
http://ferrotapes.bandcamp.com/
最近では音楽をデータで手に入れることが一般化した反面、物としての所有感の高いアナログの人気が復活しつつある、なんて話をよく聞きます。しかしその一方で、アナログでもデータでも、ましてや CD でもなく、カセットテープの人気というのもアンダーグラウンドを中心に未だ根強く、ベルリンのレーベル Ferro も、リリースはカセットテープのみというレーベル。
Ferro は今作が初リリースという事で、レーベルに関する情報がほとんどないのだけれど、ダブ・テクノをリリースするレーベルみたい。
ちなみにカセットテープって、自分の中ではハードコアやブラックメタル、実験的なエレクトロニカやノイズ方面の人たちに支持されてるフォーマット、という印象があるんですが、テクノでカセット・リリースって非常に珍しい気がするんですがどうなんでしょう。カセットテープだとアナログみたいに低音の伸びがいいとかあるんでしょうか。
まぁいい、話がそれた。
Basic Channel がミニマル・テクノとダブを融合させて以降、様々なレーベルやアーティストがその方向性を受け継いでおり、今でも Silent Season や Entropy Records 、 Ghost Sounds などが精力的にリリースを重ねていますが、そんな中にあって、この Ferro というレーベルが一際個性的、とまではいかないものの、なかなかに面白い音を出している。
今作は6組のアーティストが参加したコンピレーションになっていて、ほとんどがリリース経験のあまりないアーティスト。そして音の方はというと、当然のようにミニマル・ダブながら、所謂ダブ的なディレイを効かせた、音の輪郭をぼやけさせたような音響は控えめで、むしろテック・ハウス的な軽快さや、透明感のある音が目立っている。その為この手の音を形容するときによく使われる、「深い」という部分では若干物足りないものの、すっきりとした音作りは非常に聴きやすい。
また曲毎に聴いても、軽快なキックとハンドクラップに、低音のノイズが交わり混沌を生み出している Mount Wishmore Unlimited の “S.B.I.” 、形態としてはいかにもなミニマルダブながら、ひたすら磨かれたような丸く柔らかな音作りが非常に気持ちがいい Zzzzra の “Anandamide” 、 Akufen を思わせるようなシャッフルするリズムとダビーな上モノとの絡みが面白い Basicnoise の “Procyon” など非常に充実している。
正直こんなリリース形態で一体いつまで続くのやら、って感じがしなくもないんだけど、頑張ってリリース重ねて個性を磨いていってほしいレーベルです。
あともうすぐ出る次作は、よりモクモクっつうかダブダブで、これまた良さそう。