The Green Kingdom / Dustloops : Memory Fragments (SEM) mp3

The Green Kingdom / Dustloops : Memory Fragments (SEM)
http://semlabel.com/

明けましておめでとうございます。
昨年はなんのかんのとあったんですが、無事新年を迎える事ができましたので、ここらで他の方がやっているように年間ベストでも発表したいところなんですが、どうもベストっていうほど強烈に印象に残っている作品が少ないので、この連休中に次点候補を中心に振り返ってみたいと思います(多分いつもどおり続かないと思うけど・・・)。

ということで、 Green Kingdom さんのソロ・プロジェクト The Green Kingdom が2013年2月に発表した8枚目のアルバム。

昨年はテクノのインダストリアル化からさらに進んで、ノイズやドローンの要素が強い、分かりやすく書くとテクノとエレクトロニカの境目がないような作品を好んで聴いていた気がするんですが、今作もそんな作品。

幾重にも重なったノイズと、それを包み込むような柔らかなギターが鳴る中、中盤からゆったりとしたキックと美しいベースが入ってくる “dust_rds” 、空間的な音響とノイズが印象的なミニマル・ダブの “green being” 、徐々にこちらの記憶を呼び覚ますかのような郷愁を感じさせる “rustloop” と、リズムが立ち上っては消えていくような曲が多い。

そしてそのリズムやノイズで緊張感を作り出している場面と、それ以外のノンビートなどで緩やかに聴かせる場面の押し引きが絶妙で、まるで大きな波に身を任せているかのような心地良さがある。

正直初めて聴いたときの印象はそれほどでもなかったんだけど、気がつけば1年を通してよく聴いた作品でした。48分強という収録時間も今の私にはちょうど良い。

“The Green Kingdom / Dustloops : Memory Fragments (SEM) mp3” の続きを読む

Gerry Read / Saucepan Jams Part 1 (Self Released) CD

Gerry Read / Saucepan Jams Part 1
http://www.ramprecordings.com/

イギリスのプロデューサー Gerry Read が2013年3月に発表した2枚目のアルバム。

Gerry Read が昨年末に発表した『Jummy』は、ジャズ的な音作りとベース・ミュージックからの影響が強いリズムが素晴らしく、2012年のテクノを代表する作品だったと思うんだけど(年間ベストにも入れた)、日本ではあまり話題にならず寂しい限り。

そしてあまり間を空けずに発表された本作は、B級感のすごいアメコミジャケットからして怪しさ満点ですが、レーベルのサイトから CDR で限定100枚のみ発表という、少々変則的なもの。

英語の記事しか見つからなかったので本作がどういった意図で発表されたのかは分からないのだけれど、 Gerry Read の普段の作風とは違い、サンプリング主体と思われるディスコ・ミュージック。
そのため最初はその違いに戸惑いさえ覚えてしまうのだが、お世辞にもいい音とはいえないこもり気味な音を、無理やり出音上げたみたいな、乱暴ともいえる音作りは面白いし、全編ファンキーなグルーヴがあってかっこいい。

音の感じから考えても、発売形態から考えても、おそらくそれほど時間をかけずに作ったのだろうけれど、それゆえ彼のセンスの良さが表れた盤かと。

grad_u / sequence (Entropy) CD

grad_u / sequence (Entropy)
http://www.entropy-records.com/

眠いので簡単に。

リトアニア出身のアーティスト grad_u が、フランスのレーベル Entropy Records から2011年に発表したアルバム。

Entropy Records って少し前に Mr. Cloudy のアルバムを紹介しましたが(関連記事)、ダブ・テクノ系のレーベルの中でもリリース数が非常多く、中には変り種もあったり寸ですが、今作もリズムがほとんどないアンビエント作で、そういった意味では異色。

ただミニマル・ダブでアンビエントというと、ただただ気持ちがいいだけなのかというとそんな事はなく、ノイズやドローンの要素を取りいえれた、比較的緊張感の高い曲が多く面白い。

まぁそれでもノンビートで80分はさすがに長いんだけど・・・。

Gatekeeper / Atmosphere Processor (Apple Pips) mp3

Gatekeeper / Atmosphere Processor (Apple Pips)
https://www.facebook.com/Apple.Pips.Recordings

Appleblim が主宰するブリストルのレーベル Apple Pips から、2012年に発表された Gatekeeper のシングル。
Appleblim といいますと、 Shackleton と共に Skull Disco を運営していた人物であり、 Gatekeeper も Skull Disco からのリリースがあることから Shackleton 周辺っていう括りで語られる事が多い人。

ということは今作も Shackleton みたいなドロドロ系なのかというとむしろ逆で、 “Atmosphere Processor” なんかは前のめりに変則的なリズムを刻むドラムにパーカッション、そこに空間を切り裂くような鋭いシンセの音が入ってくるという、テクノ的な疾走感をもった曲。この手のやつってベースがおざなりになって軽くなる事が多いんですが、これはきちんとタメの効いた重たいベースで非常にかっこいい。
それに比べるともう1曲の “Let Us In” はダブステップの基本に近い感じではあるんだけど、リズムは十分変則的だし、ダブ的な音響が気持ちよかったりと、これまた良い。

この人は作品の数がイマイチ少ないんだけど、それでもこれだけの作品を出されれば文句もない。

Atmosphere Processor / Let Us In - Single - Gatekeeper

“Gatekeeper / Atmosphere Processor (Apple Pips) mp3” の続きを読む

Guy Gerber / The Mirror Game (Visionquest) mp3

Guy Gerber / The Mirror Game (Visionquest)
http://www.vquest.tv/

音盤購入の記事見てもらえば分かるように、今年はけっこうテクノを買っているんですが、そのわりにブログで紹介していない気がするので、ポツポツなんか書いてみます。とはいっても例によって何ヶ月も前のなんだけど。

っつうことで今年の春に出た、イスラエルのプロデューサー Guy Gerber のシングル。

今作は冒頭から入ってくる、柔らかなギターを思わせる音色で奏でられる、たゆたうような上モノにまずもっていかれるんですが、そこに絡むしなやかなリズム、幽玄なヴォイス・サンプル、切ないシンセのメロディと、全てが素晴らしい。それでいてあからさまな盛り上がりや展開を聴かせることなく、ゆらゆらと流れるように曲が進行していくのもいいし、7分という時間を一切弛緩させることないこの曲は、名曲といって差し支えないんじゃないかしら。

2曲目の “One Day In May” は、表題曲のような印象的な上モノがない分地味なんだけど、これまたしなやかなリズムが気持ちのいい良曲。

ちなみにデジタルだと表題曲のビートレス・バージョンが入っているんだけど、これまた切なさ倍増で良い。傑作です。

The Mirror Game - Single - Guy Gerber

“Guy Gerber / The Mirror Game (Visionquest) mp3” の続きを読む

GReeeeN / いままでのA面、B面ですと!? (NAYUTAWAVE) 2CD

GReeeeN / いままでのA面、B面ですと!? (NAYUTAWAVE)
http://www.greeeen.net/

以前石野卓球が田中フミヤを評した言葉に「日本でアンダーグラウンドなのはフミヤだけ。あとはマイナー。」っていうのがありまして。
あと他に THA BLUE HERB に “アンダーグラウンドVSアマチュア” なんて曲もありましたが、要はアンダーグラウンドというのは人気不人気とかいうものではなく、如何に自分の流儀でやるか、っていう話なんだと理解しています。

そういった意味でいうと、一時期の GReeeeN というのは日本で一番有名なアンダーグラウンド・アーティストなのではないか、と考えていた時期がありまして。
それは顔を一切メディアに出さないという姿勢だったり、人を食ったようなタイトルだったりという、あまり音楽とは関係のない部分が理由ではあったのだけれど、それでも他の売れているバンドとは一線を画す活動の仕方はなかなか興味深いものでした。

だから2009年のバンドの人気が頂点のときに、このベスト盤の発表と前後して彼らの解散の噂が出たときには、その勝ち逃げの仕方に興奮すら覚えたものなのだけれど、結局のところ噂は噂であって、しばらくの活動休止期間を経て、現在ではいつの間にか地味に復活して普通の人気バンドに収まった感がある。

なんともつまらん話である。

いままでのA面、B面ですと!? - GReeeeN

“GReeeeN / いままでのA面、B面ですと!? (NAYUTAWAVE) 2CD” の続きを読む

G. Rina / MASHED PIECES #2 (Melody & Riddim) CD

G. Rina / MASHED PIECES #2 (Melody & Riddim)
http://www.goodingsrina.com/

シンガー、と呼んでよいのか一瞬考えてしまうほど多方面で魅力をみせている G.Rina が2010年秋に発表した4枚目のアルバム。

彼女がダブステップに興味があるというのは以前からなんとなくは知っていたし、 Helixir のビートに彼女のヴォーカルをのせた “Let You Drive” などは好きで何度も聴いていたんだけど、まさかアルバム1枚丸々ダブステップやファンキーなどの現行ビートを飲み込んだものになるとはまさか思っていなくて、しかもそれがどれも素晴らしいものなのでちょっと驚いている。

今作には Eccy や Tofubeats 、 Skyfish など様々な日本のプロデューサーが参加しているんだけど、海外のフロア志向の強いトラックに比べると、彼らの折衷的なトラックは間口が広く、それゆえに彼女のポップなメロディとも親和性が高く、ポップスとしてもビート物としても非常に刺激的なものになっている。
中でもチップチューン的な上モノとダブステップの凶暴なサブベースが交差する Tofubeats 作の “Did It Again” は面白いし、アンビエントっぽいダブステップとゆったりとした G.Rina のヴォーカルが抜群の相性を聴かせる (dub)y 作(初めて聞く名前だ)の “First Taste” の気持ち良さは格別。

今まで G.Rina を聴いてこなかったのを後悔するくらいの傑作。これからはもっと積極的に聴いていこう。

MASHED PIECES #2 - グディングス・リナ

“G. Rina / MASHED PIECES #2 (Melody & Riddim) CD” の続きを読む

Gui Boratto / Take My Breath Away (KOMPAKT) 2LP+CD

Gui Boratto / Take My Breath Away (KOMPAKT)
http://www.kompakt.fm/

一時期に比べるとめっきり数が減った感じのするシューゲイザー系のミニマルなんですが、この頃はまだけっこう色んな人が出していましたね、っていうことで、ブラジル出身の gui boratto が2009年に出したセカンド・アルバム。

彼のファースト・アルバム(過去記事)はジャケット同様カラフルかつポップな内容でしたが、今作は基本的な部分では変わらないものの、メロディの多彩さは若干抑え目に、代わりにリズムを太く、そしてシューゲイザー的な上モノの歪みを強める事によって、よりフロアユースになった印象。

しかしだからといって作品が一本調子になっているとかいうことはなく、憂いのある雰囲気、という部分では共通しながらも、きちんと多彩なメロディを聴かせる中盤などはさすがと思わせるものだし、中でもいかにも朝焼けにピッタリといった感じの “No Turning Back” はかなり泣ける。

まぁ他の人の文章を読むと、前作からの延長線上過ぎる部分が引っかかっている人が多いようだけれど、そもそもこの手のシューゲイザー・ミニマルをあまり聴かない私はその点に関しては気になりませんでした。
よって前作よりも好きな作品です。

Take My Breath Away - Gui Boratto

“Gui Boratto / Take My Breath Away (KOMPAKT) 2LP+CD” の続きを読む

GLAY / LOVE IS BEAUTIFUL (EMI) CD+DVD

GLAY / LOVE IS BEAUTIFUL (EMI)
http://www.glay.co.jp/

2007年リリースの GLAY の9枚目のアルバム。

この人たちは『pure soul』『HEAVY GAUGE』という傑作をモノにして以降、長い間迷走しているな期間が続いていたけれど、今作は久し振りに、全てを吹っ切ったかのように GLAY らしい曲が並んでいる傑作になっている。

まぁその分意外性というものに乏しいのは事実なんだけど、それゆえにシングルの時点ではやや突飛に思えた EXILE との共作である “SCREAM” が存在感を放っていて、全体を引きしめたものにしている。

後はこのまま以前のようなペースで活動できていればよかったんだろうけれど、事務所とのゴタゴタが原因なのかまた停滞してしまった印象で、つい先日出た10枚目のアルバムが、今作同様快作ならば良いのだけれど、まだ聴いてないのでそこは何とも書けないっす(中途半端ですいません)。

“GLAY / LOVE IS BEAUTIFUL (EMI) CD+DVD” の続きを読む

Guy Gerber / My Invisible Romance (Supplement Facts) mp3

Guy Gerber / My Invisible Romance (Supplement Facts)
http://www.supplementfacts-records.com/

イスラエル出身のプロデューサー Guy Gerber が昨年末に発表した EP。
とはいってもアナログだと4曲入りダブル・パック、デジタルでは8曲入り70分超という、容量的にはアルバムといっても全く遜色ない代物。

この Guy Gerber というアーティストに関してはここ数年名前自体はよく目にするものの、音源に関しては2007年のアルバム『Late Bloomers』を持っているくらいで(はい、つまりまだ聴いてません)、他にはほとんど聴いたことがないので以前のスタイルとの比較などは出来ないのだが(元々プログレ/トランス畑の人みたいだけど)、今作での音は簡単に書けば Cadenza 以降の有機的な感触を取り入れたミニマル・ハウス。

しかし今出回っているそれらの音のほとんどが、ある種の型にはまっている退屈さを感じさせるのとは違って、柔らかなキックとさまざまな生音で描かれる今作の音は、揺らめきながら立ち上る風景が徐々に変化していくような、こちらの想像力を常に刺激するようなもの。それでいてダンス・ミュージックとしてのグルーヴも申し分なく、その音楽的な完成度には圧倒される。

まぁあえて難癖つけるなら、なんでデジタルの方が曲数多いんだよ、ってとこですかね。これなら片面1曲4枚組みでも買いますよ。

My