DFRNT / The Big Freeze (On The Edge) mp3

DFRNT / The Big Freeze (On The Edge)
http://dfrnt.co.uk/

DFRNT が2012年に出したシングルは、ロンドンのレーベル On the Edge から。

On the Edge って DFRNT がファースト・アルバム(関連記事)を出したレーベルでもあるわけですが、だからなのか1曲目の “Monday Morning” は、そのファースト・アルバムの頃を思わせる、ゆったりとしたベースとシンセが気持ちいい浮遊感のある曲。ただシンセの鋭角的な音はやはり最近の DFRNT のもので、それゆえ空間の隙間も多く、静謐な感じもあり、それまた心地よい。中盤辺りから入ってくる声ネタもいいアクセントになっている。

次の “The Big Freeze” はリズムこそドラムンベースっぽいもの音、全体の質感としてはアンビエントの要素が強く、世界観としては “Monday Morning” とそれほど変わらない。逆にいえばリズムが多少変わろうが、 DFRNT の世界観は変わらないという事でもあり興味深いし、『Actaeon EP』(関連記事)のときもそうだったけど、私は DFRNT のこの手の曲が一番好き。

3曲目の “Piston” は、四つ打ちのキックの上に歪んだ電子音が乗る、少し不穏ささえ感じる DFRNT には珍しいタイプの始まりながら、透明感のあるシンセが入ってきた瞬間、 DFRNT 以外の何者でもない曲になるのが面白い。
また Indigo による “Monday Morning” のリミックスも、原曲の雰囲気そのままに、金属的なドラムやパルス音を足していて気持ちいい。

今の DFRNT の好調振りがよく分かるシングルかと。

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DFRNT / EMOTIONAL RESPONSE (NU DIRECTIONS) CD

DFRNT / EMOTIONAL RESPONSE (NU DIRECTIONS)
https://soundcloud.com/nudirections

DFRNT こと Alex Cowles が2011年に出したセカンド・アルバム。

冒頭の “True” の鋭角的なシンセの音からして、柔らかさが目立っていた前作『METAFICTION』(関連記事)とは違う印象を受けるんだけど、リズム自体もダブステップの定型をギリギリ保ちながらも前のめりのものが多く、テクノ的な音作りのせいもあって、聴いた印象はほとんどテック・ハウス。

ただダブステップらしいベースの打ち出しの強さや、スネアのアタック感の強さはそのままなので、有無をいわせずこちらの体を揺らせるようなグルーヴがあり、その境界線にあるような音作りはやはり面白い。
また前作よりも使っている音色やリズムに幅がある分、作品の流れが感じられるのも良いし、彼の作品の中でもダンサブルな面が強く出ているというのも興味深い。

あと前作同様リミックスが収録されているんだけど、ドラムンベースに仕上げた ASC 以外、あまり代わり映えしてないのが残念(どれも良く出来てはいるんだけど)。

試聴

Dfrnt / Fading (Echodub) CD

Dfrnt / Fading (Echodub)
http://echodub.co.uk/

スコットランド出身のプロデューサー DFRNT こと Alex Cowles が2012年にリリースした3枚目のアルバム。
彼は EchodubCut という二つのネット・レーベルを主催しているのだけれど、今作は前者から(同レーベルから CD が出るのは初)。

DFRNT は2009年のファースト・アルバム『METAFICTION』(関連記事)の時点でテクノ的なダブステップの中でも、かなり踏み込んだ形でアンビエントの要素を取り入れていて、その浮遊感の強いダブステップは異彩を放っていましたが、そこから様々な変化や洗練を重ねた結果、今作ではダブステップ的なリズムが聴ける曲は半分ほどとなり、のこりは四つ打ちのダブ・テクノになっている。

しかしそれにより DFRNT の個性が薄れたのかといえばそんな事はなく、研ぎ澄まされたシンセの音を使い作り上げられた拡がりのある音響空間に、キックよりもベースを前面に出したリズムが溶け込む様は非常に気持ちよく、またアンビエントとダンスの境界を揺らめくような感覚も面白い。

ちなみにこのアルバムは作品のインフォが出てから、実際リリースされるまでかなり時間がかかったんだけど、 Indiegogo っていうクラウド・ファンディングで資金提供を募ったから、っていうのは今調べて初めて知った。実際の出資者の反応がどうだったのかは分からないけれど、その期待に十分足る傑作ではないかと。

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Dublicator / Spectrum (Entropy) CD

Dublicator / Spectrum (Entropy)
http://www.entropy-records.com/

明日を越えればきつかった年度末がやっと終わりますねぇ。いや、本当に終わるんだろうか・・・。

ということで今日も簡単に。

昨日に続きフランスのレーベル Entropy Records から2011年にからでた Dublicator のアルバム。

彼はハンガリー出身で、2006年から音楽制作を始めたらしいんだけど、名義が非常に多く、またそれに伴って作品数も多い(bandcamp でも色々公開してる)。

んで今作は、 Entropy Records からというのを抜きにしても、名義を見ればわかるようにミニマル・ダブ。しっかりと四つ打ちのリズムの入ったトラックは、ミニマル・ダブの定型をそれほど外れるものではないのだけれど、音の粒立ちがよく非常に気持ちがいい。

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grad_u / sequence (Entropy) CD

grad_u / sequence (Entropy)
http://www.entropy-records.com/

眠いので簡単に。

リトアニア出身のアーティスト grad_u が、フランスのレーベル Entropy Records から2011年に発表したアルバム。

Entropy Records って少し前に Mr. Cloudy のアルバムを紹介しましたが(関連記事)、ダブ・テクノ系のレーベルの中でもリリース数が非常多く、中には変り種もあったり寸ですが、今作もリズムがほとんどないアンビエント作で、そういった意味では異色。

ただミニマル・ダブでアンビエントというと、ただただ気持ちがいいだけなのかというとそんな事はなく、ノイズやドローンの要素を取りいえれた、比較的緊張感の高い曲が多く面白い。

まぁそれでもノンビートで80分はさすがに長いんだけど・・・。

V.A. / Ferro #00 (FERRO) Tape

V.A. / Ferro #00 (FERRO)
http://ferrotapes.bandcamp.com/

最近では音楽をデータで手に入れることが一般化した反面、物としての所有感の高いアナログの人気が復活しつつある、なんて話をよく聞きます。しかしその一方で、アナログでもデータでも、ましてや CD でもなく、カセットテープの人気というのもアンダーグラウンドを中心に未だ根強く、ベルリンのレーベル Ferro も、リリースはカセットテープのみというレーベル。
Ferro は今作が初リリースという事で、レーベルに関する情報がほとんどないのだけれど、ダブ・テクノをリリースするレーベルみたい。

ちなみにカセットテープって、自分の中ではハードコアやブラックメタル、実験的なエレクトロニカやノイズ方面の人たちに支持されてるフォーマット、という印象があるんですが、テクノでカセット・リリースって非常に珍しい気がするんですがどうなんでしょう。カセットテープだとアナログみたいに低音の伸びがいいとかあるんでしょうか。

まぁいい、話がそれた。

Basic Channel がミニマル・テクノとダブを融合させて以降、様々なレーベルやアーティストがその方向性を受け継いでおり、今でも Silent SeasonEntropy RecordsGhost Sounds などが精力的にリリースを重ねていますが、そんな中にあって、この Ferro というレーベルが一際個性的、とまではいかないものの、なかなかに面白い音を出している。

今作は6組のアーティストが参加したコンピレーションになっていて、ほとんどがリリース経験のあまりないアーティスト。そして音の方はというと、当然のようにミニマル・ダブながら、所謂ダブ的なディレイを効かせた、音の輪郭をぼやけさせたような音響は控えめで、むしろテック・ハウス的な軽快さや、透明感のある音が目立っている。その為この手の音を形容するときによく使われる、「深い」という部分では若干物足りないものの、すっきりとした音作りは非常に聴きやすい。

また曲毎に聴いても、軽快なキックとハンドクラップに、低音のノイズが交わり混沌を生み出している Mount Wishmore Unlimited の “S.B.I.” 、形態としてはいかにもなミニマルダブながら、ひたすら磨かれたような丸く柔らかな音作りが非常に気持ちがいい Zzzzra の “Anandamide” 、 Akufen を思わせるようなシャッフルするリズムとダビーな上モノとの絡みが面白い Basicnoise の “Procyon” など非常に充実している。

正直こんなリリース形態で一体いつまで続くのやら、って感じがしなくもないんだけど、頑張ってリリース重ねて個性を磨いていってほしいレーベルです。

あともうすぐ出る次作は、よりモクモクっつうかダブダブで、これまた良さそう。

Cristian Vogel / Enter The Tub (Shitkatapult) mp3

Cristian Vogel / Enter The Tub (Shitkatapult)
http://www.shitkatapult.com/

90年代初頭から活動しているドイツのプロデューサー Cristian Vorgel が2012年に発表したシングル。

Cristian Vorgel っていいますと、90年代に実験的なテクノを精力的にリリースを重ねていた人なんですが、2000年代入るとリリースペースがとたんに落ちて、最近では Snork Enterprises なんていう意外なレーベルからシングル出した、っていうくらいしか印象に残っていません。
なので Super_Collider で共に活動していた Jamie Lidell がヴォーカリストとしてある一定の評価を得ているのに比べると、ずいぶん地味になっちまったなぁという感じなんですが、 Shitkatapult という、これまた Cristian Vogel とはあまり結びつかなそうなレーベルから本作はなかなかに面白い。

1曲目の “Enter The Tub” がいきなりダブステップなんでかなり意外なんですが、音自体はそれほど太くないものの、引きずるようなベースラインの存在感が大きく、また彼らしい鋭角的なノイズが散りばめられてはいるんだけど、全体としてはどことなくアシッドっぽいという、なんとも独特な曲。
続く “Lucky Connor” もダブステップを基調としているものの、 Cristian Vorgel らしいノイズが目立つ分、従来の印象に近くはあるんだけど、それでも彼がダブステップのリズムに手を出したというのはかなり意外。

そして残りの2曲 “Deconstructions” と “Voidster” は攻撃的なダブ・テクノでこれまた方向性としては意外。まぁ両方ともダブつながり、と考えればそれほど以外でもないのかもしれないけど、そもそも Cristian Vogel にダブのイメージがなかったので、この方向性は興味深いし、付け焼刃ではない完成度と個性を持っているのも良い。

この後に出たアルバムは買い逃したまんまなんだけど、これは聴いてみたほうが良さそうだ。

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私立恵比寿中学 / 梅 (DefSTAR) CD

私立恵比寿中学 / 梅 (DefSTAR)
http://official.stardust.co.jp/ebichu/index.html

アイドルで恵比寿っていいますと、私なんかはまず恵比寿マスカッツが浮かんできて、 Rio 可愛いよなぁ、いやいや希崎ジェシカも好きだぜ、とか思ってしまうんですが、最近ではこのグループになるんでしょうか。

ということで、グループ名どおり10代半ばの女の子9人による私立恵比寿中学の、メジャーからは3枚目となるシングル。

アイドル、と一言で書いても、カリスマ性や神秘性などで孤高の立ち位置を築く人もいれば(最近はこの手の人は少ないのかな)、親しみやすさを前面に出してファンとの距離をぐっと近づける人たちまで(こちらの代表格はやっぱり「会いに行けるアイドル」AKB48 ですかね)、色んな人たちがいるわけですが、そこで親しみやすさを選択した場合、その手段として笑いの要素入れるというのは、今や一般的な一つの手段なんでしょう。

んで、今作の表題曲である “梅” は、高速キックの上で勇壮なシンセが鳴るという扇情的なトラックの上に、躁鬱状態とでもいえばいいのか、感情が乱高下しているようなヴォーカルが乗っていて、その有様はほとんど音楽である事を端から放棄しているようにも思えて、私には曲というよりは寸劇に近いものに感じる。

なので普段テクノとか聴いてる耳からすると相当にきついんだけど(だったらジャニーズもそうだろう、と言われたらそうですが、まぁ慣れなんだろうなぁ)、何回か聴くうちに耳から離れなくなるのも事実で、ある種の炎上マーケティングに近い面白さがあるのも否定できない。
まぁこれで私立恵比寿中学のファンになったかというと、絶対にそんな事はないんだけど、少なくともこのグループの名前を忘れる事は当分なさそうだ。

カップリングの “頑張ってる途中” はちょっと切なげな応援歌、もう1曲の “パクチー” は意味のない歌詞を元気に歌うライブ映えしそうな曲で、両曲とも悪くない。

ちなみに今作を聴いたときに、なんかももクロみてぇだなぁ、と思ったんだけど、彼女らはももクロの妹分グループなんだってね。しかも表題曲の作詞作曲は普段ももクロに曲提供している人で、最近名前をよく目にするヒャダインこと前山田健一なんだとか。ちょっとこれ聴く限りだと、ヒャダインという人がなんでこんな評価されてるのか分からねぇなぁ・・・。

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Roger Robinson / Contemplate Mixtape (Self Released) mp3

Roger Robinson / Contemplate Mixtape
http://www.rogerrobinsononline.com/

King Midas Sound のメンバーである Roger Robinson が、2013年3月に発表したミックステープ。
King Midas Sound ってリミックス・アルバムを持っているだけなのでそれほど詳しくはなくて、The Bug こと Kevin Martin のプロジェクト、って位の印象しかないのだけれど、この Roger Robinson もスポークンワード出身で、それなりにキャリアがある人みたい。

そんなヴォーカリストというよりは詩人といった感じの Roger Robinson の久しぶりのソロ作となる本作は、Ryuichi Sakamoto and Alva Noto や William Bassinki などの既発曲に、自身の声をのせたもの(ちなみに同じく King Midas Sound のメンバーである Kiki Hitomi も同様のミックステープを昨年発表してるけど、なにか申し合わせたのかしら)。

今作は Ryuichi Sakamoto and Alva Noto の曲が2曲使われているものの、それ以外は違うアーティストによるもの。しかしどの曲でも共通しているのはピアノ等の鍵盤楽器が基調になっているということで、そこに微細なエレクトロニクスやノイズが絡んで描き出す世界は非常に静謐なもの。

そしてそこに乗る Roger Robinson のヴォーカルは、お世辞にも巧いといえるようなものではないのだけれど、彼の揺らめくようなか細い声は、その世界観を壊すことなく寄り添っていて、非常に心地よい。
また世界観自体はどの曲も変わらないものの、ほとんど囁くようなヴォーカルの “Iano” や “The Garden of Brokeness” 以外にも、はっきりとした歌に近い “Replica” や “Ode To Gill” みたいな曲もあり、作品全体として強弱のある流れになっているので飽きずに聴ける。

4月に EP 、8月にアルバムを出すようなので、そちらの方も楽しみだ。

The Sass / Love, Fear & Fantasies (Self Released) mp3

The Sass / Love, Fear & Fantasies

Los Angeles のシンガー The Sass が2012年11月に発表したミックステープ。
この人に関してはほとんど情報がなくてよく分からないんだけど、28歳という年齢を考えると、何かしらキャリアのある人なのかもしれない。とはいえこの名義では今作がデビュー作。

揺らめくような電子音に導かれ、 The Sass の柔らかな歌声が入ってくる “Intro feat. XO” で始まる本作は、有体に書いてしまえば今どきのアンビエント R&B 。しかし透明感というものが前面に出たものが多いこの手の音にあって、 Saas は非常に温かみのある声を持っていて、それゆえにトラックの持つ浮遊感とは裏腹に、全体としては旧来の R&B やソウルに近いものになっていて面白い。
また歌い手としてあまり技巧的なタイプではないのもあって、最近よく聞く「インディーR&B」という言葉がしっくりくるものになっている。

正直 Sass が魅力的な歌い手か、と問われると微妙ではあるんだけど、作品自体はそんな彼の歌というものを理解した作りになっている良作です。

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