最近疲れ気味。
Iso XL / Mia Foni Enas Stratos
ギリシャのラッパー Iso XL が2009年に出したフリーのアルバム。
彼の MySpace を見るとジャンルのところが「Death Metal / Hardcore / Hip Hop」となっているんだけど、そう書くのも伊達ではなく、全編ディストーション・ギターとストリングスが大仰に盛り上げる曲は、かなりメタル度が高い。
それでいてリズムはヒップホップ、ヴォーカルはラップとなると、一昔前のミクスチャー系に近いものになりそうな気もするんだけど、ファンクの要素を排することでメタルの要素をより浮き上がらせていて、この辺のバランス感覚が非常にヨーロッパ的に思えて面白い。
Sleeparchive / Ronan Point (Tresor) 12″
しばらくリリースのなかった Sleeparchive こと Roger Semsroth さんの久しぶりのシングル。
彼はリミックスやコンピなんかでは色々なレーベルから出しているものの、単独作には関しては自身のレーベル以外から出したことがないんだけど、それがこの復帰作というタイミングで、しかもかつてはハード・ミニマルの代名詞であった Tresor からとなれば期待するなという方が無理な話という感じですが、蓋を開けてみれば良くも悪くもいつもの Sleeparchive 。
荒々しいベースラインにパルス音のような上モノがのるアシッド・ミニマルは確かに相変わらずかっこいいし、ミニマリズムというのがそれほど急激な進化というモノが望めないというのも分かるんだけど、これはちょっと肩透かしですかね。
彼のトラックには他の人にはなかなか真似できない肉体性があるだけに頑張ってほしいんですけどね。
James Blake / $ EP
http://www.myspace.com/jamesblakeproduction
さすがに古めの音盤紹介が続きすぎているので、いい加減あたらしめのも取り上げましょうか。
ということで、みんな大好き James Blake が5月にアナログで出したブート・シングル。
アルバムはよく分からないとか書いておきながらシングル買うんかい、という突込みが入りそうですが、アナログでこういう怪しいブツが出るとついつい手が伸びてしまうのですよ・・・。
James Blake といいます、以前からメジャーな曲のブート・リミックスを作っているという話を聞きますが、今作は Lil Wayne と Destiny’s Child をリミックスしたもの。
ダブステップのリミックスって、歌ものにウォブル・ベース加えただけみたいなものが、ネットにはそれこそものすごい数転がっていますが、今作はそんなものではもちろんなく、良くも悪くも James Blake らしいくぐもった音色のブレイクビーツ。
しかしための利いたビートと飄々と鳴る上モノが Lil Wayne のラップと意外にあっている “A Mill” 、ラテンパーカッションを軸に疾走感のあるビートと、逆に低速回転させたようなヴォーカルの対比が面白い “Bills Bills Bills” と、アルバムよりもずっとトラックが面白いので楽しめる。
まぁそれでもこれがきっかけに James Blake の魅力に目覚める、なんてことにはならなかったんだけど、それでもこの路線の音ならもっと聴いてみたい。
Cosmin TRG / Tower Block (Hemlock) 12″
http://www.hemlockrecordings.co.uk/
もうすぐアルバムが出るらしいルーマニア出身の TRG 改め Cosmin TRG が昨年出したシングル。
彼は TRG 名義のときはブレイクビーツを前面に出したダブステップを作ることが多かったように思うんだけど、 Cosmin TRG 名義に改めてからは四つ打ち感の強いトラックを作ることが多い。
それがいき過ぎて単なるハウスになってしまうこともしばしばなのだが、今作は四つ打ちとブレイクビーツがせめぎあったような変則的なビートを聴かせていて非常に面白い。
そのビートに関してもグルーヴをぎりぎりのところでつなぎとめておきながら、徐々にはめていくタイプのもので気持ちがいいし、軽快さを失わないのもいい。
ちなみに上に書いたデビューアルバムは Modeselektor の 50 Weapons から出るそうで、こちらも期待せずにはいられない。
T++ / Wireless (Honest Jons) 2LP
こちらは現在 Monolake のメンバーでもある T++ こと Torsten Profrock さんが2010年に出したダブルパック。
なんでも今作は東アフリカの SSEKINOMU なるアーティストの音源をサンプリングしたものなんだそうで、つんのめったブレイクビーツにパーカッション、ヴォイスサンプルなどによって形作られるグルーヴは、非常にファンキーながらもダブステップともドラムンベースとも似て非なるもの。
しかしそれでいてベース・ミュージックらいい猥雑さも備えていて、音楽性と機能性を高い次元で融合させている素晴らしい作品。
まぁこの後に出た Shackleton のリミックスしたやつ聴くと意外に引き出し少ない人なのかな、という感じもするんだけど、それでも今作に関しては文句なしかと。傑作です。
Badawi / El Topo (index) 12″
こちらは Raz Mesinai と Dave Q が立ち上げたレーベルからの最初のシングル(2010年作)。
この Badawi というのは現代音楽の方面で活動している Raz Mesinai がダブをやるときの名義だそうなんだけど、以前聴いた shackleton をリミックスしたものは(過去記事)、ドロドロに溶かしすぎたせいでほとんどアンビエントやドローンに近くなったようなミニマル・ダブで非常に独特だったんだけど、それに比べると今作はわりと普通にダブステップ。
しかしベースの音はほどほどに、迫力のあるストリングスを中心に疾走感のあるドラムを絡ませることによってグルーブを作っていて、地味ながらもその音作りは面白いし、音の出し引きという点からするとこれもダブの形なのかなと思わされる。
もう1曲の shackleton のリミックスは、可もなく不可もなくといった感じのいつもの shackleton 。
CLOAKS / VERSUS GRAIN (3by3) CD
わりと紹介したのが正統派なダブステップばかりだったので変り種も紹介しましょうか。まぁ相変わらず紹介しそびれてたちょっと前の盤なんだけど・・・
この Cloaks というアーティストに関してはほとんど情報がないのでどんな出自の人なのか分からないのだけれど、この人が2009年に発表したデビュー・アルバムはなかなかのインパクト。
そのスタイルを大別すればダブステップにはなるんだろうけれど、それを構成する音に関してはノイズまみれのメタリックなものがほとんどで、質感としてはむしろインダストリアル。
それでいてそのインパクトに頼ることなく、ベースを中心にきちんとしたグルーヴを作り出していているし(まぁ踊る感じではないけど)、洗練に向かうことが多いダブステップの中にあって、ここまでざらついた音を聴かせてくれるというのも小気味いい。
V.I.V.E.K / FEEL IT (DEEP MEDI) 12″
ダブステップの音盤紹介するとか書いておきながら、更新自体滞っていたので、まぁ暑さの中ぐだぐだいきます。
っつうことで Digital Mystikz の Mala が主催する Deep Medi から V.I.V.E.K さんの昨年出たダブルパック。
どことなくジャケットがデトロイト風である今作なんですが、中身のほうは硬くて重いベースとドラムで紡がれた、まさにダブステップといった感じのもの。
しかし曲によってパーカッションによって軽妙さを、また女性ヴォーカルによって艶やかさなどを加えていて、この手のものにありがちな全曲金太郎飴的な印象になるのを見事に回避している。
また “STARTEGY” のみ他とは質感の違うテクノ的なトラックながら、こちらも付け焼刃的なものを感じさせないすばらしい出来。
彼は今年に入って再び Deep Medi からダブルパックを出していますが(未聴)、どうせならアルバムで聴いてみたいと思わせるアーティストです。