Thomas Fehlmann / Honigpumpe (KOMPAKT) 2LP

Thomas Fehlmann / Honigpumpe (KOMPAKT)
http://www.kompakt.fm/

活動歴20年を超えるベテラン、Thomas Fehlmann の KOMPAKT からは2枚目となるアルバム。

この人が KOMPAKT から出すようになってからの作風は基本ミニマル・ダブなんだけど(それ以前は知りません)、ミニマル・ダブのアーティストのほとんどが冷たい印象の音を作るのに対して、 Thomas Fehlmann の音は非常に柔らかく、温かみのあるものが多い。

そしてその音は今作でいっそうの冴えをみせていて、冒頭で雄大で広がりのある音空間を聴かせる”Strahlensatz” で、その世界にいきなり引き込まれる。それ以降も浮遊感のある音響空間で漂っているような気分にさせてくれるものばかりで、こう書くとあまり良く思われないかもしれないけど、ひたすらぬるま湯につかっているような心地よさがある。

ミニマル・ダブにしては珍しく、春とかに野外で聴いてみたい音なんじゃないでしょうか。

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FALSE / 2007 (m_nus) CD

FALSE / 2007 (m_nus)
http://www.m-nus.com/

Matthew Dear が別名義の False で2007年に発表したアルバム。以前Plus 8 からリリースしたアルバム(過去記事)はシングルの編集盤だったので、今作がファースト・アルバムということになるかしら。

元々False という名義は、 Matthew Dear が AKUFEN などからの影響を吐き出す為のものとして始めたと、以前インタビューで言っていたけれど(それは先の編集盤を聴くとよく分かる)、今作はジャケット同様味も素っ気もないディープ・ミニマル。

多分普段この手のミニマルに接していない人からすると、まるで何か苦行の類なのかと思えるほど、これといった展開もなく、何も起こらないまま淡々と進んでいく。しかしその最初から中盤辺りまでのゆったりとした流れを経て、それが後半大きなうねりへと変化するさまは、これぞテクノの真骨頂とでもいいたくなるほど素晴らしいもので、またその熱をゆっくり冷ますかのようにゆったりとした流れに引き戻す最終曲 “FORGETTING” も実に秀逸。

また何回も聴いてみれば、後半のグルーヴも、それまでのトラックも非常に丹念に作られていて、ただ機能的なだけではない、作品性の高いアルバムだというのがよく分かる。
流行り物のミニマルとは一線を画す、時代を問わず聴ける傑作です。

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SHINEDOE / sound travelling (100% PURE) CD

SHINEDOE / sound travelling (100% PURE)
http://www.myspace.com/puremusicamsterdam

以前 FUSE からリリースしたミックスCDが評判になった女性プロデューサー Shiedoe こと Chinedum Nwosu の2006年リリースのファースト・アルバム。

その FUSE のミックスでは新旧織り交ぜたミックスを披露していたようなんだけど(私は未聴)、今作では比較的幅広いタイプのトラックを収録していて、よく云えば多彩、でも正直なところで云えば器用貧乏といった印象の作品でしょうか。随所にデトロイトっぽい感じが出るのが個性といえば個性なんだろうけど、リズムがどれも淡白なのがなぁ。というよりも、もしかしたら私がハウスのグルーヴに慣れすぎて、このアルバムの方が本来のテクノっぽいのかなという気がしなくもないので、最近のミニマルが苦手な人は聴いてみるといいかも。

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PAN-POT / PAN-O-RAMA (MOBILEE) CD

PAN-POT / PAN-O-RAMA (MOBILEE)
http://mobilee-records.de/

MOBILEE 繋がりで、2007年リリースの Tassilo Ippenberger と Thomas Benedix によるユニット PAN-POT のファースト・アルバム。この作品に関しては、期待が大きすぎて買った当時はあまり良く思えなかったんだけど、今聴いてみるとそれほど悪くない。

彼らの作り出すトラックは、うねるベースを中心としたディープなアシッド・ミニマルが多いんだけど、それは今作でも一緒。低いベース音と甲高いパーカッションではめまくる”Threesixty” から始まり、以降ひたすらはめ系のトラックの連続で、こういうのが大好物な私としては、このアルバムも大好き、といいたいところではあるんだけど、惜しむらくはマスタリングのせいなのか、全体的に音が細めで音圧が足りないのよね。
だからイマイチはまりきれないところがあって、そこが買った当時の私としては非常に納得しがたいところではあったんだけど、今聴いてみるとやはり完成度の高さは素晴らしく、これでも十分傑作かなと思う。

まぁこのアルバムが気に入った人は、是非とも PAN-POT のシングルも聴いてもらいたいとは思うけど。

あと蛇足ながら、このアルバム聴くと、一時期いわれていた「MOBILEE がディープ・ハウス云々」というのは、やっぱり違うんじゃねぇのかなぁ、と改めて思います。

Pan-Pot - Pan-O-Rama

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ANJA SCHNEIDER / BEYOND THE VALLEY (MOBILEE) 12″

ANJA SCHNEIDER / BEYOND THE VALLEY (MOBILEE)
http://mobilee-records.de/

ドイツのレーベル MOBILEE を主催する Anja Schneider の初アルバム。とはいっても私の買ったアナログは、CDの半分の5曲しか収録していないので、ほとんど抜粋といった感じなんだけど、中身自体は非常に良い。

MOBILEE というと比較的ベースが剥き出しのドラッギーなミニマルが多いのだけれど、今作は女性らしい繊細さが随所に感じられる、非常に美しいテック・ミニマル。
何重にも重ねられたレイヤーがサイケデリックな空間を作り出す “BEYOND THE VALLEY” 、子気味良いパーカッションの上で絡むピアノとストリングスが印象的な “MAKI” などは特に美しく、どの曲も高い作品性と機能性を両立させている。

あと今作は基本的に音数が多めなので、普段ミニマル聴かない人にも聴き易いんじゃないかしら。おすすめ。

Anja Schneider

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