bjork / volta (one little indian)CD

bjork / volta
http://bjork.com/

いやぁまぁ、なんといいますかかんといいますか、とにかく bjork の新作なわけです。それにしても困ってしまいました。それは何故か。私は先ほどこのアルバムを聴いていて、あることを思い出してしまったからです。

私は bjork の名前を知ったのは、おそらく大勢の人がそうであるように、ソロ・デビュー作である『Debut』が話題になった時でした。その時買いはしないまでも視聴くらいはしたと思うのですが、声が少し苦手だな、と感じたくらいでそれほど印象には残りませんでした。

その後私にとって bjork を印象付けたのは、以前深夜に放送されていた beat UK という音楽番組で彼女のヴィデオ・クリップを見たときでした。それがなんという曲なのかは覚えていないのですが、流れる風景の中右から左から bjork が顔を出すそのヴィデオが、あまりに人間的なものに欠けているように思えて(好きな人ゴメンナサイ)、私にはどうしようもなく不気味に感じられて、この時私は bjork に対して決定的なまでに苦手意識をもったのでした。

しかしそんな苦手意識もある1枚のアルバムによってあっさりとひっくり返されてしまいます。それが bjork の3枚目のアルバムである『Homogenic』でありまして、彼女の最高傑作に挙げる人も多い作品です。その時『Homogenic』の素晴らしさに心酔していた私は思いました。「オレって bjork イケルじゃん、好きなんじゃん」と。

だけどその後の『Vespertine』は音が高尚すぎて、『Medulla』は実験的すぎてあまり好きになれませんでした。 bjork の声の持つ凄みというのは、彼女を好き嫌いに関わらず多くの人が認めるところだと思うのですが、その分バックの音が密室的なものになると、息苦しくて聴いてられないんですよね。

そして前作『Medulla』から3年ぶりとなるのが本作『Volta』です。前情報では TimbalandKonono No.1 が参加したビートを前面に出した作品だということで、久しぶりに開放感のある作品なのかと期待しました。

しかし実際に聴いてみれば、ストリングスとエレクトロニクスを配したトラックの上で bjork が歌い上げるという、いつも通りの曲が大半で、残りの曲もビートがどれもこれも凡庸、とはいい過ぎにしても、革新性とは程遠いトラックばかり。特に Timbaland の仕事が酷くて、私は昔からこの人の枝先ばかり飾りつけて、肝心の幹が空っぽな音作りが好きになれないのです。確かに色んな方が書いているように Mark Bell は頑張ってると思うし、私も彼の手による “Wanderlust” と “Declare Independence” はけっこう好きだけど、このアルバムの印象を覆すようなものではない。

だけど肝心の主役である bjork は、その退屈なトラックのうえで、自身の圧倒的な力を持ったヴォーカルによって作品を引っ張っていく。その声から発せられる力は本当にすごいのだけれど、私はただ「スゴイなぁ」と感心するばかりで、心が全然燃え上がらない。そしてアルバムの50分は過ぎていく。

私は考えました。何故このアルバムが好きになれないのかと。そして思い出してしまったのです。私は元々 bjork のことが好きでなかったことを。そして思い返せば彼女の作品で好きなのは『Homogenic』しかないということを。

さすがに最初に彼女に苦手意識をもったときとは違って、今は bjork の作品をいくつも聴いているわけですから、最初の印象だけで好きではないとはいいませんが、やはり第一印象のインパクトというのは覆いがたく、結局私は彼女の凄さに感心することはあっても、その声が心に響くことはないのでしょう。ただ例外的に『Homogenic』は心に響きましたが、そんなことがこの後そう何度もあるとは思えません。

ということで私は、この後余程のことがない限り bjork の作品を買うことはないでしょう。ありがとう bjork 、さようなら bjork 。

などとただ bjork が苦手であるということを、大袈裟かつ長々と書いてみました。おしまい。