Ricky Hil / SYLDD (Self Released) mp3

Ricky Hil / SYLDD
http://rickyhil.com/

Tommy Hilfiger の息子だという Ricky Hil が2013年2月にフリーで発表したデビュー・アルバム。
なんでも本作は元々 Warner Bros. から出る予定だったものの、発売日の延期などでなかなかリリースされない事に業を煮やし、無料公開に踏み切ったものだそう(ちなみにタイトルは「Support Your Local Drug Dealer」の略)。
なのでフリーとはいえ Leona LewisThe Weeknd が参加していたりと、なかなか豪華。

ただ音の方はというと、もの悲しいアコースティック・ギターの調べで始まる冒頭の “Slickville” からしてあまり作りこまれた感じはない。さらにビートこそヒップホップのモノながら、そこにブルージーなギターが絡み、その上で Ricky Hil がしゃがれ声でラップや歌を聴かせるという、要はラッパーが作るロック作としてはありがちな作り。

さらに Ricky Hil の歌が明確なメロディを歌い上げるというよりは、鼻歌のようにふわふわと気だるく声を出すものなので、どうしても雰囲気モノという印象が強くなってしまうんだけど、このたそがれた空気感というのは悪くない。
なかでも柔らかな演奏やメロディと銃声のサンプリングの対比が印象的な “The Right Time” いい。

The Weeknd と Leona Lewis が参加した部分だけ音楽的完成度が一気に上がって感じるのはご愛嬌。

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L!STED / The Crystal Ship (Self Released) mp3

L!STED / The Crystal Ship

L.A のプロデューサー L!STED が今年の5月に発表したビートテープ。

タイトルが『The Crystal Ship』で、1曲目の頭に Doors がサンプリングされているので、てっきりネタ感の強い作品なのかと思ったら、特にそんなこともなく、揺らめくような上モノが心地よいインスト・ヒップホップ。
中でも幾重にも重なるシンセが印象的な “I Remember Nothing” 、揺れるベースと哀愁漂う上モノが絡む “F.Zero” 、オリエンタルな “CH 86” など、比較的ビートの弱い曲が美しいので、いっそのことアンビエントのアルバムとか聴いてみたい。

あと最後はなぜか Weeknd のリミックス。

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Cody Simpson / Angels & Gentlemen (Self Released) mp3

Cody Simpson / Angels & Gentlemen
http://www.codysimpson.com/

最近フリーの音源ばかり紹介している当ブログなんですが、果たしてここを見てくださっている方にたいして、需要があるもんなんですかねぇ。まぁ需要とか考えたらアイドルと日本のヒップホップの記事ばかり書かなきゃならなくなるんだけど・・・。

オーストラリア出身のシンガーソングライター Cody Simpson が6月に発売されるアルバムまでのつなぎとして発表したらしいミックステープ。

ジャケットを見るといかにも若い、っていう感じの Cody くん、なんでもまだ15歳だそうだが、歌声自体は声変わりもしているせいかそれほど幼さを感じさせず、また歌唱力もしっかりしているので年齢というのは良くも悪くも気にならない。

ただそのルックス同様、歌の方も甘いものなので、そこら辺好き嫌いが分かれそうだけど、それほどしつこくないので比較的聴きやすいのではなかろうか。
まぁそれは言い換えれば引っ掛かりが少ないともいえるんだけど、そこはゆっくり成長していってもらえればいいかな。

ちなみに今作はカバー曲がほとんどで、 Chris Brown 、 Rihanna 、 Drake 、 The Weeknd 、 Jack Johnson という面々の曲が選ばれているので、聴き比べてみるのも面白いかも。

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The Weeknd / Balloons of Haus (Self Released) mp3

The Weeknd / Balloons of Haus (Self Released)
http://www.facebook.com/chiduly

なんか今日は自分の中であまりピンとこない盤ばかりを紹介した感じなんですが(いつもそうか・・・)、今日紹介した中で一番イマイチだったのがコレ。
タイトルから分かるように The Weeknd の曲を Chi Duly というアメリカのプロデューサーがリミックスしたもの。

今まで紹介してきたように Weeknd のリミックスってそれなりには聴いてきているんだけど(紹介してないのでも色々聴いてるし)、この人の場合全編四つ打ち、っていうのはまぁいいとしても、原曲の繊細さを無視したかのような大味さがとにかく目立っていて雰囲気台無しだし、かといって四つ打ちのリズムもダンサブル、っていうほどグルーヴがあるわけでもなく、正直今まで聴いた Weeknd のリミックスの中では一番出来が悪いかなぁ。

まぁ元が暗いの好きな性格なんで、派手なの好きな人が聴けば感じ方も変わるんだろうけど、とりあえず私はいいかな。

DropxLife., Clams Casino, Omari Shakir., The Weeknd

また Weeknd 関連のものをまとめていくつか。

DropxLife. / Furthur.
『DropxLife. / Furthur.』
The Weeknd って元々 The Noise というプロデュース・ユニットで活動していたらしい、っていうのは以前書いたと思うんですが(過去記事)、なもんだから私はてっきり自身のトラックも全部自分で作っているものと思い込んでいました。
でも実際はそんなことなかったみたいで、何人かのプロデューサが参加していたみたいですね。
っつうことで『Echoes Of Silence』収録の “Initiation” のプロデューサーだという DropxLife. のミックステープ。
この DropxLife. というアーティスト、 Weeknd 周辺の人みたいなんだけど、その正体は今のところ謎みたい。
さらにこの作品のリリースの仕方もよく分からなくて、昨年末に3曲入りで出たものに曲足して6曲入りで今年出したと思ったら、次は9曲入りで出て、この度出た10曲入りのものが完全版らしい。
“Initiation” ってどんどんヴォーカルが変調していくけっこう実験的な曲だったので、今作も実験的なのかと思ったらそんなこともなく、新味というのは薄い。
でもヒップホップとダブステップとアブストラクトが溶け合ったようなビートと、徐々に沈みこむような音世界は心地よく、 Weeknd に通ずる雰囲気にはやはり抗えない。あと Weeknd のような高い緊張感がないのと、なんだかんだで1曲に1つは耳に引っかかりやすい要素が入っているので、インストでありながらも Weeknd よりある意味聴きやすいかも。
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DROPXLIFE / ALLXLEGENDS
『DROPXLIFE / ALLXLEGENDS』
んでこちらは DropxLife が昨年秋に出したミックステープ。
全体の雰囲気としては『Furthur.』とそれほどかわらないものの、ビートはこちらの方がシンプルで、こちらの方が幾分ポップ。なのでこちらから聴いた方が入りやすいかも(まぁ暗いのには変わりないんだけど)。
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Clams Casino / Instrumental Mixtape
『Clams Casino / Instrumental Mixtape』
こちらは『Echoes Of Silence』収録の “The Fall” をプロデュースした Clams Casino が、今まで他のアーティストに提供したトラックを中心にまとめたミックステープ。
今作に関しては Weeknd 関係なしに非常に評価の高い作品なんだけど、太いベースラインと重たいドラム、粒子の細かい幻想的な上モノの組み合わせは確かに気持ちがよい。あからさまにキャッチーな要素がなくてもきちんとポップなのも素晴らしい。
まぁ時折、これってポストロックに接近してたころの anticon の焼き直しじゃねぇの、って思う部分がなくもないんだけど、気持ちがいいのに変わりはないので気にするのはやめておきましょう。
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Omari Shakir. / Different.OMARI SHAKIR / NONCHALANT
『Omari Shakir. / Different.』『OMARI SHAKIR / NONCHALANT』
最近知ったんだけど Weeknd 周辺には彼を含む XO Gang というクルーが存在するらしく、そこに参加しているラッパーさんが出しているのが上2曲(もう1曲 “Like A Book” 曲もあるんだけどジャケットないので割愛)。
三味線(?)をサンプリングした “Different.” (DropxLife プロデュース)はかっこいいし、Omari Shakir の低い声でのラップも魅力的なんだけど、ちょっとこれだけだとラッパーとしての個性までは分からないですかね。
あと両曲とも iTunes に入れるとアルバム名のところに『TIL WE OVERDOSE』って出るので、もうすぐアルバムが出るのかも。
Different. ダウンロード
NONCHALANT ダウンロード

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The Weeknd / 『Thursday』『Echoes Of Silence』

The Weeknd / Thursday
http://the-weeknd.com/

個人的に2011年を代表するアーティストは誰か、って問われたら彼以外ありえないですね。っていうことで The Weeknd が『House of Balloons』(過去記事)以降に出した2つのミックステープをば。

まずは夏に出た『Thursday』。
こちら作品本体が出る前にリークされていた曲を聴く限りでは、『House of Balloons』より曲調に幅のある作品なのかなと思っていたし、実際レゲエを取り入れたトラックがかなり意外だった “Life Of The Party” みたいなもあったりするんだけど、他の曲に関してはゆったりとしたバラードが多く、彼の作り出すビートを楽しみにしていた向きからすると、ちょっと肩透かしな内容だろう。
しかしメロディから感情が零れ落ちるような Weeknd の歌唱と、深い余韻を残す隙間を生かしたトラックはやはり素晴らしく、3部作の中ではコレが一番好き。

The Weeknd / Echoes Of Silence

んでこちらは2011年12月21日にリリースされた、最新作にして3部作の最後を飾る作品。

まぁ今作に関しては発表されてまだそれほど日がたっていないので、まだあまり聴き込めていないのだけれど、前作がおとなしかった反動か、比較的トラックが特徴的な曲が多い印象。事前にリークされて話題になったけど、ヴォーカルがどんどん変調していく “Initiation” とか面白いです。

ちなみにこの3部作はボートラなどを足して今年パッケージ化されるそう。

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The Weeknd / House of Balloons

The Weeknd / House of Balloons
http://the-weeknd.com/

こちらの記事で James Blake についてグダグダと書いたんですが、誤解を恐れずに書けば、私が James Blake に期待していたのは今作のような作品ですかね。

っていうことで、今年の3月にフリーで配信された、カナダの Abel Tesfaye の一人ユニットだという The Weeknd のファースト・アルバム。

そもそも私が James Blake に期待していた作品というのは、簡単に書くとトラックの立った歌モノなんだけど、 The Weeknd の今作は正にそういう作品。

あえてジャンル分けすると R&B の範疇に入るモノなんだけど、ヒップホップはもちろんの事、エレクトロニカやダブステップなど様々な要素が溶け合ったトラックは、平熱感覚というよりは、むしろ徐々に沈みこんでいくような静かな暗さに覆われていて、それがなんとも刺激的でありながらも特徴的。

一方ヴォーカルの方はというと、その透き通った高音だけで十分魅力的ながら、そこに時折少しざらついた低めの声を交えながら歌われるメロディはかなりポップかつ甘いもので、また同時に歌いすぎではないかと思えるほど感情的に歌い上げる場面を目立ち、これだけだとちょっとしつこいのではないかと思えるくらい。

しかしそのヴォーカルがトラックと見事な対比を表す事で、必要以上に暗くなりすぎないメリハリのあるモノになっているし、そのヴォーカルにしても、所謂喜怒哀楽のような分かりやすい感情を伝えるようなものではないのに、それでいて人間的な熱や情感に溢れているという、トラック共々不思議な余韻を残すもので、気がつくとまた聴いているという中毒性がある。

今更無料の音源なのにここまでの完成度のものが、なんて事を書く気はないけど、それにしてもほとんど名前も知られていないような人がここまでの作品を出したというのは衝撃的だし、それを抜きにしても素晴らしい作品。
色んな意味で今年を代表する作品なのは間違いない。

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