こちらの記事で James Blake についてグダグダと書いたんですが、誤解を恐れずに書けば、私が James Blake に期待していたのは今作のような作品ですかね。
っていうことで、今年の3月にフリーで配信された、カナダの Abel Tesfaye の一人ユニットだという The Weeknd のファースト・アルバム。
そもそも私が James Blake に期待していた作品というのは、簡単に書くとトラックの立った歌モノなんだけど、 The Weeknd の今作は正にそういう作品。
あえてジャンル分けすると R&B の範疇に入るモノなんだけど、ヒップホップはもちろんの事、エレクトロニカやダブステップなど様々な要素が溶け合ったトラックは、平熱感覚というよりは、むしろ徐々に沈みこんでいくような静かな暗さに覆われていて、それがなんとも刺激的でありながらも特徴的。
一方ヴォーカルの方はというと、その透き通った高音だけで十分魅力的ながら、そこに時折少しざらついた低めの声を交えながら歌われるメロディはかなりポップかつ甘いもので、また同時に歌いすぎではないかと思えるほど感情的に歌い上げる場面を目立ち、これだけだとちょっとしつこいのではないかと思えるくらい。
しかしそのヴォーカルがトラックと見事な対比を表す事で、必要以上に暗くなりすぎないメリハリのあるモノになっているし、そのヴォーカルにしても、所謂喜怒哀楽のような分かりやすい感情を伝えるようなものではないのに、それでいて人間的な熱や情感に溢れているという、トラック共々不思議な余韻を残すもので、気がつくとまた聴いているという中毒性がある。
今更無料の音源なのにここまでの完成度のものが、なんて事を書く気はないけど、それにしてもほとんど名前も知られていないような人がここまでの作品を出したというのは衝撃的だし、それを抜きにしても素晴らしい作品。
色んな意味で今年を代表する作品なのは間違いない。