RHYMESTER / POP LIFE (KRE) CD

RHYMESTER / POP LIFE (KRE)
http://www.rhymester.jp/

前作(過去記事)からわずか1年ほどで発表されたメジャーからは5枚目となるアルバム。

自分としてはイマイチだった『MANIFESTO』からそれほど間が空いていない事、そして今作からの唯一のシングルである “Walk This Way” が前作を引きずった感動路線の曲だったという事で、今作にはほとんど期待していなかったんだけど、これがなかなかどうして、前作よりもずっと素直に楽しめる作品になっている。

まぁ今回も前作同様大半が外部プロデューサーのトラックという事で、以前のようなグルーヴが感じられる場面は少ない。
しかし普段の生活を主題とした今作は、適度に力の抜けた曲が多いせいか、前作のようなラップとトラックの乖離をそれほど感じないし、歌詞に関しても、身近な小ネタをユーモアと毒をもって小突き回している方が彼ららしいように感じる。

反面、子育てを通じて命に言及した “Hands” のようにテーマがでかくなると途端にありきたりな言葉ばかりで退屈なのは相変わらずではあるのだけれど(まぁこれは前作に始まったことじゃないからね)、それでも “ラストヴァース” で感動大作のように終わった前作よりも、感動路線の “Walk This Way” の後に “余計なお世話だバカヤロウ” で照れ隠しして終わる今作の方が私にはずっと魅力的だ。

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DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! / BLACK FILE THE BOMBRUSH! SHOW 2 (PONYCANYON) CD

DJ NOBU a.k.a. BOMBRUSH! / BLACK FILE THE BOMBRUSH! SHOW 2
http://www.spaceshowertv.com/blackfile/

DJ NOBU が日本のヒップホップのみを使ったミックスCDの2枚目。

前作(過去記事)に続いて話題曲や注目曲の多くが並んでいて便利な1枚だとは思うんだけど、どうもDJミックスというとテクノやダブステップのものを聴く事が多いせいか(まぁ最近ミックス自体聴く事少ないんだけど)、トラックで繋ぐのではなくラップで繋いでいる印象の強いこの手のミックスは、あまりDJミックスを聴いている気がしない。

まぁそれでもあえてミックスCDとしての感想を書くと、冒頭の “STAY STRONG” ~ “人間交差点” ~ “I REP” 、またその少し後にくる “World’s End” ~ “ONCE AGAIN” という涙腺を刺激する感じの曲の並びの印象が強すぎて、どうもその他のハーコー路線の曲が埋没しているように思えるし、それゆえに大した山場もないまま終わっちゃうのがもったいないかなと。

あと日本のヒップホップはトラックが良いのが少ないなぁというのも改めて思うことで、音そのものの力が弱かったり、グルーブがなくのっぺりとした多いんですね。

なので逆に、単独で聴くとフロアヒット云々と書かれている事がピンとこなかった “デッパツ進行” の機能性の高さに気づかされたり、 DJ MITSU THE BEATS のトラック作りの妙には自然と耳がいったし、初めて聞く名前ながらトリッキーな印象のラップとトラックを上手くまとめ上げている KGE THE SHADOWMEN & HIMUKI はアルバム単位で聴いてみたいと思った。

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RHYMESTER / MANIFESTO (KI/OON) CD

RHYMESTER / MANIFESTO (KI/OON)
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前作『HEAT ISLAND』(過去記事)から4年ぶりとなるメジャーでは4枚目となるアルバム。

今作の最大の特徴といえば、先行シングルの『ONCE AGAIN』(過去記事)同様、大部分のトラックを外部のプロデューサーに委ねた、という部分になると思うのですが、結果から書けばどうにも中途半端な変化に終わってしまった印象だ。

『MANIFESTO』という気合の入ったタイトルであったり、頭と最後の曲がやたらと大仰な曲であることから、今作は感動大作であるかのような印象を与えるけれども、その他の曲に関してはファンキーなトラックの上にユーモア交じりのラップを乗せるという、いつも通りのスタイルの曲がほとんどで、そういった意味では彼らはそれほど変わっていない。

しかし外部プロデューサーによるトラックは当然今までの RHYMESTER とは違うもので、今までの彼らにない幅を与える事には成功しているものの、同時にファンクネス溢れる以前のトラックに比べ、行儀のよさがが目立つそれらはグルーヴ感に欠け、強烈な肉体性を放つ Mummy-D と 宇多丸 のラップとかみ合っておらず、曲が上手く転がっていないように思う。

結成20年という節目の年に、このような挑戦的な作品に挑んだという部分では素直に拍手を送りたいけれども、これだったら今までの延長線上でいくか、もしくは彼らとは全く違う作品を出した方がよかったのではなかろうか。

RHYMESTER / ONCE AGAIN (KI/OON) CD

RHYMESTER / ONCE AGAIN (KI/OON)
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RHYMESTER というグループは、所謂日本のヒップ・ホップの第一世代と呼ばれる人たちの中でも、バウンスや生バンドとの競演など、より巧みに時代の音を取り込んできたという印象が強いのだけれど、久しぶりのシングルとなる今作は、グループの長い歴史の中でも初となる外部プロデューサーという形で Bach Logic が起用されている。

これを「さすが旬のプロデューサーを起用している」と取るか「今更」と思うかは人それぞれだと思うんだけど(私は当然後者)、勇壮なブラスが響くトラックの上に乗る宇多丸と Mummy-D のラップはいつも以上にエモーショナルで、これも SEEDA や NORIKIYO など下の世代を意識してのものなのだろう。

しかし肝心の曲の方は、どこかで聞いたことのある言葉ばかりが並ぶ応援歌でしかなく、新鮮味などというものは全然感じられないし、何の因果かここでの2人のラップは、どこぞの「ミスター・アブストラクト」の現在の語り口にそっくりだということに彼らは気がついているのだろうか。

ONCE AGAIN

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COMA-CHI / RED NAKED (PONYCANYON) CD

COMA-CHI / RED NAKED (PONYCANYON)
http://www.coma-chi.com/

客演で引っ張りだこの女性ラッパー COMA-CHI の2枚目のアルバム。

タイトルに付けられた「Red Naked」といのは「赤裸々」を英訳したものらしいんだけど、では歌詞において聴くべきものがあるかというと、その内容は非常にありきたり。よくあるヒップ・ホップへの愛情であったり、大仰なラブ・ソングであったり、よく分からない前向きさを振りまく曲であったり。そういった中にあって家庭崩壊をきっかけに内に閉じこもっていた過去を吐露する “自傷症ガール don’t cry” は異色ではあるんだけど、具体性があまりないため深みに欠けるし。

しかしこのアルバム自体が聴くに値しない作品かというとそんなこともなく、ポップに大きく傾きながらもよく出来た作品になっています。
そしてその大きな要因になっているのが COMA-CHI のヴォーカリストとしての実力で、この人もともとラップやる前は普通に歌だけやってたみたいなんだけど、ラップが上手くても歌うとヘロヘロになるラッパーが多い日本にあって、その歌唱は他の R&B なんかの歌手と比べても遜色ないものだし、声自体もよく通る伸びのある声で、聴いていて非常に気持ちが良い。
まぁその代わりラップに関してはよく聴くと全然大したことなかったりするんだけど、ヴォーカリストとしての自力が違うので、それもあまり気にならない。

でもボーナス・トラック的に収録されている “B-GIRLイズム” はイマイチですかね。
これはタイトルから分かるとおり RHYMESTER の “B-Boyイズム” を改変したもの。しかしこの曲のトラックって、ブラスのネタ感が強いせいか派手な印象があったんだけど、これって改めて聴くとすごくシンプルなトラックなんですよね。だからその上に特に工夫なくラップを乗せている COMA-CHI のヴァージョンはつまらないというか、こんなシンプルなトラックでもアンセムにしてしまう RHYMESTER はすごいというか・・・。

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[曲目]

RHYMESTER / BEST BOUTS ~16 ROUNDS FEATURING RHYMESTER~

BEST BOUTS ~16 ROUNDS FEATURING RHYMESTER~
http://www.rhymester.jp/

RHYMESTER というと、昔からヒップ・ホップ・シーンから確固たる支持を得ながらも、同時に数多くの賛否両論も巻き起こしている印象があって、となれば、この RHYMESTER の外仕事を集めた今作は、ある意味彼らのセルアウトの歴史を垣間見れるのか、なんてのを期待してたんだけど、蓋を開けてみれば J-POP での仕事はほとんど入ってなくて、かといって雑多なジャンルにまたがっているという事もなく、思ったよりずっとヒップ・ホップ。

さらにトラック・メイカーとの仕事、もしくはシンガーがサビを歌って RHYMESTER がフルでラップ、というような曲が大半。そのせいか良くも悪くも RHYMESTER の土俵に引き込まれていて、彼らのラップ力の強さに関心はするものの、彼らのオリジナル曲との違いがそれほどみられない為、面白味に欠て、それってこういう類の作品にはけっこう致命的なんじゃなかろうか。つまりは、あまり出す意義が見出せない、もっといえば、コアなファンの為の場繋ぎ的な作品。
まぁこういう趣旨の盤は、クリアランスの問題とかあって色々難しい部分も多いんだろうけど、次があるなら、もっと雑多な内容を望みたい。

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マボロシ / ラブシック

ラブシック
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/maboroshi/

私が日本のヒップ・ホップを熱心に聴き始めたときなんかは、 SHAKKAZOMBIE なんかを筆頭に、ヒップ・ホップとロック・バンドの異種交配が盛んに行われていたんだけど、最近ではそんなの当たり前になったからなのか、ミクスチャー感が前面に出た音楽ってあまり聴かなくなったような気がします。
RHYMESTER の Mummy-D と Super Butter Dog の竹内朋康の二人によるユニットであるマボロシは、一昔前であれば、上記のような文脈に入れられたのかもしれないけど、ここでは竹内朋康がパロディかと思えるほどベタなロックギターを鳴らすにもかかわらず、総体としては紛れもなくヒップ・ホップになっていて、この種の音楽の確かな進化を感じさせます。
しかしその分音楽的な摩擦のなさが物足りなく感じるのも事実で、やっぱり Mummy-D のラップはすげぇなぁとは思うんだけど、それだけじゃちょっと物足りないのよね。

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Rhymester/HEAT ISLAND(Ki/oon)CD

Rhymester/HEAT ISLAND
http://www.rhymester.jp/

一部では最高傑作なんて声もあった前作の『グレイゾーン』なんだけど、個人的には曲の出来不出来の差が大きい気がしてイマイチでした。でもそれに比べると今作はバッチリじゃないでしょうか。

まず前作のブレイク・ビーツ感を前面に出したトラックから、それを踏まえつつさらに幅を広げつつ、それでいてファンキーさを増したトラックがかっちょえぇ。前作からの流れを感じさせる冒頭の “Redzone” もはるかに腰にくる感じだし、バウンシーな “逃走のファンク” 、ダンス・ホールを取り入れた “Heat Island” と勢いは衰えない。

そしてラップの上手さに関してはいまさら言うまでもないんだけど、 Mummy-D のゆるみっぱなしのようで巧みにビートを乗りこなすラップには参りました。

私は彼らの作品はメジャーになってからのしか聴いたことがないんだけど、その中では間違いなく最高傑作ではないかと。

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