francis harris / pharoah in the morning remixes (Scissor & Thread) 12″

francis harris / pharoah in the morning remixes (Scissor & Thread)
https://soundcloud.com/scissorandthread

ブルックリン出身のプロデューサー francis harris が、同じくブルックリンのレーベル Scissor & Thread から2011年末に出したリミックス・シングル。
francis harris という人は Adultnapper という名義の方が知られているようだけれど、出しているレーベルを見るとわりとハードめな音を作る人っぽい。

まずは最近すっかりソロでの活動が増えてきて、ほとんど開店休業中といった感じの NSI のリミックス。この人たちは自身の曲ではやたらと実験的なものを出す事が多い人たちですが、このリミックスでは浮遊感のあるシンセと、地鳴りのようなベースラインでしっかりとグルーヴは作りながらも、徐々に空間をゆがめていくような感覚があり、非常にかっこいい。是非また二人で活動再開してほしいものです。

一方の Black Light Smoke という人は初めて見る名前ながら、ゆったりとしたリズムの上で鳴る空間的なシンセと女声のサンプルで展開を作っている “Over The Pyramid Remix” と、軽快なテックハウスながら、太いベースと不協和音で絶妙な気持ち悪さを出していて面白い “Under The Pyramid Remix” と、両方とも好リミックス。

ちなみに今年出たアルバムも良かったんだけど、まだ感想書けるほど回数聴けてない・・・。

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nsi. / sync (non standard productions) CD

nsi. / sync (non standard productions)
http://www.nonstandardinstitute.com/

最近では Moritz Von Oswald Trio での活動がメインになっている印象もある Max Loderbauer と、 Villalobos と組んだりもしている Tobias Freund のユニット、 nsi. が2010年末に発表した2枚目のアルバム。
前作はミカ様の Sähkö からでしたが、今作は自身のレーベルから。

その前作はピアノの小曲を集めた音響作品でしたが、「ドラム・マシンとシーケンサのための24曲」との副題がつけられた今作は、その副題どおりアナログ機材を使用して作られており、その使用機材を記号化して並べただけのタイトルからして意味性を排している印象がある。
また長くても4分未満、短いと30秒ほどの楽曲は、ドラム・マシンを中心とした目立ったメロディもない簡素なもので、なんともとりとめのないもの。

しかしどの楽曲もシンプルながらもアイデアに満ちたもので、変則的なリズムを刻むものからアンビエントっぽいもの、またなんとも形容しづらいものまで(笑)、似たような曲が一つもなく非常に面白いし、アナログの音の丸みのせいか意外に聴きやすいのも良い。

ただ実験的なだけではない、非常に良い作品です。

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V.A. / Cadenza CONTEMPORARY 01 & CLASSICS (CADENZA) 2CD


http://www.cadenzarecords.com/

Luciano が主催するレーベル、 Cadenza の初となるコンピレーションと、レーベル音源を使ったミックスの2枚組み。2007年リリース。

最近のパーカッシブ・ミニマル(ちょっと落ち着いてきたかな?)とは似て非なる、このレーベルの音楽的な部分と、ゆっくりと景色が流れていくような感覚というものが、こうやってレーベル・コンピとミックスCDという形になるとよく分かって、しかもそれがとんでもなく素晴らしいという、まことにもってコンピのお手本のような傑作。

なんだけれども、あえて不満を書けば選曲の部分で、コンピのほうはカタログ番号1から6まで、ミックスの方は16から22番くらいのものが使われていて、個人的に好きな8、9、11あたりがすっぽりと抜け落ちているんですよね。
まぁその辺は次のコンピに入るんだろうから、いいんだけどさ。

あとコンピの3曲目は “Extension” じゃなくて “Oregon” ですね。

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Los Updates / First if You Please The Remix Part 1 (Cadenza) 12″

First if You Please The Remix Part 1
http://www.cadenzarecords.com/

Cadenza の26番は、初登場となる Los Updates の、もう間もなく出るアルバム『First If You Please』からのリミックス・カット。

この Los Updates というユニットは、 Jorge Gonzalez と Loreto Otero の二人組みで、なんでも Jorge Gonzalez は80年代から活躍していた人で、チリでは相当有名な人みたい(多分以前 Dinky とシングル出してた人だよね?)。

なんでそんな有名人が Cadenza なんてレーベルから作品出すのか全然分かりませんが、人選の方はかなり豪華。

まずはオリジナルの “4 Wheel Drive” 。今年の頭に出たEPは、試聴した限りだとラテンなエレ・ポップといった感じだったけど、 nsi の Tobias の手によるこの曲は、屈強なミニマル・ファンク。リズムの方は四つ打ちではないんだけど、グルーヴは非常に太く、しかしその上でおっさんが陽気に歌い倒しているのがユーモラスで、このギャップがなかなか面白い。

そしてリミックスは Dandy Jack 。彼は現在のチリアン・ミニマルの中でも最重要人物といっていい人だけど、他に比べるとどうも地味な印象で、 Cadenza にも多分コレが初登場。
そんな彼は “Inving You Here” という曲をリミックス。これはオリジナルを聴いてないんでなんともいないところもあるのですが、いつもの彼らしいラテンっぽさは控えめに、同じグルーヴで延々引っ張る曲。やっぱり地味だ。いや、大好きですけれども。

もう1曲のリミックスはおなじみ Villalobos 。これは Villalobos が昨年出した『Fabric 36』(過去記事)に収録されていたので、聴いたことある人も多いはず。
そのミックスCDでは、オリジナルからサンプリングされたヴォーカルばかりが耳に残って、トラックの方は特に面白いと思わなかったんだけど、改めて聴くとパーカッシブなビートを軸に、細かい音の抜き差しで、13分近い尺を使って盛り上がりを作っていて、こうやってフル・バージョンで聴くと非常に良いトラック。

まぁコレはリミックス・シングルなんで、この面白さがどれだけアルバムの方にもあるのかは分からないけれど、なんせ Cadenza なんで大丈夫でしょう。

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nsi. / non standard institute (Sahko) CD

non standard institute
http://www.sahkorecordings.com/

こちらは nsi. が2007年に出したファースト・アルバム。アーティストが nsi. で、レーベルが Sähkö という組み合わせでは、どう考えたって実験的な作品だろうという感じですが、案の定実験的。

深~い音響世界の中で、メロディともつかないような断片的なフレーズを奏でる max loderbauer のピアノに、 tobias freund によるエレクトロニクスが絡む、ドローン/ミニマル・ミュージックといった趣の作品。

正直この手の作品はほとんど聴かないので、専門的に語る言葉は持っていないんだけど、空間と間を生かすことで、静けさを演出した音響構築は非常に秀逸。さらに高い緊張感の中にも、過度に実験性を感じさせない為、思いのほか聴きやすく、元々ピアノの音色が好きなせいもあってか、何度も聴ける作品になっている。これまた傑作です。

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nsi. / reference (non standard productions) 12″

reference

いよいよ今週末に迫った Moritz Von Oswald の来日公演なんですが、今回トリオの一員として一緒に来日するのが、 Vladislav Delay と、もう一人が Max Loderbauer 。

彼は一般的には元 Sun Electric のメンバーとして知られているようですが、最近の彼の活動として知られるのが、 Tobias Freund とのユニットである nsi. 。

Tobias Freund の方はソロで Logistic や wagon repair からリリースしていたり、 Ricardo Villalobos や Dandy Jack とユニットを組んでいたりと、なかなか活発に動いているのですが、このユニットでは3年間にアルバム1枚に、シングルを3枚出しているのみ。しかもシングル1枚はリミックス盤なので、その寡作振りが窺い知れようかというものですが、その代わりどれもハズレはない。

この自身のレーベルからのシングルも、徹底したミニマリズムに貫かれたアブストラクトなトラックばかりながら、何か一つ異物感を持ち込むことで、きちんと引っかかりのある印象的なトラックにしている。

重層的なキックが脈打つ “ring” 、幻惑的な “dual” 、タイトルとは裏腹にどんどん地に沈み込んでいくかのような “bird” 、二つのビートが溶け合うかのような “tear” 、そのどれもが傑作。

ということで、今回の来日では是非 nsi. でのライヴも見たかったところなんだけど、それは次の機会にとっておきましょう(多分一生来ないだろうけど)。

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V.A. / shut up and dance! updated (Ostgut Ton)CD

shut up and dance! updated
http://www.ostgut.de/ton/

昨日紹介した Ostgut Ton なんですけれども、今までこのレーベルの作品は『Serenity』買うまで1枚も持っていないと思っていたら、実は2枚ほど持っている事が判明しまして。1枚は以前紹介した cassy のミックスCD『Panoramabar 01』、そしてもう1枚が本作。

staatsballett berlin (ベルリン国立バレエ団)とのコラボレーションによるモダンアートの為の音楽らしいんだけど、その情報から想像されるようなクラシック系のものでは全くなく、流石ベルリンというべきか、全てミニマル系。しかも面子が Cadenza 等からリリースする nsi. 、 現在ミニマルの極北の最も近くにいると思われる sleeparchive 、 そしてご存知 Ame に Luciano 、さらには Luke Slater の変名である The 7Tth Plain と、私みたいな人間にとっては超豪華。

でもですね、このアルバムに関しては何はなくとも Ame の “Fiori” ですね。このアルバムから唯一アナログ・カットされた曲でもあるわけですが、大きな螺旋階段を上るように、ゆっくりゆっくりと厚みを増していく壮大な曲で、コレはもう文句なしの名曲。正直 Ame って “Rej” 以降どれもパッとしない印象だったんだけど、そんな印象も吹っ飛びました。
あとの曲は比較的抑え目の曲が多いんだけど、変則的なリズムが印象的な nsi. 、ふか~いダブ・ミニマルな sleeparchive 、いつも以上に流麗なラテン・ミニマルを聴かせる Luciano 、アンビエントっぽい The 7th Plain と良曲揃い。極の寄せ集め的印象の強いミニマル系のコンピの中でも、しっかりとコンセプトが音からも感じられる傑作ではないかと。

しかしこんな音楽をバックに、どんな踊りを見せてくれるんですかねぇ。この舞台見てみたいわぁ~。(と思ったら、舞台見た人のレポ発見。うらやましい・・)

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amazon.co.jp

SUN ELECTRIC / TONNAS REMIXES (shitkatapult)12″

TONNAS REMIXES
http://www.shitkatapult.com/

SUN ELECTRIC っていうと、個人的には nsi. の人がいたユニット、というくらいの知識しかないんだけど、未だに評価の高い方たちのようで、少し前に未発表曲集が出てたりなんかするんですが、これはそこからのリミックス・カット。

まずは相変わらず働き者の Villalobos 。昔に比べると、最近のこの人の仕事はイマイチなものが少なくないように思えるんだけど、今作のリミックスは最近の中でもベストじゃないかしら。 Villalobos らしいパーカッシブなビートを軸としながらも、『fabric』のときのような直線的なものではなく、たゆたうようなリズムで、そこに次第に様々な音が加わっていく事によって、気が付けば景色がまるで変わっている。こういう世界が徐々に変容していくような感覚って久しぶりじゃないですかね。非常にイマジネイティブで素敵過ぎます。

そしてもう一組はベテラン Thomas Fehlmann と、 meteosound を主宰する Daniel Meteo によるもの。んで、もうこの二人が組んだからには、いうまでもなくダブダブな音なんですけれども、おそらくオリジナルのものと思われるメロディと、それを包み込むように鳴らされる音響空間は、もうあまりにも美し過ぎて、そしてあまりにも気持ちよすぎる。そしてこちらも Villalobos とはまた違った形で想像力を刺激する音に仕上がっていて、負けず劣らず素晴らしい。
久しぶりに曲単位でじっくり聴きたくなるような、良いシングルではないかと。

Sun Electric - Toninas Remixes - EP