UNKNOWN / KNOWONE LP 02 (Knowone) 3LP

UNKNOWN / KNOWONE LP 02 (Knowone)

2010年ごろから活動しているらしいドイツのレーベル Knowone から2012年に発表されたアルバム。
ここ数年流通形態がデジタル中心になったことで、逆にアンダーグラウンドなレコード作品が増えてきましたが、この Knowone もそんなレーベルで、アーティスト名などの情報はほとんどなく、またプレス数の絞られたレコードは、レーベル名と型番がスタンプされただけの簡素なもの。
しかしただ謎に包まれているだけでもなく、日本限定でシングルをリプレスするなどもしていて、愛想がいいのか悪いのか、ますますよく分からないレーベルです。

そんなレーベルからの作品というと、非常にアンダーグラウンド色濃いものを想像してしまいますが、今作はほんのりとミニマル・ダブ的な意匠をまといつつも、むしろデトロイト・テクノに近い感情に訴えかけるようなメロディをもったテック・ミニマルが多く、思いのほか聴きやすい。

しかし3枚のアナログの片面それぞれに収録された長尺曲は、派手な展開などを排した地味なもので、しかし全く弛緩することなく聴かせる手腕には、作者の地力の高さを感じさせる。

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UGANDAN METHODS / SIXTH METHOD (Ancient Methods) 12″

UGANDAN METHODS / SIXTH METHOD (Ancient Methods)
http://www.ancientmethods.com/

Conrad Protzmann と Trias によ Ancient Methods に、 Regis が加わったユニット(ややこしい・・・)、 Ugandan Methods が今年2月に発表したシングル。

Regis って一時期に比べ、再発含めずいぶんとリリースが増えましたが、レコ屋の文章見ると、未だに昔の印象引きずっているのか「ハード」だの「インダストリアル」だのといった文字が使われているものの、実際聴いてみると別段ハードではない、という事がよくあります。

しかし今作は冒頭の金属的な上モノからして、いかにもインダストリアル・テクノといった感じで、最近ではこの手の音をあまり聴かなくなった私でも非常に燃える。しかも直線的なキックと、地鳴りのような横揺れベースが作り出すグルーヴが思いのほかファンキーで、さらに燃える!
まぁちょっと冗談っぽく書きましたが、インダストリアルでありながらファンキーって、あまり聴かない組み合わせだったので、なかなかに新鮮。これはベテランの面目躍如といった感じでしょうか。

他の2曲に関しても、音はハード・ミニマルっぽいながらも、グルーヴはきちんと今のミニマルに即したものになっていて、非常に聴かせるものになっている。

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Untold / Gonna Work Out Fine EP (Hemlock) mp3

Untold / Gonna Work Out Fine EP (Hemlock)
http://www.hemlockrecordings.co.uk/

ついでなんで溜まってたダブステップものを色々と。

2009年に UNTOLD が自身のレーベル Hemlock からだしたダブルパック。

ポスト・ダブステップと呼ばれる音楽のほとんどって、前のめりのリズムであることが多い印象なんですが、今作は2ステップ的な軽やかなリズムはテクノ的ながら、ベースはしっかりとためのきいたものになっていて、そこから生み出される粘りのあるグルーヴが、各曲を音の印象以上に強固なダンス・トラックにしていて非常にかっこいい。

Gonna Work Out Fine - EP - Untold

Unknown Artist / Untitled (Analogue Solutions) 12″

Unknown Artist / Untitled (Analogue Solutions)

今年に入ってからポツポツレコ屋に出回るようになったブート・レーベルの第1弾。

今作は作者も不明ならレーベルもよく分からないものながら、レコ屋ではそれなりに話題になった盤でして、というのも Paperclip People の “The Climax” をネタにした曲があるからなんですね。

で、ここで少し話が脱線するんですが、私が持っている “The Climax” って “Basic Reshape” とのカップリングの、ちょっと初期ジャングルに近いブレイクビーツが印象的な曲なんですね(今作では印象的なシンセのメロディがサンプリングされている)。
でも検索してみたらもう1曲、全然違う四つ打ちのヴァージョンもあるのね(こちらからは涼やかなシンセのフレーズがサンプリングされている)。これどちらもリミックスとは表記されていないんだけど、これってなにがどうなってるんですかね。
私基本的に遡って音源を聴くという事をしないので全然分からんのよね。

まぁいいや。

兎にも角にも今作の裏面には “The Climax” をネタにした曲が収録されておりまして、こう書くとネタに頼ったアイデア勝負の曲に思われるかもしれないけれど、今作はサンプリングしたフレーズを実に自然に取り込みながらも、エレクトロっぽいポコポコと鳴るスネアや、ミニマルながらも覚醒的なシンセを加える事で、また一味違ったデトロイト・テクノに仕上げていて非常に完成度が高い。

またパーカッシブな変則ビートを刻む A1 、扇情的なテック・ミニマルの A2 も同様によく出来ていて、ブートなどという事を意識させない素晴らしい作品になっている。

まぁ今作でアイデア出し切っちゃったのか、他の盤に関してはピンとこなかったので買ってもいないんだけど、それでも今作の作者が誰なのかは気になります。

試聴

Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL) 12″

Unknown Artist / Flöte + Clarinette (RAL)

この前紹介した RAL の2枚目。
例によって誰が手がけているかは分からないのだけれど、テクニークによると Rhadoo と Petre Inspirescu の仕事だそう。しかし『RAL1001』が Luciano の特徴が分かりやすく出ていたのに比べると、こちらはちょっと作者の色までは聴き取れず。

だがいかにも Cadenza っぽい作品が多いというのはこのレーベルの共通とするところで(そもそも Cadenza の周辺人脈が中心なんだから当たり前なんだけど)、今作も Dumitru Farcas の “Suita Din Tara Motilor” からサンプリングしたトラッドフォークっぽい音色が印象的な “Flöte” 、そしてこちらもオリエンタルな笛のサンプリングが印象的な “Clarinette” と両曲ともそれは変わらない。

でも一口に Cadenza っぽいといっても色々あるわけで、今作に関してはパーカッションがチャカポコと鳴る類のものではなく、以前のようなゆったりと風景が変容していくような感覚があるのがうれしいところ。
特にどんどん時間を引き延ばしていくかのような “Flöte” はかなり好きだ。

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Unknown Artist / Cae + Nin (RAL) 12″

Unknown Artist / Cae + Nin (RAL)

昨年のテクノって際立って新しい動きがあったという印象はなかったものの、作品自体は非常に良質なものが多く、そのせいか私もアナログを多く買った1年でした。でもそれらを全然紹介していなかったのでぼちぼち紹介していきたいと思います。
そんなもん今更紹介されても売ってねぇじゃねぇか、っていわれたらその通りなんですけどね。えぇ、すいません。

ということで、昨年私が金をつぎ込んだアナログといえば、何をおいてもこれでしょう、ということで RAL の1枚目。

多分アナログ追いかけていない人には耳慣れないレーベル名だと思うんですが、 RAL というのは Ricardo and Luciano の略で、彼らの周辺アーティストが参加したネタモノブートレーベル。と、これだけで十分マニア心をくすぐるんですが、さらにカタログ番号がそのままドイツ品質保証協会のカラーコードになっているというのもにくいところ。

そんなレーベルからの1作目である本作(Discogs によれば2008年に出たみたい)は、 Caetano Veloso の “Depois que ile passar” と Nina Simone の “Sinnerman” をネタにした作品で、クレジットはないんだけど Luciano の手によるものだそう。

今作は最初のリリースという事で気合が入ったのか、このレーベルのリリースの中でもかなり上位に入る傑作なんだけど、中でも傑作なのがA面の “Cae” 。それはもちろんネタの Caetano Veloso の涼やかな歌声に因るところも大きいのだけれど、絶妙なタメの利いたキックと軽やかに鳴るパーカッションが、歌に寄り添いながらもきちんとダンス・トラックである事を主張していて、ネタモノ云々の面白さを抜きにしても素晴らしい曲。

一方裏の “Nin” は展開の多いリズムが Nina Simone のソウルフルな歌を盛り立てていて、これまた傑作なんだけど、乾いた音のスネアやベースラインなんかが、 Luciano が2009年に出したアルバム『TRIBUTE TO THE SUN』の “CELESTIAL” まんまなのが面白い。
ここで作ったリズムが気に入って、アルバムで再利用したってことなんでしょうか・・・。

ちなみに上では今作は Luciano 作という事で書いているけれども、 youtube に上がっている Jack Ridella という人の “Depois Que O Ile Passar” のリミックスが今作に収録されている曲と全く一緒なのよね。かといって Jack Ridella という人の事を調べてみても RA のページにイタリア出身であることが書いてあるの位しか見つからなくて、なんかよく分からんねぇっす。

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宇宙戦隊NOIZ / GENOM EMOTION

宇宙戦隊NOIZ / GENOM EMOTION
http://uchusentainoiz.com/

「地球の平和を守る為、遥か遠い宇宙からやって来た5人の戦士達」というコンセプト(wikipedia より)のビジュアル系バンドが11月に発表した無料配信のアルバム。

最近のビジュアル系ってどんな音を出しているのかよく知らないのだけれど、今作はメタルを基調とした正統派(?)のビジュアル系サウンドといった趣。
しかしそこに色々な音楽要素を加えて曲を破綻寸前にまで追い込みながらも、結局キャッチーなメロが乗っていれば全部OKでしょ、みたいなノリがいかにも90年代を感じさせるのだが、同時にそれが突き抜けた勢いにもつながっていて、私はこういうバンドは嫌いになれない。

さらに前身バンドを含めると15年近くになるという活動歴の長さゆえか演奏力も高く、また随所にデス・メタルの要素が聴けるのもうれしい。

まぁあえて難を書くのなら、せっかく1曲目が戦隊モノの歌詞なんだから、アルバム全体そのコンセプトで貫いた方が良かったと思うんだけど、それでも良いアルバムです。

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Ufomammut / Idolum (SUPERNATURAL CAT) LP+CD

Ufomammut / Idolum (SUPERNATURAL CAT)
http://www.supernaturalcat.com/

イタリアのドゥーム・メタル・バンドの4枚目のアルバム(2008年作)。

このバンドに関しては全然知らなかったんですが、杜塚秋人さんがブログで紹介していて新ブログになって更新止まっちゃいましたね・・・)、こりゃやばいやばいと思って買ったもの。因みに気合入れてレーベルから400セット限定のアナログとCD、ポスターがセットになったボックス買いました。

自分のメタルの知識は基本古いので、もしかしたら今ではあれなのかもしれませんが、基本デス・メタルってギターの弦を緩める事によって低い音を出しているバンドが多いわけですが、それがドゥームなんかになるとそれをさらに緩めているのは想像に難くなく、つまりはギターの音が低い代わりに、どうしても間延びした感じになっちゃうんですね。

それが苦手で私はドゥーム系って避けていたところがあるんですが(まぁそれだけが理由じゃないけど)、今作が素晴らしいのはそのギターの音が、ドゥームらしい重さをもちながらも、ゴツゴツとした硬い質感も失っていないからで、また演奏の方も重心低めながらダイナミズム溢れるもので、もうひたすらかっこよい。

またそういった動の部分と、サイケデリックな静な部分を活かした構成も素晴らしく、これを傑作と呼ばずに何を傑作と呼ぶのか、ってくらいの傑作。

レーベルのサイト見るともう新しいアルバムが出ているようなので、これも早々に手に入れねばな。

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Umek / Destructible Enviroment (1605 Music Therapy) mp3

Umek / Destructible Enviroment (1605 Music Therapy)
http://www.sixteenofive.com/

Umek の beatport 限定シングル。

Umek って活動暦が長いわりには、タイミングが合わなかったのか今まで全然聴いたことがなくて、自分の中では頑固一徹ハード・ミニマル、みたいなイメージがあります。
しかし今作を聴いてみると、使われている音自体は非常にハードなものながら、よく動くベースラインでグルーヴを作り出しているところなどはミニマル以降を感じさせるもので、そのベースとキックの両輪でグルーヴを転がしていくので、どのトラックも相当上がる。

直球で盛り上げていく “Destructible Enviroment” 、ブリープっぽい上モノと裏で転がるパーカッションが小気味よい “Pulling the Trigger” 、カクカクしたベースが逆に気持ちよい “Sourcewave” と、程よくタイプがばらけているのもいいし、ちょっとこの人に対する認識を改めさせられました。

試聴

Underworld / The Bells! The Bells! (Traffic) CD

Underworld / The Bells! The Bells! (Traffic)
http://trafficjpn.com/underworld/

なんのかんので今年も残りわずかなので、紹介しそびれていた音盤を、簡単に紹介していきたいと思います。

今年の夏に出た、 Underworld の新曲とリミックスを収録した日本編集盤。

新曲の “Parc” は、形態こそ四つ打ちではあるものの、落ち着いた雰囲気と音の洗練具合は、もうほとんど AOR のよう。でも彼らの方向性としては案外悪くないんじゃないかしら。

残りのリミックス7曲は、大雑把に分けるとミニマルとエレクトロ。それなりに名の知れた人が揃っていて、まぁ流石というべきなのかもしれないけど、トラック自体はどれも可もなく不可もなく。そんな中にあって、 Switch が “Boy Boy Boy” を軽快なテックは・ハウスにリミックスしていて、フィジットの権化みたいに思ってた私からするとけっこうビックリ。さらにその音使いも、テクノ畑の人とは微妙に違っていてなかなか新鮮でした。

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