REBOOT / Deep V (Deep Vibes) File

REBOOT / Deep V (Deep Vibes)
https://www.facebook.com/DeepVibesRecordings

Reboot こと Frank Heinrich が2014年2月に発表した2枚目のアルバム。
前作は Luciano の Cadenza からでしたが、今作は Sascha Dive 主催の Deep Vibes Recordings から。

2010年に発表された前作『Shunyata』は、躍動感のある曲や、それなりの重さを持ったダンサブルなアルバムだったという印象だったんだけど、今作は全体的に音が軽め。ならそこで軽めの音でも聴かせるような工夫がなされていれば良かったんだけど、今作は音の軽さに伴ってグルーヴも希薄になっているので、ただのチャカポコしたミニマル・ハウスになってしまっている。

6曲入りで70分という長尺曲ばかりの作品なので、ミックスされてなんぼ、って事なのかもしれないが、単体では退屈な作品と書かざるを得ない。

まぁ RA で「1.5」を叩き出すほどの酷い作品とも思わないけど(笑)。


Regis / Turin Versions (Blackest Ever Black) 12″

Regis / Turin Versions (Blackest Ever Black)
http://blackesteverblack.blogspot.jp/

Regis こと Karl O’Connor が2013年に出したシングル。
今作をリリースしている Blackest Ever Black って、よく分からないカセットなんかも限定で出してたりしますが、今作もアナログ限定300枚という代物。

曲の方はというと2012年に同レーベルから発表した『In A Syrian Tongue』(関連記事)の別バージョン。
オリジナルは重厚なリズムの、いかにもハード・ミニマルといった感じでしたが、こちらはベースを中心に音が削られているため、非常に隙間のある音作りになっている。しかしドラムの音自体が太いためスカスカな印象は全くないし、左右にふれるドラムが作り出す縦ノリのグルーヴには、オリジナルとは違った躍らせる力があり面白い。

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Roger Robinson / Contemplate Mixtape (Self Released) mp3

Roger Robinson / Contemplate Mixtape
http://www.rogerrobinsononline.com/

King Midas Sound のメンバーである Roger Robinson が、2013年3月に発表したミックステープ。
King Midas Sound ってリミックス・アルバムを持っているだけなのでそれほど詳しくはなくて、The Bug こと Kevin Martin のプロジェクト、って位の印象しかないのだけれど、この Roger Robinson もスポークンワード出身で、それなりにキャリアがある人みたい。

そんなヴォーカリストというよりは詩人といった感じの Roger Robinson の久しぶりのソロ作となる本作は、Ryuichi Sakamoto and Alva Noto や William Bassinki などの既発曲に、自身の声をのせたもの(ちなみに同じく King Midas Sound のメンバーである Kiki Hitomi も同様のミックステープを昨年発表してるけど、なにか申し合わせたのかしら)。

今作は Ryuichi Sakamoto and Alva Noto の曲が2曲使われているものの、それ以外は違うアーティストによるもの。しかしどの曲でも共通しているのはピアノ等の鍵盤楽器が基調になっているということで、そこに微細なエレクトロニクスやノイズが絡んで描き出す世界は非常に静謐なもの。

そしてそこに乗る Roger Robinson のヴォーカルは、お世辞にも巧いといえるようなものではないのだけれど、彼の揺らめくようなか細い声は、その世界観を壊すことなく寄り添っていて、非常に心地よい。
また世界観自体はどの曲も変わらないものの、ほとんど囁くようなヴォーカルの “Iano” や “The Garden of Brokeness” 以外にも、はっきりとした歌に近い “Replica” や “Ode To Gill” みたいな曲もあり、作品全体として強弱のある流れになっているので飽きずに聴ける。

4月に EP 、8月にアルバムを出すようなので、そちらの方も楽しみだ。

Ruddyp x Bear//Face / Ruddyp x Bear​/​/​Face Split (Self Released) mp3

Ruddyp x Bear//Face / Ruddyp x Bear​/​/​Face Split

アメリカの Ruddyp と、イギリスの Bear//Face という、二人のビートメイカーによるタイトルどおりのスプリット盤。
とはいっても各1曲ずつしか収録されておらず、さらに両曲とも A$AP Rocky のリミックス。

まず Bear//Face による “Long.Live.A$AP [Bear//Face Bootleg Edit]” 。 Bear//Face という人はベルファスト出身の19歳。今作では細かい粒子の靄がかかったような音作りと、原曲でのコーラスを活かした幻想的なリミックスに仕上げながらも、底から突き上げるようなベースと変質的に鳴らされるハイハットで高揚感も生んでいて素晴らしい。

それに比べると Ruddyp による “PMW (All I Really Need) [Ruddyp Bootleg Edit]” は原曲との違いがあまりなくてイマイチかしら。音作りを変えたりシンセを加える事で、原曲の印象をほとんど変えずに軽くしている、という点では面白いんだけど。

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RICARDO VILLALOBOS / DEPENDENT AND HAPPY – 4 (Perlon) 12″

RICARDO VILLALOBOS / DEPENDENT AND HAPPY - 4 (Perlon)
http://www.perlon.net/

チリ出身、現在ベルリン在住のプロデューサー Ricardo Villalobos が2012年に発表した12インチ。

昨年 Villalobos が発表したアルバム『DEPENDENT AND HAPPY』は、その内容は当然の事、14曲で5枚にもわたるアナログと、そこから11曲抜粋してミックスされた CD 、という発売形態も話題になった作品でした。
そして今作は、それらに収録されなかった未発表曲を収録したシングル。当初ベルリンにある Perlon のショップでしか取り扱っていなかったのが、限定ながら一般流通したもの。初回プレス分はあっというまに売り切れたみたいだけど、最近リプレスされたみたいで、今のうちならわりと買える(すぐ売り切れるだろうけど)。

Villalobos というと “Easy Lee” に代表されるような、細かいパーカッションと絡みつくようなベースラインによる粘着性により、なかなか沸点を迎えない中毒性の高いリズムを作る一方で、一般的な親しみやすさからは程遠いものの、通常の曲の流れからすると異物感のある要素を放り込む事によって、結果曲に引っ掛かりを与えるという、ポップながらも変態という部分が自分には印象的です。

しかし最近の Villalobos はというと、2011年に Max Loderbauer と組んで ECM の音源を再構築した『Re: ECM』に顕著に現れていたと思うんだけど、どうも実験的な要素が目立っていて、以前ほどには積極的に聴く気になれませんでした。

では昨年の『DEPENDENT AND HAPPY』はどうだったのかというと、過去の作品よりも複雑になったリズムを聴かせながらも、様々な印象的なサンプルや音色により総体としてはポップという、 Villalobos の長いキャリアの中でも代表作と呼べるような作品になっていて、2012年の年間ベスト(関連記事)でも上位に入れるくらいよく聴いた。

ということで前置きが長くなりましたが本作。アルバムの未発表曲という位置づけなので、完成度的には一段下がるのかと思ってたんだけど、なんでこれが未発表だったのか疑問になるほどの傑作。
今作に収められた2曲はアルバムの曲に比べると、比較的直球の四つ打ちのダンス・トラックになっていて、そういった意味ではあえて分類するなら、アナログの『Part 3』に近い。しかし比較的展開のあった『Part 3』に比べると、今作はよりミニマル。なのでアルバムよりも少々地味なんだけど、2曲に共通して多く使われているヴォイス・サンプルと、その後ろで立ち上っては消えていく様々な音たちは、まるで雑踏の中で目の前を流れていく景色のようであり、またそれはアルバム一枚を通して描いていた時間の流れをシングルに凝縮したようでもあり、非常に聴き応えがあり、それと同時にアルバムの番外編として納得のいくものになっている。

アルバム気に入った人は、買えるうちに買っておいたほうがいいかと。
ちなみに今作入れると『DEPENDENT AND HAPPY』はアナログ6枚で2時間半。アホですな。

試聴

Ricky Hil / SYLDD (Self Released) mp3

Ricky Hil / SYLDD
http://rickyhil.com/

Tommy Hilfiger の息子だという Ricky Hil が2013年2月にフリーで発表したデビュー・アルバム。
なんでも本作は元々 Warner Bros. から出る予定だったものの、発売日の延期などでなかなかリリースされない事に業を煮やし、無料公開に踏み切ったものだそう(ちなみにタイトルは「Support Your Local Drug Dealer」の略)。
なのでフリーとはいえ Leona LewisThe Weeknd が参加していたりと、なかなか豪華。

ただ音の方はというと、もの悲しいアコースティック・ギターの調べで始まる冒頭の “Slickville” からしてあまり作りこまれた感じはない。さらにビートこそヒップホップのモノながら、そこにブルージーなギターが絡み、その上で Ricky Hil がしゃがれ声でラップや歌を聴かせるという、要はラッパーが作るロック作としてはありがちな作り。

さらに Ricky Hil の歌が明確なメロディを歌い上げるというよりは、鼻歌のようにふわふわと気だるく声を出すものなので、どうしても雰囲気モノという印象が強くなってしまうんだけど、このたそがれた空気感というのは悪くない。
なかでも柔らかな演奏やメロディと銃声のサンプリングの対比が印象的な “The Right Time” いい。

The Weeknd と Leona Lewis が参加した部分だけ音楽的完成度が一気に上がって感じるのはご愛嬌。

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Roses Gabor / Stars (Girls Music) mp3

Roses Gabor / Stars (Girls Music)
http://www.facebook.com/IamRosesGabor

ロンドンの女性シンガー Roses Gabor が2012年末に発表したデビューシングル。

彼女以前紹介したミックステープ(過去記事)では、ベース系のトラックにブラック・ミュージック然としたヴォーカルを乗せる、っていう感じだったんですが、今作でも方向性としてはそれほど変わらない。
タメの効いたドラムとうなるベースラインは明らかにダブステップ以降のものだし、彼女のヴォーカルも相変わらずソウルフル。
ただ今までと決定的に違うのは今作は非常にポップだという事で、切なさをにじませながらも基本的に明るいメロディもそうだし、自分の声をあえて素材の一つとして、サビで細切れにしたり変調をきかせているのもそう。
しかしそれにより、きちんとベース・ミュージックの要素を持ちながらもすっきりとしたポップスとして聴かせることに成功しているし、サビで変則的なキックを入れることで曲に緩急つけているのも良い。

もう1曲の “Night Sky” も、豊かな低音と切ないメロディが絡む良曲。この人はアルバムが楽しみだ。

Stars - Single - Roses Gabor

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Rejoicer, Rotem Or / Re​-​Magic (Self Released) mp3

Rejoicer, Rotem Or / Re​-​Magic
http://www.rotemor.com/

イスラエルの女性シンガー Rotem Or のアルバム『Hard Magic』を、ベルリンのプロデューサー Rejoicer がリミックスした作品。

Rotem Or はフォークを基調とした音楽をしている人みたいなんだけど、今作では全てヒップホップに再構築されている。
またそのビートはさすがベルリンのプロデューサー、というべきなのか、エレクトリックな色合いの濃いモノながら、それほど原曲を感じさせる要素がなく、そういった意味での面白みは薄い。
また妙に間延びしたような音作りが多いのも個人的には苦手で、残念ながら引っかかるものがほとんどなかった。

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ryouta pinky a.k.a 桃色技術音楽堂 / Cuite Magic (OSFC) mp3

ryouta pinky a.k.a 桃色技術音楽堂 / Cuite Magic (OSFC)
http://ordinarysfc.main.jp/

OrdinarySuperFamilyComputer (オーディナリー スーパーファミリーコンピューター)というチームの一員である ryouta pinky さんが2011年に出した EP 。

ジャケットの感じから最初ヴォーカロイドものなのかと思って聴いてみると、実際タイトル曲など最初の方の無機質なヴォーカルは生身の人間なのかヴォーカロイドなのか、この辺に疎い私には判別がつかないほどなのだが、次第に熱を帯びてきて感情がにじみ出てくるヴォーカルはやはり生身のもので(多分・・・)、またそれに伴ってバックのトラックも色彩豊かになってゆくのが非常良い。
音楽的には四つ打ちの女性ヴォーカルもの、というか普通に J-POP と呼んで差し支えないほどポップながら、何気にミニマルな部分も持ち合わせているのも魅力的。

まぁ音そのものの完成度は普段聴いているテクノなんかに比べると一段も二段も下がるんだけど、お世辞にも上手いとはいえない女性ヴォーカルと共に、今作ではいい味になっている。

リミックスもこの手のものにありがちな必要以上に解体した感じがなくて好感持てます。

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ROBAG WRUHME / THORA VUKK (Pampa) 2LP+7″

ROBAG WRUHME / THORA VUKK (Pampa)
http://pamparecords.com/

ついでなんで Robag Wruhme が2011年に発表したセカンド・アルバム。
シングルはもちろんの事、ミックスCDやコンピなどがあったのでご無沙汰感は全くないが、オリジナル・アルバムとしては『WUZZELBUD”KK”』(過去記事)以来7年ぶり。

ある家族の休日の一こまを切り取ったようなジャケットが郷愁を誘うが、柔らかな電子音に導かれ、徐々にビートが入ってくる “Wupp Dek” で始まる本作は、ピアノやストリングスなどのメロディを用いながらゆったりとした時間を作り出していて、こちらも回顧的な色合いが強い。

しかしいくつかのインタールードをはさみながら赤ん坊をあやすかのような声で終わる、ある家族の物語を紡いでいるかのような作りは、 Robag Wruhme の作家性が際立つ非常に美しいもので、それでいて以前からのジャズの影響を思わせる細やかなビート・メイクはテクノとしても聴き応えのあるものになっている。

また以前のようなポップさは影を潜めながらも、メロディを多用する事で以前とは違った聴きやすさも獲得していて、改めて彼の音楽的な奥深さを感じさせてくれる本作は、非常に魅力的な傑作だ。

Thora Vukk - Robag Wruhme

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