まぁ正直この面子の並び以上に面白さがあるかというと微妙ではあるんだけど、現在の(ベルリンの)エレクトリック・ミュージックの大まかな動きはつかめる盤だと思うので、ここから色々掘り下げていくのも楽しいのではないかと。
DEADBEAT / JOURNEYMAN’S ANNUAL (scape)CD
5日の日曜日に、Lエルトセヴン7 のもりたさんと、彼の友人のご好意により関ジャニ∞のライブに行ってきました。まぁ詳しくはそのうち書こうかなと思ってるんだけど、いやぁ、すごかったですね。あんなの婦女子が見せられたらそりゃぁ誰だって恋に堕ちますよ。圧巻でした。
近頃暑い日が続いていて何もやる気がおきないのですが、そんなときはやっぱりダブでしょう、ということで Deadbeat の5枚目のアルバム。
Deadbeat といいますと、シングルや Crackhaus でのミニマル・ファンクは別にすると、アルバムのほとんどが Basic Channel ~ Rhythm & Sound からの影響が強い冷ややかなミニマル・ダブだったんだけど、今作はダンス・ホールやダブ・ステップを飲み込んだ、かなりダンサブルなエレクトリック・ダブ。先日の来日公演ではDJでダンス・ホールばかり回していたそうで、そういった最近の彼の趣向が反映されたのか、それともダブ・ステップからの影響なのか、とにかく Pole や Monolake との併合の後にこんな変化を遂げるとは正直意外。しかしここで鳴らされる低音にはかなり燃える。
最初の3曲こそ今までのイメージに近いミニマル・ダブながら(それでも以前よりははるかに動きがある)、”refund me” のパーカッシブなドラムとラガMCを皮切りに、以降は跳ね回る硬いドラムの音と、打ち付けるような重いキックが織り成すダブ・サウンド。テクノ方面でダブやるとなると、そのほとんどが Basic Channel の影響から逃れられないと思うんだけど(まぁ最初にあんなすごいフォーマット作られたら誰も太刀打ちできんよ)、ならばとそれ以前のダンス・ホールにヒントを見出したこのサウンドはとても新鮮に思えるし、ダブ・ステップなどとの同時代性も備えているのは流石。
ぜひぜひ爆音でこの低音を味わっていただきたい。
stephen beaupre/foe destroyer(MUTEK)CD
crackhaus というユニットはどうも知名度のせいか deadbeat が中心になってると思われがちだけど、彼と Stephen Beaupre のソロ曲を収録した『it’s a crackhaus thing』を聴けば、実は Stephen Beaupre の色の方が強いということが分かります。そしてこの Stephen Beaupre の初となるソロ・アルバムは crackhaus の音楽的要素をさらに進めたものなのではないでしょうか。
とにかく今作も彼のサンプリング・センスが冴えていて、カントリー辺りから持ってきたであろう軽快な上ものが実に楽しい。しかもそこにパーカッションやメロディーなどを幾重にも重ねながらも、まったく雑然とした印象を与えない。そして今作はダブの要素も比較的強く、特にどっしりとしたリズムはカットアップ・ファンクに多いおちゃらけたイメージを見事に回避している。
以前紹介した soulphiction の『state of euphoria』(過去記事)と並んで音楽的に優れたと感じさせるアルバムではないかと。
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mike shannon/possible conclusions to stories that never end(~scape)CD
現時点において、ミニマルの中心地がベルリンだというのはまず間違いのないところなのだけれど、個人的にはベルリンの磁場からある程度はなれた動きをしているカナダのアーティストに惹かれてしまいます。
例えば Akufen こと marc leclair は、昨年のアルバム以降(過去記事)、以前のカット・アップ・ファンクからは想像もつかないような静かな世界を描いているし、Mathew Jonson はますますサイケデリックな色合いを増し、Deadbeat は Pole との関係性を強めますますダブへと傾倒しています。
そして自身のレーベル Cynosure を主催する mike shannon のこのアルバムも、同様に最近のミニマルからは距離を置いた内容になってます。
Force Inc. からの前作『Slight of Hand』はかなりフロアを意識したようなクリック・テクノだったのだけれど、今作はレーベルを意識してかミニマル・ダブっぽい意匠を強くしています。しかし単純にレーベル色に染まったとかいうわけではなく、同時にジャズの色も非常に強く、しかも歌モノの曲が多く配されているというなかなか独特な世界を作り出しています。特に4曲でヴォーカルをとる Anais という女性のソウルフルな歌唱が白眉なのだけれど、それを包み込むような音作りもまた素晴らしい。しかも終始穏やかな世界を描きながらも緊張感が損なわれる事はなく、そのストーリー性のある流れと相まって、何かを暗示するようなラスト2曲は特に印象的です。
「終わらない物語」の「最後の日」とは?
これからも聴きこんで読み解きたい気分にさせるアルバムです。
[Tracklist]