RICARDO VILLALOBOS / DEPENDENT AND HAPPY – 4 (Perlon) 12″

RICARDO VILLALOBOS / DEPENDENT AND HAPPY - 4 (Perlon)
http://www.perlon.net/

チリ出身、現在ベルリン在住のプロデューサー Ricardo Villalobos が2012年に発表した12インチ。

昨年 Villalobos が発表したアルバム『DEPENDENT AND HAPPY』は、その内容は当然の事、14曲で5枚にもわたるアナログと、そこから11曲抜粋してミックスされた CD 、という発売形態も話題になった作品でした。
そして今作は、それらに収録されなかった未発表曲を収録したシングル。当初ベルリンにある Perlon のショップでしか取り扱っていなかったのが、限定ながら一般流通したもの。初回プレス分はあっというまに売り切れたみたいだけど、最近リプレスされたみたいで、今のうちならわりと買える(すぐ売り切れるだろうけど)。

Villalobos というと “Easy Lee” に代表されるような、細かいパーカッションと絡みつくようなベースラインによる粘着性により、なかなか沸点を迎えない中毒性の高いリズムを作る一方で、一般的な親しみやすさからは程遠いものの、通常の曲の流れからすると異物感のある要素を放り込む事によって、結果曲に引っ掛かりを与えるという、ポップながらも変態という部分が自分には印象的です。

しかし最近の Villalobos はというと、2011年に Max Loderbauer と組んで ECM の音源を再構築した『Re: ECM』に顕著に現れていたと思うんだけど、どうも実験的な要素が目立っていて、以前ほどには積極的に聴く気になれませんでした。

では昨年の『DEPENDENT AND HAPPY』はどうだったのかというと、過去の作品よりも複雑になったリズムを聴かせながらも、様々な印象的なサンプルや音色により総体としてはポップという、 Villalobos の長いキャリアの中でも代表作と呼べるような作品になっていて、2012年の年間ベスト(関連記事)でも上位に入れるくらいよく聴いた。

ということで前置きが長くなりましたが本作。アルバムの未発表曲という位置づけなので、完成度的には一段下がるのかと思ってたんだけど、なんでこれが未発表だったのか疑問になるほどの傑作。
今作に収められた2曲はアルバムの曲に比べると、比較的直球の四つ打ちのダンス・トラックになっていて、そういった意味ではあえて分類するなら、アナログの『Part 3』に近い。しかし比較的展開のあった『Part 3』に比べると、今作はよりミニマル。なのでアルバムよりも少々地味なんだけど、2曲に共通して多く使われているヴォイス・サンプルと、その後ろで立ち上っては消えていく様々な音たちは、まるで雑踏の中で目の前を流れていく景色のようであり、またそれはアルバム一枚を通して描いていた時間の流れをシングルに凝縮したようでもあり、非常に聴き応えがあり、それと同時にアルバムの番外編として納得のいくものになっている。

アルバム気に入った人は、買えるうちに買っておいたほうがいいかと。
ちなみに今作入れると『DEPENDENT AND HAPPY』はアナログ6枚で2時間半。アホですな。

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Hauschka / Salon Des Amateurs Remix EP1 (Fatcat) mp3

Hauschka / Salon Des Amateurs Remix EP1 (Fatcat)
http://www.fat-cat.co.uk/

Hauschka こと Volker Bertelmann. が2012年に出したリミックス・シングル。

エレクトロニカやポップスの要素を感じさせながらも、あくまでプリペイド・ピアノを軸とした音楽をやっている Hauschka が、リミックス・シングルを出すというだけでも意外なんですが、そのリミックスを担当したのが Max Loderbauer & Ricardo Villalobos に Michael Mayer という、モロにクラブ畑のアーティストなのはさらに意外。
ただ Michael Mayer はともかく、 Max Loderbauer & Ricardo Villalobos に関しては ECM のリミックスなんかもやってるわけで、音楽性に関しては違和感はない。

その Max Loderbauer & Ricardo Villalobos によるリミックス、どうもこの二人が組むと小難しい方向にいきがちな印象だったのでちょっと不安だったんですが、今作に関しては当たり半分外れ半分という感じ。
透明の膜を一枚隔てているかのような、小さな音で鳴る変則的なキックと、原曲のものと思われるピアノやエレクトロニクスは、一聴すると難解な印象を受けるものの、細やかな音作りながらも確かに伝わる多幸感は意外にポップで、以前 Villalobos が手がけた mirko loko のリミックス(過去記事)に通ずる心地よさがある。

一方の Michael Mayer は、かっつりとリズムを足してクラブ・トラックにした、比較的素直なリミックス。ただこちらも原曲の柔らかさというものは、そのまま残してあり、結果リスニングにも耐えうる心地よいテック・ミニマルになっていて、こちらも好リミックス。

ちなみに今だとシングル買うより、リミックス・アルバム買った方がお得です。

Salon des amateurs (Remix) - Single - HAUSCHKA

Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL) 12″

Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL)

この前紹介した RAL の2枚目。
例によって誰が手がけているかは分からないのだけれど、テクニークによると Rhadoo と Petre Inspirescu の仕事だそう。しかし『RAL1001』が Luciano の特徴が分かりやすく出ていたのに比べると、こちらはちょっと作者の色までは聴き取れず。

だがいかにも Cadenza っぽい作品が多いというのはこのレーベルの共通とするところで(そもそも Cadenza の周辺人脈が中心なんだから当たり前なんだけど)、今作も Dumitru Farcas の “Suita Din Tara Motilor” からサンプリングしたトラッドフォークっぽい音色が印象的な “Flöte” 、そしてこちらもオリエンタルな笛のサンプリングが印象的な “Clarinette” と両曲ともそれは変わらない。

でも一口に Cadenza っぽいといっても色々あるわけで、今作に関してはパーカッションがチャカポコと鳴る類のものではなく、以前のようなゆったりと風景が変容していくような感覚があるのがうれしいところ。
特にどんどん時間を引き延ばしていくかのような “Flöte” はかなり好きだ。

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Unknown Artist / Cae + Nin (RAL) 12″

Unknown Artist / Cae + Nin (RAL)

昨年のテクノって際立って新しい動きがあったという印象はなかったものの、作品自体は非常に良質なものが多く、そのせいか私もアナログを多く買った1年でした。でもそれらを全然紹介していなかったのでぼちぼち紹介していきたいと思います。
そんなもん今更紹介されても売ってねぇじゃねぇか、っていわれたらその通りなんですけどね。えぇ、すいません。

ということで、昨年私が金をつぎ込んだアナログといえば、何をおいてもこれでしょう、ということで RAL の1枚目。

多分アナログ追いかけていない人には耳慣れないレーベル名だと思うんですが、 RAL というのは Ricardo and Luciano の略で、彼らの周辺アーティストが参加したネタモノブートレーベル。と、これだけで十分マニア心をくすぐるんですが、さらにカタログ番号がそのままドイツ品質保証協会のカラーコードになっているというのもにくいところ。

そんなレーベルからの1作目である本作(Discogs によれば2008年に出たみたい)は、 Caetano Veloso の “Depois que ile passar” と Nina Simone の “Sinnerman” をネタにした作品で、クレジットはないんだけど Luciano の手によるものだそう。

今作は最初のリリースという事で気合が入ったのか、このレーベルのリリースの中でもかなり上位に入る傑作なんだけど、中でも傑作なのがA面の “Cae” 。それはもちろんネタの Caetano Veloso の涼やかな歌声に因るところも大きいのだけれど、絶妙なタメの利いたキックと軽やかに鳴るパーカッションが、歌に寄り添いながらもきちんとダンス・トラックである事を主張していて、ネタモノ云々の面白さを抜きにしても素晴らしい曲。

一方裏の “Nin” は展開の多いリズムが Nina Simone のソウルフルな歌を盛り立てていて、これまた傑作なんだけど、乾いた音のスネアやベースラインなんかが、 Luciano が2009年に出したアルバム『TRIBUTE TO THE SUN』の “CELESTIAL” まんまなのが面白い。
ここで作ったリズムが気に入って、アルバムで再利用したってことなんでしょうか・・・。

ちなみに上では今作は Luciano 作という事で書いているけれども、 youtube に上がっている Jack Ridella という人の “Depois Que O Ile Passar” のリミックスが今作に収録されている曲と全く一緒なのよね。かといって Jack Ridella という人の事を調べてみても RA のページにイタリア出身であることが書いてあるの位しか見つからなくて、なんかよく分からんねぇっす。

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Mike Shannon / Under the Radar (CYNOSURE) 2LP

Mike Shannon / Under the Radar (CYNOSURE)
http://www.cynosure-recordings.com/

毎度毎度遅れたタイミングで12インチを紹介する当ブログなんですが(だって聴くのとリッピングが追いつかないんだもん)、今回も今年の3月に出たシングル。
Mike Shannon が主催するレーベル Cynosure の40番を記念するシングルで、見開きジャケットの10インチ2枚組み。
さらに記念盤という事で参加しているリミキサーも豪華で、 Ricardo Villalobos に Deadbeat 、さらに最近 Mountain People の名義で活動している Rozzo という布陣。

しかし内容に関してはまぁぼちぼちといった出来で、まず Mike Shannon によるオリジナルがイマイチで、この曲に参加した Fadila という女性のソウルフルなヴォーカルしか耳に残らない。また Villalobos のリミックスは、ぬめった空気と乾いたリズムという、ちょっと懐かしい感じの Villalobos らしさが感じられるリミックスながら、まぁそれだけという感じ。

一方硬質なダブテックにした Deadbeat のリミックスと、幽玄なテック・ハウスにした Rozzo のリミックスは素晴らしいので、これだったら1枚目いらなかったんじゃないのかなぁ、とか思わなくもないが、それじゃぁ記念としての豪華さがうすれるという事なのだろうか。切ないな。

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mirko loko / SEVENTYNINE remixes (Cadenza) 12″

mirko loko / SEVENTYNINE remixes (Cadenza)
http://www.cadenzarecords.com/

元 Lazy Fat People の片割れ Mirko Loko が今年の頭の方に出したシングルで、タイトル通り昨年出したアルバム『SEVENTYNINE』のリミックス盤。
そしてリミキサーが Carl Craig と Villalobos というかなり豪華な組み合わせなんですが、今作は両者とも期待を裏切らない素晴らしい出来でして、 Carl Craig の “Love Harmonic” のリミックスは軽快なパーカッションと扇情的なシンセでグイグイ盛り上げるテック・ミニマル、 Villalobos の “tahktok” のリミックスは原曲の子供の声のサンプルを軸にした、まるで鼻先をくすぐられているかのような心地よさのある柔らかなアンビエントで、双方とも Cadenza らしさから大きく外れることなく、それでもきちんと独自性を出している。

これは Cadenza レーベルの作品の中でも会心の出来なのではなかろうか。

あとデジタルだと Luciano のリミックスもあるんだけど、これはそのためにわざわざ買うようなもんじゃないです。

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Ricardo Villalobos & Jay Haze / Mellow Dee (contexterrior) mp3

Ricardo Villalobos & Jay Haze / Mellow Dee (contexterrior)
http://www.contexterrior.com/

すいません、ほったらかしだったシングル。

Villalobos と Jay Haze といいますと、放っておくとおかしな方向にばかりいく実験君な側面が強いお方達ですが、2人で組むとそれがさらに強くなる、というのが今まで印象だったのですが、この3枚目となる共作シングルは、こちらがびっくりしてしまうくらい直球のダンス・トラック。

まず “Mellow Dee” は重苦しいリズムの上に、何とも怪しいブラスが乗る、非常に Villalobos らしいトラックではあるものの、最近の彼らしい軽やかなジャズドラムのサンプルがアクセントになって、重くなりすぎる事を回避しているし、いつもの彼よりも格段に太いリズムがかっこよく(ここら辺が Jay Haze?)、漆黒のフロアに映えそうなミニマル・テクノになっている。

もう一方の “Sunday Prayer” の方も、乾いたドラムの音とサックスを使っていて、要素自体は似通っているものの、トラックの雰囲気はまるで違っていて、こちらは少し早めのリズムの上に高揚感のあるサックスのメロディが鳴る、この二人にしてはアッパーな曲。中盤以降、そこはかとなくデトロイトっぽさを感じさせるところなんか、『Alcachofa』より前の Villalobos を思い起こさせる感じもあり、こちらも非常に良曲。

もう1曲のリミックスもいい出来で、やっぱりこういうダンス・トラック聴くと、やっぱりテクノっていいなぁと思います(最近離れ気味なもので)。たまにでいいから、この2人にはこういうの出してほしいなぁ。

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CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD / RECOMPOSED New Mixes By Ricardo Villalobos & Carl Craig (Universal) 12″

CARL CRAIG & MORITZ VON OSWALD / RECOMPOSED New Mixes By Ricardo Villalobos & Carl Craig (Universal)

昨年出た Moritz Von Oswald と Carl Craig がカラヤンの曲を再構築した盤のリミックス盤。

Moritz と Carl Craig と Villalobos といえば、数年前の Rhythm & Sound のリミックスで、まぁ一応絡んでるといえなくもないんだけど、わりと今回のは、それぞれあのリミックス盤での自分の仕事のアップデートといった感じ。

まぁ私は例によってオリジナルの方は放置してほとんど聴いたない状態なので、原曲とは比べることは出来ないんだけど、 Carl Craig は今回もオリジナルをダブ・テックに料理しているんだけど、音使いが独特なのと、デトロイトっぽいコズミックな感覚がはっていて、非常にカッコよい。

しかし今回軍配を上げたいのは Villalobos で、初期のねっちこいリズムと、最近のドラム使いを融合させた今作のリミックスは、ダンサブルという点では Carl Craig に譲るものの、リズムのしなりが非常に素晴らしく、まだまだ Villalobos ののりしろを感じさせてくれる。

このリミックス盤は続かんのかのぉ~。

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SIS / TROMPETA (SEI ES DRUM) 12″

SIS / TROMPETA (SEI ES DRUM)

ついでに Villalobos 絡みでもう1枚。 Villalobos のレーベル Sei es drum の3枚目。多分 Sei es drum というレーベルからは、 Villalobos の作品しか出ないと思っていた人は多いだろうから(私も含め)、この SIS のリリースはけっこう意外だったんじゃないでしょうか。

っつてもこの SIS さん、パーカッシブ・ミニマル人気の中で『Nesrib』というシングルのヒットで注目された人なので、音楽的には全く違和感なく、ここでもバルカンっぽいブラスを乗っけたミニマルという、ものすごく今っぽい曲。上モノが大ネタな分、リズムをシンプルにしているので、素直に盛り上がれる楽しい曲ではあるんだけど、家で聴きたい感じの曲ではないかな。

裏の “CLARINETE” もアラビックな管楽器が乗った、これまた今風な曲なんだけど、パーカッシブなリズムが結構たっていて、個人的にはこちらの方が好きです。

それにしても最近のこういうミニマル聴くと、実は Basement Jaxx の『Crazy Itch Radio』(過去記事)ってものすごく早かったんじゃないか、と思うような思わないような・・・。

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RICARDO VILLALOBOS / VASCO EP PART 2 (PERLON) 12″

RICARDO VILLALOBOS / VASCO EP PART 2 (PERLON)
http://www.perlon.net/

Bruno Pronsato (過去記事)、 Villalobos (過去記事)ときたんで、その流れでもう一枚書こうかと思ったんだけど、少し脱線して12インチを。
『VASCO』のCD盤の少し前に出た、アナログ・カット第二段。

この盤は裏も表も “AMAZONRDUM” なんですが、表の方はCDと一緒なので、それほど書くことないのですが、ゆったりとしたベースと、細かく刻むリズムが粘着質なグルーヴを作り出している、ものすごく Villalobos らしい曲。

裏は Baby Ford によるリミックス。個人的にはミニマルに流れたベテランの中では、最も好きな人なんですが、コレはイマイチですね。原曲のリズムをもっと細かくして、上モノの浮遊感を増したようなリミックスなんだけど、総体としてはあんまり原曲と変わってないのよね。もしかしたら細部まで聴きこめば違うのかもしれないけど。

ということで、3つの『VASCO』の中では、これはあんまり買わなくてもいい盤ですかね。『VASCO EP PART 1』(過去記事)は聴いた方がいいと思うけど。

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